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第三章 休みくらい好きにさせて
第2話 オーラ
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……ダメだ。やっぱり寝られない。寝ても、不安になって、すぐに起きてしまう。レアは、まだ隣でグースカ眠っている。
私とは違って、レアは全然眠ることができるみたいだ。まぁ、私みたいに、何かに狙われているというわけでもないし、レアだけで私の護衛をやれるくらいには強いのだから、それも当然なのかもしれない。
少し触りたくなるけど、またナイフを突きつけられるのはごめんなので、起こさないようにベッドから降りて、部屋を出ようとすると、声が聞こえる。
「ご主人?どこ行くの?」
声がする方を見ると、レアが目を擦りながら起きた。
相変わらず、勘がいいというかなんというか。
起こさないように降りたはずなのに、私が離れようとするとすぐに勘づいて起きてしまう。
場合によっては、私が起きただけでレアが起きることもあるくらいだ。
「ちょっとぶらぶらしようかなって」
私が笑いながらそう言うと、いつもの天使のような笑みが消えて、座った目で私を見る。
レアがこんな目をするのは珍しいので、少し体が強ばる。
「……ねぇ、ご主人。寝れてないんじゃない?」
その言葉にドキッとする。演技はそこまで得意なわけではないけど、私は顔には出ないタイプだ。それでも気がつくというのだろうか。
私がじっと見ていると、レアはクスクス笑う。
「……動揺してるね。なんで気づいたのって思ってる?」
「……ええ。なんで気づいたのかしら?」
「もうレアの魔法は知ってるでしょ?」
それで私はまたドキッとする。レアは知られたくない様子だったから、知らないふりをしていたけど、どうやら気づいていたみたい。
それでも変に怒ったりとか、私の様子をうかがったりしないということは、知られてもかまわないとは思っていたのだろう。
「精神魔法なんですってね。アイリスから聞いたわ」
これでアイリスに墓石が必要になるかなと思ったけど、そんな心配は杞憂だったようで、レアは真面目なトーンで話し出す。
「そう。それでレアは、精神をオーラみたいな感じで見ることができるの。波動、色、大きさで感情とかがわかるんだ。激しく揺れるときは動揺してるってことなんだよね。ご主人、顔にはあまり出ないけど、オーラは素直だから」
ニコニコしながらそんなことを言った。トーンは真面目なままだけど。
そんなものが見られるのは初耳だ。アイリスが知らなかったのか、知ってたけどあえて話さなかったのかはわからないけど、相手の感情を理解できるのは、結構便利そうな能力だ。
自分が使うと便利そうというだけであって、相手に使われたら厄介でしかないけどね。
「それでさ、ご主人のオーラは弱々しいんだ。それってね、疲れがたまっているときなんだよね。そして、少し細かい波動だから、不安を感じてるんでしょ?」
ドンピシャだった。確かに、疲れが溜まっていて不安があると知っていれば、寝れていないんじゃないかということは想像ができるかもしれない。
「話してみない?内緒なら誰にも言わないからさ!」
「……あなたが一番信用できないんだけど」
「なぬっ!?」
私が冷たい視線を向けると、レアはわざとじゃないかというくらいに驚愕する。
「レアは約束を破ったことなんかないぞ!その証拠に、もうなんでも聞いてみろ!」
「じゃあ、なんであなたが誘拐されたのよ」
私がそう聞くと、しーんとした空気が流れて、レアは少し視線をそらす。
「……話さないとダメ?」
「だって、あなたをも拐えるような人が私を狙ってるってなれば知りたくなるわよ」
「寝れてない原因はそれかぁー!」
うーと唸りながら、ベッドの上をあっちにこっちにゴロゴロしている。
そして、はぁとため息をついた。
「アイちゃんのことはよく知らないけど、レアを誘拐したやつとどーいつ人物なんだよね」
そう言って、話し出した。
「それはわかってるのね」
「うん。相手も希少魔法を使ってるからね!おんなじ希少魔法の使い手がこの世にたんじょーすることはないのさ!」
「そうなのね」
それが、世界の理というやつなのだろうか。いくら希少魔法がレアな存在だとしても、探せば普通にいそうな気がする。だって、希少と言っておきながら、近くに6人もいるもの。
レアは、さらに言葉を続ける。
「それでね、そいつは転移魔法を使うの。だから、ご主人は一人だと危ないんよ。ちょっとでも離れてたら狙われちゃうからさ」
確かに、転移魔法なら、すぐに相手の死角を位置どることができるから、一人は危険だろう。それなりに腕が立つ者と、行動を共にしていた方がいい。
あの魔物騒動以来、いつも、白梟の誰かが視界にいると思っていたけど、それは私の護衛だったのか。まぁ、それで見たことがあるのは、このレアを始めとして、サリア、ルクト、メイア、アイリスだけで、いまだにアグニスには会ったことがないけど。
メイアが第一部隊、アイリスが第三部隊の副長なら、アグニスは第二部隊の副長だろうから、ルクトに頼めば会わせてくれるかもしれない。まぁ、そこまでして会いたいとは思わないけど。
「まぁ、そんなわけで、お出かけならレアもついてくよ!第一部隊はご主人の用事だし、第二部隊は動けないし。たいちょーはレアしかいないからね!」
私はそれを聞いて、首をかしげる。第一部隊がいないのは、私が仕事を頼んだからとわかっているけど、第二部隊が動けない理由がわからない。
でも、本当にそうなら、確かに第三部隊しか空いていないし、副長であるアイリスに任せるのは不安だ。だからといって、一般隊員に任せるのも、希少魔法相手では少し不安になる。
消去法だと、レアが一番ましだ。
「それじゃあ、頼めるかしら」
「がってんしょうち!」
