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第3章 老害

第60話 地球の女神

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 「ん? ここは…?」

 今日も今日とて、ホテルに引きこもって寝ていると、真っ白な空間にいた。

 「お主が妹の世界を救った転移者かえ。妹から話を聞いておったが、中々どうして。出来る男よのぉ」

 そして気付けば目の前に一人の女がいた。
 ああ。ここ、あれか。神域か。

 「地球の女神か」

 「うむ。いかにも」

 マジかー。そうきたかー。ご褒美よこせってねだったからかなー。このタイミングかー。
 でもなー。これはちょっとなー。

 「一応聞いておくけど、俺はなんで呼び出されたの?」

 「神を前にして不敬な態度よの。嫌いではないがの」

 だって。あの性悪女神の姉なんだろ? 俺の中ではポンコツ女神って認識だからなぁ。
 対応が色々杜撰だったりで、株価は急降下しちゃってる。

 「直近の地球の危機を救ってもらったからの。ここらで一度話をしてみたいと思っておったのじゃ。下界の様子は見ておったが、妾の期待通りにやってくれおった。褒美も渡さねばなるまいて」

 褒美。褒美ねぇ。いつもの俺なら諸手を上げて喜んだ事だろう。これがあの性悪女神相手なら、既にベッドの顕現をお願いしてるところだ。
 でもなー。これはちょっとなー。

 「ロリなんだよなぁ」

 「戯けが。神罰落とすぞ」


 あの性悪女神の姉って事で期待してたんだ。
 どんな絶世の美女なんだろうかと。そして今日ここに呼び出されて実際に見て落胆してしまった。

 10歳ぐらいの可愛らしい幼女である。放つ圧は神そのものだけど、これは性悪女神で慣れている。
 だから、俺から見たら可愛い幼女が背伸びしてるようにしか見えない。

 「守備範囲外なんだよ」

 「よし。神罰じゃ。特大の神罰をお見舞いしてくれる」

 のじゃロリって。ありきたりすぎて。
 ほら、今も神罰神罰って腕捲りしてて、なんて可愛らしいんでしょう。あー微笑ましい。

 「ロリは手を出すもんじゃないんだよ。遠くから見て愛でるもんなんだ」

 「何故お主は性交する事しか頭にないのじゃ! 他の褒美もあるじゃろう! ええい! その暖かい眼差しをやめるのじゃ!」

 いや、期待してたのはおせっせなので。
 性悪女神のご褒美はそれはもう凄かった。あんな体験がもう一度出来るなら、地球の狭間攻略ぐらいなんて事ないね。

 「覚えておけ。俺を便利扱いしたいならそれが一番だ」

 「妾は楽だからこの姿をしておるのじゃ! その気になれば変幻自在に変えられるわい!」

 無理だって。もうその姿で地球の女神をインプットしちゃったもん。
 どんな姿に変わっても、いざやるとなればロリの姿がちらついてしまう。そうしたら俺は萎えてしまうだろう。第一印象って大事なんだぜ。




 「ってか、褒美なら1級を全部攻略した時にくれても良かったんじゃね?」

 その後もやいやいと言い合いをしていたが、キリがないので一旦話を変える。

 「発展を妨げておる奴が日本に居たじゃろ」

 「? 誰?」

 「お主が精神を弄り回した奴じゃ」

 ああ、老害か。
 確かにあいつはムカつく奴で、俺の心にダメージを与えた変態野郎だが。発展を妨げるとかもしてたの?

 「あやつが3級クラスの狭間を攻略してから、2級攻略に全く着手してないのはおかしいとは思わんかの?」

 「それは地球の人間が弱過ぎるからだろ。こっちに来て、能力の使い方とか下手すぎてびっくりしたぜ」

 だから俺が指導する羽目になったんだ。
 2級攻略ぐらいはせめてしてくれないと。毎回俺が呼び出されたりしたらたまったもんじゃない。

 「あの男が言葉巧みにそれ以上のクラスの狭間攻略に行かせないようにしておったんじゃ。3級以上の階級は危険過ぎると心配しておるフリをしてな。探索者学校の授業にも介入して、まともな能力者を育たないようにしたりと、やりたい放題だったのじゃ」

 「はぁ? 意味分からんのだが」

 「自分の偉業を上書きされたくなかったのじゃろう。優秀な能力者は自分で囲って、狭間に行かせないようにしたりと、かなり停滞させられていたのじゃ」

 「えぇ。老害、マジ老害じゃん。やっぱり殺しておけば良かった」

 痛恨のミス。俺もあんなに恥をかかなくて済んだじゃん。

 「まぁ、お主が表世界から排除してくれたでな。ここからは盛り返していけるじゃろう。お主も人員を確保したりと精力的に活動してくれておる事じゃし」

 まぁ、それは自分が楽をする為とか、自家用ジェットが欲しいとか、色々私情混じりなんだけど。
 お金は好きだし。欲しいし。

 「これからは? 自由にしていいの?」

 「うむ。お主が好き勝手やると世界も良い感じに回ってくれおる」

 良い感じって。やっぱりなんか適当なんだよな。
 そんなんだからポンコツ女神なんだぞ。あの性悪と姉妹だしさもありなんって感じだけど。

 「さて、褒美の話に戻るのじゃが」

 「それな」

 このポンコツのじゃロリ姉女神には手を出す気はない。そうなると俺が望みの褒美は貰えない訳で。

 「仕方あるまい。少し待っておれ」

 そう言って、何もない所からスマホっぽい物を顕現させる。そしてどこかへ電話をかけ始めた。
 どうでも良いけど、神の連絡手段ってそれなの?

 「--ちゃんかえ? お願いがあるのじゃが」

 む? 性悪女神の名前が聞こえたぞ。

 「けちんぼじゃな。全く」

 むすっとした顔で電話を終えたポンコツ女神。
 交渉は失敗したみたいだ。

 「妹を抱かせてやろうと思ったのじゃがな」

 クズかよ、こいつ。
 そりゃ、あの性悪女神だって断るわ。
 関係ないじゃん。そりゃ、俺はさせてくれるなら嬉しいけど? これはなんか違うだろう。

 「元はと言えばお主が妾を抱けぬと言うからじゃ! 全く! 神相手に選り好みしよって!」

 逆ギレじゃん。怖い怖い。なんて言われようが、俺はロリは守備範囲外なんだ。

 

 
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