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遠い日の思い出

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美智香と達也は同じ職場で知り合い、結婚した。

結婚後も仕事を続けたいという美智香に対し、達也もそれを認め、引き続き同じ会社で働くことになった。

達也自身、仕事がバリバリできる美智香が、家庭に入るのは、会社にとって損失であると考えており、子供が出来るなど、特別な事がない限りはこのままの状態を維持するのが得策だと考えていた。

美智香は仕事にやり甲斐を感じていたが、それとは裏腹に、早く子供を作りたいという希望も一方では描いていた。

だが、そんな彼女の願いも叶わず、何年経っても懐妊する事はなかった。

その分、仕事に意識をシフトさせ、前にも増して働く事に生きがいを見出していく美智香だったが、心の奥底では、やはり子供が欲しいという気持ちが無くなることはなかった。

30歳のとき、美智香は自身の不妊を疑い、レディースクリニックでの検査を考えるようになるが、日々の雑多な事に忙殺され、結局は受診する事はなかった。

既にその頃には、達也と美智香の夫婦関係にすきま風が吹き始めており、それから暫くして、二人は所謂セックレス夫婦に成り下がってしまったのだ。

私生活の躓きとは裏腹に、仕事面では非常に上手くいき、達也と美智香は、夫婦というよりビジネスパートナーとしての関係になっていく。

美智香が35歳のとき、夫の達也が会社を辞めて独立する事を決意。

美智香も自身の資産(両親、祖父の遺産を相続したもの)を出資し、共同経営者として夫を支援する事になる。

商才のある美智香は、会社を軌道に乗せるのに一役を買うが、その頃から達也は自身の会社で雇っていた事務員の女性と不倫関係になっており、美智香が40のときに動かぬ証拠を目の当たりにし、潔癖な美智香は許す事が出来ずに離婚を決意。
家庭裁判所で離婚の申立てを行い、調停により細部を決めた。

美智香は会社の経営から退き、一切の権利を放棄。
代わりに夫の達也が、慰謝料に金額を上乗せして美智香に渡す事で合意した。

離婚成立後、元夫のいない土地を求めた美智香は、単身上京し、都内の賃貸マンションに移り住むが、それから二年、仕事も特にせず、貯金を切り崩しながら生活を続けていた。
仕事については、当初は早く決めたいと思っていたが、会社経営に全てを賭けて頑張っていた事の反動から、無気力になってしまい、気がつけば二年が過ぎていたのだ。

もうそろそろ働かなければ、と、思っていた矢先に、音信が途絶えていた弟の智から連絡が入り、再会。

そして、思わぬ形で、23歳の青年、佐々木真弥と出会い、恋に落ちた。

公私ともども全力でサポートした夫に裏切られ、もう二度と結婚はおろか、恋もしないと決めていた美智香だったが、その頑なな心を、今、自分の隣で眠る若者は氷解させたのだ。

真弥を信じてついて行こう
真弥を絶対に失いたくない
真弥を愛してる

美智香は真弥の顔に自身の顔を擦り付けるようにしてキスをした。
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