まるで警察官の敬礼のようなポーズをとったレアに、いつものレアに戻ったなと笑ってしまう。
そして、私たちは寮にある部屋から出ていった。
私とは違って、レアは全然眠ることができるみたいだ。まぁ、私みたいに、何かに狙われているというわけでもないし、レアだけで私の護衛をやれるくらいには強いのだから、それも当然なのかもしれない。
少し触りたくなるけど、またナイフを突きつけられるのはごめんなので、起こさないようにベッドから降りて、部屋を出ようとすると、声が聞こえる。
「ご主人?どこ行くの?」
声がする方を見ると、レアが目を擦りながら起きた。
相変わらず、勘がいいというかなんというか。
起こさないように降りたはずなのに、私が離れようとするとすぐに勘づいて起きてしまう。
場合によっては、私が起きただけでレアが起きることもあるくらいだ。
「ちょっとぶらぶらしようかなって」
私が笑いながらそう言うと、いつもの天使のような笑みが消えて、座った目で私を見る。
レアがこんな目をするのは珍しいので、少し体が強ばる。
「……ねぇ、ご主人。寝れてないんじゃない?」
その言葉にドキッとする。演技はそこまで得意なわけではないけど、私は顔には出ないタイプだ。それでも気がつくというのだろうか。
私がじっと見ていると、レアはクスクス笑う。
「……動揺してるね。なんで気づいたのって思ってる?」
「……ええ。なんで気づいたのかしら?」
「もうレアの魔法は知ってるでしょ?」
それで私はまたドキッとする。レアは知られたくない様子だったから、知らないふりをしていたけど、どうやら気づいていたみたい。
それでも変に怒ったりとか、私の様子をうかがったりしないということは、知られてもかまわないとは思っていたのだろう。
「精神魔法なんですってね。アイリスから聞いたわ」
これでアイリスに墓石が必要になるかなと思ったけど、そんな心配は杞憂だったようで、レアは真面目なトーンで話し出す。
「そう。それでレアは、精神をオーラみたいな感じで見ることができるの。波動、色、大きさで感情とかがわかるんだ。激しく揺れるときは動揺してるってことなんだよね。ご主人、顔にはあまり出ないけど、オーラは素直だから」
ニコニコしながらそんなことを言った。トーンは真面目なままだけど。
そんなものが見られるのは初耳だ。アイリスが知らなかったのか、知ってたけどあえて話さなかったのかはわからないけど、相手の感情を理解できるのは、結構便利そうな能力だ。
自分が使うと便利そうというだけであって、相手に使われたら厄介でしかないけどね。
「それでさ、ご主人のオーラは弱々しいんだ。それってね、疲れがたまっているときなんだよね。そして、少し細かい波動だから、不安を感じてるんでしょ?」
ドンピシャだった。確かに、疲れが溜まっていて不安があると知っていれば、寝れていないんじゃないかということは想像ができるかもしれない。
「話してみない?内緒なら誰にも言わないからさ!」
「……あなたが一番信用できないんだけど」
「なぬっ!?」
私が冷たい視線を向けると、レアはわざとじゃないかというくらいに驚愕する。
「レアは約束を破ったことなんかないぞ!その証拠に、もうなんでも聞いてみろ!」
「じゃあ、なんであなたが誘拐されたのよ」
私がそう聞くと、しーんとした空気が流れて、レアは少し視線をそらす。
「……話さないとダメ?」
「だって、あなたをも拐えるような人が私を狙ってるってなれば知りたくなるわよ」
「寝れてない原因はそれかぁー!」
うーと唸りながら、ベッドの上をあっちにこっちにゴロゴロしている。
そして、はぁとため息をついた。
「アイちゃんのことはよく知らないけど、レアを誘拐したやつとどーいつ人物なんだよね」
そう言って、話し出した。
「それはわかってるのね」
「うん。相手も希少魔法を使ってるからね!おんなじ希少魔法の使い手がこの世にたんじょーすることはないのさ!」
「そうなのね」
それが、世界の理というやつなのだろうか。いくら希少魔法がレアな存在だとしても、探せば普通にいそうな気がする。だって、希少と言っておきながら、近くに6人もいるもの。
レアは、さらに言葉を続ける。
「それでね、そいつは転移魔法を使うの。だから、ご主人は一人だと危ないんよ。ちょっとでも離れてたら狙われちゃうからさ」
確かに、転移魔法なら、すぐに相手の死角を位置どることができるから、一人は危険だろう。それなりに腕が立つ者と、行動を共にしていた方がいい。
あの魔物騒動以来、いつも、白梟の誰かが視界にいると思っていたけど、それは私の護衛だったのか。まぁ、それで見たことがあるのは、このレアを始めとして、サリア、ルクト、メイア、アイリスだけで、いまだにアグニスには会ったことがないけど。
メイアが第一部隊、アイリスが第三部隊の副長なら、アグニスは第二部隊の副長だろうから、ルクトに頼めば会わせてくれるかもしれない。まぁ、そこまでして会いたいとは思わないけど。
「まぁ、そんなわけで、お出かけならレアもついてくよ!第一部隊はご主人の用事だし、第二部隊は動けないし。たいちょーはレアしかいないからね!」
私はそれを聞いて、首をかしげる。第一部隊がいないのは、私が仕事を頼んだからとわかっているけど、第二部隊が動けない理由がわからない。
でも、本当にそうなら、確かに第三部隊しか空いていないし、副長であるアイリスに任せるのは不安だ。だからといって、一般隊員に任せるのも、希少魔法相手では少し不安になる。
消去法だと、レアが一番ましだ。
「それじゃあ、頼めるかしら」
「がってんしょうち!」
まるで警察官の敬礼のようなポーズをとったレアに、いつものレアに戻ったなと笑ってしまう。
そして、私たちは寮にある部屋から出ていった。
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