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第一章 優しい家族

18. サンドイッチ

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 二回目のリーリアさまとの交流の日が訪れた。今日の朝に、午後に屋敷に来るようにと使者を通じて連絡があったのだ。ちなみに、使者を送ったのは、本来予定されていた日時ではないことと、僕に招待状を届ける意味があったのだという。

 招待状を開いてみるけど、なんて書いてあるのかさっぱりわからない。そういえば、僕は文字の勉強をしていなかった。そりゃ読めないよ。
 仕方なく、母さんに代読してもらうことに。お屋敷に針子として出入りしている母さんは、文字を読むことができる。

「かーさん、これなんて書いてあるの?」
「えっとね……」

 かーさんは、ゆっくりと読み進める。内容はこうだ。

 ルイ

 このたび、わたしのお茶会にご招待します

            リーリア・ヴァレリー

 すごい短かったけど、少し不格好な字なので、リーリアさまが直接書いたらしい。三歳で文字が書けるとは、さすがお貴族さま。
 リーリアさまがいいって言ってくれたら、文字を教えてもらおうかな?

「かーさん、おへんじ書きたい!」
「う~ん……でも、紙は高いのよね……」

 うう……金銭問題か。それなら、返事は諦めるしかないか。どうせ今日行く予定だしね。
 印刷技術が未発達だったころは、本も高かったっていうし、無理もないか。

「なら、なにかもっていけない?おかしとか」

 返事がダメなら、手土産というのはどうだろう?庶民の僕たちが手に入れられるものなんてたかが知れているけど、こういうのは気持ちが大切なのだ。
 お茶会なのだから、お菓子を持っていくのもいいかもしれない。前世ではあまり作ったことはないけど、レシピは頭の中にある。

「お砂糖は高いし……果物もそんなに買えないわよ?」

 むむっ。やっぱりお砂糖は高価か。魔法が発展しているとはいえ、お砂糖の加工とかは魔法が使いにくそうだしね。大量生産とかもできないんだろうな。
 手に入りそうなのは果物だけど、果物を使うお菓子のレシピって、砂糖もセットなことが多いから、なかなか難しい。

 それじゃあ、甘くないお菓子とか、軽食とか……あっ、あれならできるんじゃないか!?

「かーさん。やってみたいことがあるの」
「また……?今度はなに?」
「パンと、おやさいと、たまご!」

 ひとまずはこれくらいでいいだろう。他にもいろいろと使えるものはあるけど、食材がない可能性もある。
 作ってみせるぞ、サンドイッチを!

◇◇◇

 母さんとともに調理場に来た僕は、さっそく作業を始めーーたかったんだけど。

「危ないから、ナイフは母さんがやるわ」
「はーい……」

 さすがに三歳児に包丁は持たせてくれなかった。僕がパンに切れ込みを入れたくて包丁を握ろうとしたら、母さんに止められてしまったのだ。
 母さんがパンに切れ込みを入れてくれる。パンの形がコッペパンみたいに楕円形なので、中身も少し考えなくてはならない。
 お野菜も、大きく切るというよりは、ある程度小さめに切り分けたほうがいいだろう。

 たまごは、卵サラダが一番だけど、マヨネーズがない。作り方は知ってるから作れるけど、さすがに三歳児が調味料作り出したら神童どころではなくなるので、今回はスクランブルエッグにすることに。
 スクランブルエッグに合わせるために、必然的に野菜にも火を通すことになる。火は危ないので、炒めるのも母さんの仕事。僕は相変わらず見ているだけである。

 でも、僕もなにもできないわけではない。母さんがパンに切れ込みを入れて、野菜を炒めて、スクランブルエッグを作ったら、後は好きな組み合わせで挟むだけだ。これなら僕にもできる。
 僕は、ひとまずスクランブルエッグとレタスを挟む。ちなみに、レタスはエクテルって言うらしい。う~ん、ややこしや。

「こうしてね、パンといっしょにたべるの!かんたんにたべられるようにナイフで切ったりとか」
「へぇ~。相変わらず、ルイの発想力には驚かされるわ」

 無理のない案にしているお陰で、母さんも僕のことを発想力が豊かな子どもという認識で落ち着いているようだ。
 よしよし、このままこのイメージをキープしよう。

「それなら、後は母さんに任せなさい。おいしい組み合わせを考えて、お昼に出してあげるから」
「ありがとう、かーさん!」

 笑顔で返事をした僕は、内心ではかなりワクワクしていた。

 僕の料理のレシピは、前世に頼っているところが大きい。なので、思いつくのも前世でありふれたものばかりで、いわゆる変わり種というものは作れない。
 なので、サンドイッチをまったく知らない母さんが組み合わせを考えるというのだから、僕では思いつかないような変わり種があるかもしれない。

 もしかしたら、ホットサンドとかも作ってくるかもしれないな~。

「じゃあ、ルイはおへやにもどるね!」

 僕は母さんを調理場に残し、自分の部屋へと戻った。
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