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第二章 初めての領地
28 屋敷での平穏で不穏な生活 2
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庭にやってきたリオンティールは、やっと一息がつけると、木陰に腰を下ろした。
(こういう時くらい、のんびりしたいのになぁ~)
ただでさえ、転生してからいろいろありすぎたのだ。魔素を回収するという役目があるとはいえ、今のように、のんびりできるときはのんびりしたかった。
それを、ことごとく潰してくるのが兄姉たちだ。家族として好いてくれているのは、リオンティールも嬉しくはある。だが、それ以上の感情は不要だった。
あの兄姉たちがリオンティールに向けている感情は、どう見ても家族としての情をはるかに越えていると言える。
別に、恋愛感情などは入っていないだろうが……単に弟思いでは片づけられないほどの感情なのは間違いない。
リオンティールは、放っておいてほしいタイプだというのに、だ。
だからこそ、リオンティールは父親にはけっこういい感情を向けている。自分のやりたいようにさせてくれるからだ。
「ああ、リオン。ここにいたか」
「父上」
噂をすればというやつだろう。偶然通りかかったのか、リオンティールの居場所を知ってかはわからないが、アルトルートがやってきた。
「隣、いいか」
「どうぞ」
リオンティールが了承すると、アルトルートはリオンティールの隣に腰を下ろす。
一人が気楽なリオンティールが、まったく不快に感じないのは、アルトルートの日頃の行いと言えよう。
「ちょうど、お前に聞きたいことがあったんだ」
「なんでしょう?」
「先日の馬車の一件だ」
「先日……というと……?」
リオンティールは、盗賊に襲われたときと、領地に入ったときに子どもが飛び出してきた両方を思い浮かべる。
アルトルートの言葉だけでは、どちらのことを言っているのかわからなかった。
「子どもが飛び出してきた件のことだ。あの時、お前は、スレイクスが気になることを言ったと言っていただろう。その気になることとはなんだ?」
リオンティールは、自分でもすっかり忘れていたことを思い出す。
あの時、アリアーティスたちは大して気にしたりはしていなかったが、アルトルートはずっと引っかかっていたようだった。
リオンティールは、どう答えようか迷う。
アルトルートには、下手な嘘は通用しない。だからといって、わざわざ馬車に興味を持ったという嘘をついていたあの男のことを思うと、本当のことなど言えない。
リオンティールは、普段はここまで人を気遣うようなことはないが、今回は、自分が軽はずみに話してはいけないような気がしてならなかった。
「ラ、ラクが……その、変なことを言うものですから……」
「変なこととは?」
「なんか、変な感じがすると。詳しくはラクもわかっていないようでした」
嘘は言っていない。
ラクに教えてもらっていないのは事実だし、そもそも、アルトルートに限らず、リオンティール以外は、魔物と会話できる存在がいないため、真実かどうかを確かめる術はない。
リオンティールは、これ以上は聞かないでくれと祈りながら、アルトルートの目を見る。決して、目はそらさなかった。
「そうか。変なことを聞いてすまなかったな」
「い、いえ……。でも、なんで突然こんなことを聞いたんですか?」
どうにか納得してもらえたことにほっとしつつも、リオンティールは疑問をぶつける。
「先ほど、客人と話をしてきたのだが、その客人が妙なことを言っていてな。理由を考えていた時に、リオンの発言が頭をよぎっただけだ」
「そうですか。お役に立てずにすみません」
「いや、気にすることはない。時間を取らせてしまったな。ここにいる間は自由に過ごすといい。私が許そう」
「はい!父上!」
その妙なことというのが気にならなかったわけではないが、父からの魅力的すぎるお許しに、そんなことは思考の彼方に行ってしまった。
あまりにも欲望に素直すぎたリオンティールの返事に、アルトルートは呆れたような顔をしながら、その場を立ち去った。
(こういう時くらい、のんびりしたいのになぁ~)
ただでさえ、転生してからいろいろありすぎたのだ。魔素を回収するという役目があるとはいえ、今のように、のんびりできるときはのんびりしたかった。
それを、ことごとく潰してくるのが兄姉たちだ。家族として好いてくれているのは、リオンティールも嬉しくはある。だが、それ以上の感情は不要だった。
あの兄姉たちがリオンティールに向けている感情は、どう見ても家族としての情をはるかに越えていると言える。
別に、恋愛感情などは入っていないだろうが……単に弟思いでは片づけられないほどの感情なのは間違いない。
リオンティールは、放っておいてほしいタイプだというのに、だ。
だからこそ、リオンティールは父親にはけっこういい感情を向けている。自分のやりたいようにさせてくれるからだ。
「ああ、リオン。ここにいたか」
「父上」
噂をすればというやつだろう。偶然通りかかったのか、リオンティールの居場所を知ってかはわからないが、アルトルートがやってきた。
「隣、いいか」
「どうぞ」
リオンティールが了承すると、アルトルートはリオンティールの隣に腰を下ろす。
一人が気楽なリオンティールが、まったく不快に感じないのは、アルトルートの日頃の行いと言えよう。
「ちょうど、お前に聞きたいことがあったんだ」
「なんでしょう?」
「先日の馬車の一件だ」
「先日……というと……?」
リオンティールは、盗賊に襲われたときと、領地に入ったときに子どもが飛び出してきた両方を思い浮かべる。
アルトルートの言葉だけでは、どちらのことを言っているのかわからなかった。
「子どもが飛び出してきた件のことだ。あの時、お前は、スレイクスが気になることを言ったと言っていただろう。その気になることとはなんだ?」
リオンティールは、自分でもすっかり忘れていたことを思い出す。
あの時、アリアーティスたちは大して気にしたりはしていなかったが、アルトルートはずっと引っかかっていたようだった。
リオンティールは、どう答えようか迷う。
アルトルートには、下手な嘘は通用しない。だからといって、わざわざ馬車に興味を持ったという嘘をついていたあの男のことを思うと、本当のことなど言えない。
リオンティールは、普段はここまで人を気遣うようなことはないが、今回は、自分が軽はずみに話してはいけないような気がしてならなかった。
「ラ、ラクが……その、変なことを言うものですから……」
「変なこととは?」
「なんか、変な感じがすると。詳しくはラクもわかっていないようでした」
嘘は言っていない。
ラクに教えてもらっていないのは事実だし、そもそも、アルトルートに限らず、リオンティール以外は、魔物と会話できる存在がいないため、真実かどうかを確かめる術はない。
リオンティールは、これ以上は聞かないでくれと祈りながら、アルトルートの目を見る。決して、目はそらさなかった。
「そうか。変なことを聞いてすまなかったな」
「い、いえ……。でも、なんで突然こんなことを聞いたんですか?」
どうにか納得してもらえたことにほっとしつつも、リオンティールは疑問をぶつける。
「先ほど、客人と話をしてきたのだが、その客人が妙なことを言っていてな。理由を考えていた時に、リオンの発言が頭をよぎっただけだ」
「そうですか。お役に立てずにすみません」
「いや、気にすることはない。時間を取らせてしまったな。ここにいる間は自由に過ごすといい。私が許そう」
「はい!父上!」
その妙なことというのが気にならなかったわけではないが、父からの魅力的すぎるお許しに、そんなことは思考の彼方に行ってしまった。
あまりにも欲望に素直すぎたリオンティールの返事に、アルトルートは呆れたような顔をしながら、その場を立ち去った。
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