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第113話 時代錯誤の老害社長
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「手を出したのは当社の者ではございません。御社の星崎さんです」
『へえーっ! 星崎のやつ、やるなあ!』
「その悪評、知らないとは言わせませんよ。業界内では有名な話ですから」
社長のわざとらしい感嘆の声を無視してユキは鋭く言い放つ。
『……ふん』
途端、声のトーンが下がる。やはりしらばっくれていたのだ。
「安物の香水をプンプンさせたキャバ嬢をうちの社員だと言って同伴させ、各社の現場事務所へ営業をかねての挨拶回り。レイナも下着だか水着だかわからない下品な恰好で、お店の宣伝をしまくってますよ。ああいうことは止めたほうがよろしいのではないでしょうか」
『あれはあれでいいんだ。男ばかりの職場なんだから、そのくらいの刺激と息抜きは必要なんだ。若くて可愛い女の子と喋れば男は仕事にやる気が出る。一種の精力剤みたいなもんだ』
「時代錯誤もいいところですね。こちらはあきれていますよ」
『いやいや、周囲の目を気にして、あきれたふりをしているだけさ。でも内心は大喜び。キャバクラの若くて可愛い女の子とタダでお話できて嬉しくない男なんていないよ』
「そう思うのはあくまで一部の者であって、全員ではありません」
『堅いねえ。田上課長も素直に喜べばいいのに。お互い、ババア一歩手前の、地味でパッとしない会社の女どもなんかより、若くて可愛い女の子のほうがずっといいでしょう?』
アナクロニズムの老害社長――職場の女性社員をさげずみ、「若くて可愛い女の子」を連呼する社長へ、佐野は絶望的な気持ちになる。
『へえーっ! 星崎のやつ、やるなあ!』
「その悪評、知らないとは言わせませんよ。業界内では有名な話ですから」
社長のわざとらしい感嘆の声を無視してユキは鋭く言い放つ。
『……ふん』
途端、声のトーンが下がる。やはりしらばっくれていたのだ。
「安物の香水をプンプンさせたキャバ嬢をうちの社員だと言って同伴させ、各社の現場事務所へ営業をかねての挨拶回り。レイナも下着だか水着だかわからない下品な恰好で、お店の宣伝をしまくってますよ。ああいうことは止めたほうがよろしいのではないでしょうか」
『あれはあれでいいんだ。男ばかりの職場なんだから、そのくらいの刺激と息抜きは必要なんだ。若くて可愛い女の子と喋れば男は仕事にやる気が出る。一種の精力剤みたいなもんだ』
「時代錯誤もいいところですね。こちらはあきれていますよ」
『いやいや、周囲の目を気にして、あきれたふりをしているだけさ。でも内心は大喜び。キャバクラの若くて可愛い女の子とタダでお話できて嬉しくない男なんていないよ』
「そう思うのはあくまで一部の者であって、全員ではありません」
『堅いねえ。田上課長も素直に喜べばいいのに。お互い、ババア一歩手前の、地味でパッとしない会社の女どもなんかより、若くて可愛い女の子のほうがずっといいでしょう?』
アナクロニズムの老害社長――職場の女性社員をさげずみ、「若くて可愛い女の子」を連呼する社長へ、佐野は絶望的な気持ちになる。
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