53 / 267
― 第二章・それぞれの成長 ―
第53話 暴走
しおりを挟む
降りしきる雪のなか、[紫色の線光]が再び飛んでくる。
前線に居たヒーラー系が、急いで結界を張るも、間に合わなかった者たちが新たに死傷していく。
その間に、スライムの来夢と、ゴブリンの権蔵が、中央のラミア目掛けて走り出した。
本能的に。
それを紫蓮が、
「あ、おい!」
と、追いかける。
「ちょっと、待ちなさいよ!」
と言う幸永歌が後に続き、永虎たちも、その場から離れだした。
馬上の侍王は、
「また、勝手に。」
と、いささか呆れたものの、
「仕方ない、こちらの攻撃が届く範囲まで近づくぞ。」
と千代らを動かしたのである。
一方、敵軍の最後尾では、持ち運んできたに違いない天蓋付きの煌びやかな椅子に腰掛けている男が、グラスに注がれた葡萄酒を飲んでいた。
玉座にグラスや、身に纏っている甲冑は、金を基調として作られているようだ。
髪の毛や髭が、ところどころ白いその男は、背丈が4Mに達しており、1対の翼が生えている。
50代に見えなくもないが、実際は、500年以上は生きているであろう。
その男が、
「ふむ。」
「奴らの働きによって、戦況が覆りそうだな。」
「南方領主の子らは、なかなかに役立っているようだ。」
と、笑みを浮かべた。
そう、あの三体の“成れの果て”は、餌にされてしまった南方領主の子どもたちである。
「これより、最前線に赴く故、準備いたせ。」
と下知した男に、側近らが、
「は! 陛下!」
と、頭を下げた。
亡骸や、負傷者の手当てをしている者たちの隙間を縫うようにして、来夢と権蔵がラミアに迫る。
距離を詰めた来夢が、おもいっきりジャンプしながら大風呂敷のように、
ブワッ!!
と広がった。
ラミアの側に構えていた敵兵が、咄嗟に蛇の体を刀で斬り、新たにビームを発射させようとする。
それを察した権蔵が、口から直径40㎝の“火の玉”を放ち、ラミアの腹部に当てたことによって、気が逸れた。
この機を逃さない来夢が、ラミアの顔を〝グルンッ!〟と覆ったのである。
窒息させられそうになるラミアが、両手で来夢を剥がそうとするも、半液体状のスライムを掴めずにいた。
そんなラミアを、権蔵が、すかさず槍で刺したところ、
「グオオオオッ!」
と、呻きながら、光線を闇雲に乱射したのである。
あちらこちらにビームを飛ばしまくるラミアに危険を感じた連中が遠ざかっていく。
鎖を持っていた面子までもが避難していったので、自由になったラミアが暴れ出す。
「来夢、権蔵、離れろ!」
後方から指示する紫蓮が両手で握り締めている“本物の刀”が、
バチッ!バチバチッ!バチィッ!
と雷を纏っていくのであった―。
前線に居たヒーラー系が、急いで結界を張るも、間に合わなかった者たちが新たに死傷していく。
その間に、スライムの来夢と、ゴブリンの権蔵が、中央のラミア目掛けて走り出した。
本能的に。
それを紫蓮が、
「あ、おい!」
と、追いかける。
「ちょっと、待ちなさいよ!」
と言う幸永歌が後に続き、永虎たちも、その場から離れだした。
馬上の侍王は、
「また、勝手に。」
と、いささか呆れたものの、
「仕方ない、こちらの攻撃が届く範囲まで近づくぞ。」
と千代らを動かしたのである。
一方、敵軍の最後尾では、持ち運んできたに違いない天蓋付きの煌びやかな椅子に腰掛けている男が、グラスに注がれた葡萄酒を飲んでいた。
玉座にグラスや、身に纏っている甲冑は、金を基調として作られているようだ。
髪の毛や髭が、ところどころ白いその男は、背丈が4Mに達しており、1対の翼が生えている。
50代に見えなくもないが、実際は、500年以上は生きているであろう。
その男が、
「ふむ。」
「奴らの働きによって、戦況が覆りそうだな。」
「南方領主の子らは、なかなかに役立っているようだ。」
と、笑みを浮かべた。
そう、あの三体の“成れの果て”は、餌にされてしまった南方領主の子どもたちである。
「これより、最前線に赴く故、準備いたせ。」
と下知した男に、側近らが、
「は! 陛下!」
と、頭を下げた。
亡骸や、負傷者の手当てをしている者たちの隙間を縫うようにして、来夢と権蔵がラミアに迫る。
距離を詰めた来夢が、おもいっきりジャンプしながら大風呂敷のように、
ブワッ!!
と広がった。
ラミアの側に構えていた敵兵が、咄嗟に蛇の体を刀で斬り、新たにビームを発射させようとする。
それを察した権蔵が、口から直径40㎝の“火の玉”を放ち、ラミアの腹部に当てたことによって、気が逸れた。
この機を逃さない来夢が、ラミアの顔を〝グルンッ!〟と覆ったのである。
窒息させられそうになるラミアが、両手で来夢を剥がそうとするも、半液体状のスライムを掴めずにいた。
そんなラミアを、権蔵が、すかさず槍で刺したところ、
「グオオオオッ!」
と、呻きながら、光線を闇雲に乱射したのである。
あちらこちらにビームを飛ばしまくるラミアに危険を感じた連中が遠ざかっていく。
鎖を持っていた面子までもが避難していったので、自由になったラミアが暴れ出す。
「来夢、権蔵、離れろ!」
後方から指示する紫蓮が両手で握り締めている“本物の刀”が、
バチッ!バチバチッ!バチィッ!
と雷を纏っていくのであった―。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
27
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる