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唯一無二の存在

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その日の夕方、莉愛を乗せた新幹線が17番線ホームに到着した。

智とユウは、入場券を買ってホームで待ち構えていたが、莉愛が降りてくると、智は満面の笑みを浮かべて歩み寄った。


「お帰り、莉愛」


「ただいま」


「莉愛ちゃん、お帰りなさい

ユウです。」

智の後ろからユウも顔を出して莉愛に言った。


「あ、こんにちは

母がいつもお世話になっています」


「莉愛ちゃんとは、小学校の低学年の時数回会ってるんだけど、憶えてないよねえ」

ユウが言うと

「いえ、何となく覚えています。

夜に綺麗なお姉さんが遊びに来てたなって。」


「ごめんね、ワタシもニューハーフで」


「いえ、ユウさん
すごく綺麗です」

莉愛はそう言って笑った。


「でも、さすがはトモちゃんの娘さんね

めっちゃ美人だわ」


「そんな事はないですけど。

ママが美人なのは認めますが」


「本当の莉愛のお母さんがメチャクチャ美人だったからなのよ。」

智は申し訳なさげに二人の会話に割り込んできた。


「奈々ママもトモママも美人です。


でも、東京って遠いね

バスと電車を乗り継いで、新幹線と合わせて全部で六時間半くらいかかったよ。」

莉愛は智に荷物を一つ手渡しながら言うと、智はそれを受け取って肩にかけて頷いた。


「そうだね。
お腹空いたでしょう?
なんか食べていこう」

「うん」


三人は八重洲口の改札を出て、地下に降りて行った。


「莉愛ちゃん、何か食べたいものある?」

ユウが莉愛の方を見て言うと、しばらく考えていた様子だったが


「ラーメンがいいです」

と、答えた。


地下街を奥に進んでいくと、ラーメン店が何軒も入っているところがあり、ほとんどの店で長い行列が出来ていた。

その中でも一番人気のあるつけ麺店の行列の後ろに三人は並び、二十分ほど待ってから中に案内された。


「あ、美味しい」

普段の寮生活ではこのようなものは口にしておらず、また田舎に住んでいた時も、たまに町に出て食べる事はあったが、味のレベルがイマイチだった為に、莉愛は一口食べて感激した。

そんな莉愛の様子を見て、智とユウは顔を見合わせて笑みを浮かべた。


少し前に桐山と達也に監禁され、薬物中毒にされかけるという悲惨な目に遭った智だったが、莉愛にその事は言っていないし、これからも言うつもりはない。

ただ、こうして最愛の一人娘である彼女の成長を見ると、全てにおいて頑張っていかなければならないと思えたし、まだまだ気持ちが折れてはいけないと思った。

ニューハーフとしての旬は過ぎ、四十となったが、人生はまだまだ続くし、また新しい人生をユウと二人で切り開いていこうと心に誓った。
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