26 / 35
第二章 ユニークスキル
25. 魔法の使い方
しおりを挟む
はい。というわけで、少年式から一切の休憩なしのぶっ続けで魔法の練習をすることになりました。……リーリアさまと一緒に。
さすがに少年式の会場ではやらないみたいだけど、そこそこの広さを持つ空き部屋かどこかに連れていかれて、そこで行うことに。
ちなみに、会場に続く扉の二つ隣の部屋なので、大して移動はしていなかったりする。
「あの、別に今日じゃなくてもいいのでは……?」
「だって、魔法を使ってみたいもの。ルイは使いたくないの?」
「使いたいですけど……」
六年間、両親や兄に魔法をねだるくらいには、魔法に興味があるので、実際に使えるとなれば気持ちは高揚しているし、すぐにでも使いたい。
でも、体が気持ちについてこない。リーリアさまと僕の選定の儀を合わせて一時間も経っていないはずなのに、なぜかすごく疲れている。
明日じゃダメですかね、リーリアさま?
「もう疲れちゃって……」
「すぐに終わるよー」
気遣って後日に回してくれないかなという淡い期待は、リーリアさまに笑顔で一蹴される。仕方ない、諦めよう。練習だけちゃっちゃと終わらせて帰るのだ。
「話は終わったかい?」
「はい、お父さま」
「はい、大丈夫です」
そう。僕が魔法の練習を渋っているのは、もう一つ理由がある。
よりによって、魔法を教えてくれるのが領主さまなのだ。どうやら、事前に約束していたみたいで、リーリアさまも当たり前のように受け入れている。そんななか、僕だけ遠慮することはできない。
前までは、子どもだからで多少のわがままは許されたけど、リーリアさまと頻繁に交流するようになってからは、母さんに行儀作法を叩き込まれたので、もう子どもという最大の切り札は使えるに使えない状況になった。
魔法の教授を受けられない理由がすぐに思いつくほど、僕の頭はよくない。
なので、嫌々ながらも引き受けるしかないのだ。
「まず、前提として魔力を感じ取る必要がある。二人とも、魔力はわかるか?」
「はい、大丈夫です」
「僕も大丈夫です」
魔力らしきものは、今までの経験でなんとなくは感じ取れる。スキルを使うときに何かが抜けていくあの感覚は何度も味わったし、一度熱暴走したこともあるくらいだから。
「では、魔法の使い方を説明する」
領主さまはそう言うと、詳しい説明を始めた。
魔法というのは、『魔力』『詠唱』『イメージ』の三つで成り立っている。
まず、自分の適性のある魔力を選び取るんだけど、これは二つ以上の適性を持つ人にだけ当てはまるので、一つしかない僕は省略。
続いて詠唱する。詠唱というのは、魔法の構造を文章……というか、プログラム?にしたものである。
ここからがまあまあ複雑なんだけど、魔法にはコードと呼ばれる単語のようなものがあり、細かく分けるとたくさんあるんだけど、大きくわけて二つになる。
まずは、ギアと呼ばれるコード。これは、簡単にいえば属性の選択である。たとえば、僕が使う赤魔法ならギアはレドムとなる。
他にはこうだ。
青魔法→ブルム
黄魔法→イェルム
緑魔法→グリム
白魔法→ワイム
黒魔法→ブラム
銀魔法→シルム
金魔法→ゴルム
これは、基本となるコードなので、これなしで魔法を使うことはまずできない。例外として、『詠唱破棄』等のスキルを持っていれば詠唱を省略できるので可能らしい。
持ってなくても、訓練すれば手に入れることのできるものだそうなので、僕はすぐさま手に入れようと企んでいる。
リーリアさまのを【完全複製】すれば一発だろうけど、【完全複製】がどのようなものなのか具体的にわかっているわけではないし、安全策でいく。
【完全複製】は、領主さまや母さんたちがいるときにやるつもりだ。
次に、ナンバーと呼ばれるコード。これは、魔法の強さや形態を決めるコードである。
それぞれ1~10が割り振られており、数字が大きければ大きいほど強力な魔法が使えるけど、その分魔力の消費も大きいらしい。
そして、ここでカードに表示されていた魔力強度が深く関わってくる。
あの魔力強度の数字は、問題なく行使できるナンバーを表していたのだ。つまりは、僕の場合は七まで、リーリアさまの場合は六までを問題なく行使できる。
それ以上は、魔力切れなどの危険を起こすことがあるので、絶対にやってはいけないと領主さまが口を酸っぱくして言っていた。
ナンバーズのコードはこう。
1→ワール
2→ツール
3→スリル
4→フォール
5→ファブル
6→シクル
7→セブル
8→エトル
9→ナイル
10→テール
僕は七等級なので、セブルまでは問題なく行使できる。
そして、数字があがるごとに魔法の威力や効果があがるんだけど、これも順番通りにあがるわけではない。
