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サバゲー大会決勝戦!
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しおりを挟む『任せたヨー、サッキー! イくヨー!』
アキラが言っていた通り、合法の範囲内に調整されたエアソフトの弾は、実は20メートルも離れていれば、余裕を持ってよけることができる。それほど早くはない。走っていれば、理論上は中らない。また見切ってよけることもさほど難しくはない。
『たまチャン。ついて来てネー』
『何度も言わせないで。私は、あなたの背中を守るために、訓練したのよ』
弾倉を取り替えながら、顔を少し赤くした。それに尋が微笑んだ。
『Oh. そうでシタネー。じゃあ、イきマスヨー』
『3 2 1 GО!』
弾倉を瞬時に取り替え、二人は走り出した。
弾雨をよける為にジグザグに走る。二人の行く手を妨げようとする敵は、あえなくフーによって撃破された。
『アルファを孤立させるな! 全員で援護!』
残りの班が続いて攻撃を開始。
猛烈な弾幕試合の中、ふたりはまるで躊躇なく踏み進む。
無数の弾丸を避けて、小さな障害物に飛び込み、尋が牽制攻撃。その間に珠希は尋の背中に取り付けられた、予備弾倉を抜いて装填。入れ替わり突き進む。瞬く間に三名の機関銃手を倒し、さらにフーが狙撃で撃破し広げていく。
そしてついに、ジャックまで到着した。それに伴い他班も前進し、戦線を押し上げる。
建物の中に籠もった敵陣営。
『胡散臭いデスネー。どうしマスカ?』
『一も二もないわ。私たちは、オフェンスだもの』
『YES,Ma'am. イこー力』
『ええ』
尋は出入り口目掛けて走り、その直前でスライディングする。
地面にべったりと体を張り付かせた仰向けで、寝転がったまま室内に次々に攻撃していく。
とりあえず正面を押さえると、珠希が突入して隠れていた敵を倒す。
『Cle――. why?』
バシンという鋭い音が聞こえ、
『Oh my god! sorry. hitネー』
『私もヒットよ……』
「え? え?」
尋たちがヒットした。信じられない事実に、半ば呆然となった瞬間。フーによって押し倒された。
「気を、抜くな」
すぐ近くにある彼女の顔を見て、惚けていた頭が急速にはっきりとしていく。
「ふ、フーせんぱい」
「悪いが、フーたちはヒットした」
今度こそ、音羽の頭は真っ白になった。
「そんな、フーせんぱい……」
フーの裾を掴もうとしたが、指先は空を切る。音もなく身を引いた彼女の顔は、悔しさが滲んでいた。
「自分を信じろ。フーは、アウトならば大丈夫だと信じている」
両手を上げた彼女は、堂々とクイーンを去っていった。
去っていくフーを見送り、音羽は無線機の通話ボタンを震える指で押した。
「無事な人、いますか?」
返事はこない。原則上、ヒットしたものはフィールドにいても口を開かない。
さあと血の気が失せる。通信が返って来ないということは、味方の全滅しか考えられない。
――どうしよう。どうしよう!?――
敵の数や状況は、把握し切れていない。
現状は絶望的。
まさか残ったのが自分ひとりだなんて、シャレにもならない。
今すぐ逃げ出したい恐怖心と、たった一人で背負った決勝戦という重圧。
今すぐにでも、ギブアップして、ここから逃げ出したい。
本物の銃で狙われている訳でもないのに、恐怖で足がすくむ。
震える手の力を抜いて、両手を上げ、
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