順番としては、1→3→5→7→9となり、偶数はなんなのかというと並列発動である。ゲーム風に言うなら、全体攻撃のようなものである。
2の場合は、1の魔法を並列発動できるということだ。
他には、4が3の並列発動、6が5の並列発動、8が7の並列発動、10が9の並列発動となっている。
他にも、位置を指定するものや大きさを指定するものなどもあるが、それらはまたおいおいと言った感じになるようだ。
まぁ、一気に言われても覚えられないだろうしね。
このコードを唱えると同時に魔力を放出することで魔法となるらしい。
どうして魔法が六歳からなのかわかった。それくらいの年齢にならないと、相手の言っていることを理解できないからなんだ。
残りのイメージはそのまま。普通に思い浮かべるだけ。発動だけならコードだけでできるんだけど、レオンが前にやったみたいに水を自在に操ったりなどは、どのように動かすかのイメージが必要みたいだ。
「ルイくんは、魔力操作はやったことあるかい?」
「ないです」
ここであるなんて言おうものなら、後日に尋問が待っているだろうからね。
「では、リーリアの後に手伝うから、少し待っていてくれ」
「はい」
手伝うってなんだろうと思いながらも頷くと、領主さまはリーリアさまのを手を取る。
リーリアさまは、領主さまの手をぎゅっと握りしめた。
しばらくそのままだったけど、リーリアさまがパッと手を離して言う。
「わかりました!」
リーリアさまはそう言うと、手をかざす。
「『ワール ブルム』」
リーリアさまがコードを唱えるのと同時に、リーリアさまのを目の前に小さな水球が浮かぶ。
「わぁ、すごいです!」
青魔法はレオンがよく見せてくれたけど、リーリアさまが初めて使った魔法だからか新鮮だ。リーリアさまは、少し恥ずかしそうに言う。
「次はルイの出番だね」
おうふ……そうでした。リーリアさまが終わったなら僕だよ。
「では、ルイくん。手を出してもらえるか」
「はい」
僕は領主さまが差し出してきた手に自分の手を乗せる。
すると、その手のひらから何かが流れ込んでくる感覚があった。ものすごい違和感だ。肌がぞわぞわして、あまり心地よい感じではない。
「もう感じ取れるのか?」
表情に出ていたのか、領主さまが不思議そうに尋ねてくる。
「はい……これはなんですか?」
「それが魔力だ。流れていく感覚がわかれば、自分で動かしやすいだろう?」
ああ、これはそういう意味だったのか。それなら、僕にはいらなかったなと思いつつも、「ありがとうございます」と返した。
「できそうなので、やってみます」
僕は、意識を集中する。魔力を動かして、手のひらに集める。それと同時に、ろうそくの火をイメージする。
「『ワール レドム』」
コードを唱えると同時に魔力を放出すると、手のひらから小さな火がボッと燃えた。
おおー!これが魔法!ついに僕も魔法使いだ!
「ルイの火、きれいだね」
「ありがとうございます」
魔力切れかはわからないけど、リーリアさまの水はとっくに消えていた。体感的に十分も経っていないと思うから、ずっと維持し続けるのは難しいのかな?
それとも、それにすら何かしらのコードが必要なのか。ああ、『詠唱破棄』がほしい!
「今の感覚忘れないように、一日に一度は魔法を使って練習するように」
「「はい」」
どうやら、魔法講義は終了らしい。ようやく帰れる……と、思ったのもつかの間。「ルイくん」と呼び止められ、嫌な予感を感じつつも振り返る。
「ルーシーと一緒でかまわない。三日後に屋敷に来るように」
「はーい……」
どうやら、僕の平穏はまだまだ先のようです……
さすがに少年式の会場ではやらないみたいだけど、そこそこの広さを持つ空き部屋かどこかに連れていかれて、そこで行うことに。
ちなみに、会場に続く扉の二つ隣の部屋なので、大して移動はしていなかったりする。
「あの、別に今日じゃなくてもいいのでは……?」
「だって、魔法を使ってみたいもの。ルイは使いたくないの?」
「使いたいですけど……」
六年間、両親や兄に魔法をねだるくらいには、魔法に興味があるので、実際に使えるとなれば気持ちは高揚しているし、すぐにでも使いたい。
でも、体が気持ちについてこない。リーリアさまと僕の選定の儀を合わせて一時間も経っていないはずなのに、なぜかすごく疲れている。
明日じゃダメですかね、リーリアさま?
「もう疲れちゃって……」
「すぐに終わるよー」
気遣って後日に回してくれないかなという淡い期待は、リーリアさまに笑顔で一蹴される。仕方ない、諦めよう。練習だけちゃっちゃと終わらせて帰るのだ。
「話は終わったかい?」
「はい、お父さま」
「はい、大丈夫です」
そう。僕が魔法の練習を渋っているのは、もう一つ理由がある。
よりによって、魔法を教えてくれるのが領主さまなのだ。どうやら、事前に約束していたみたいで、リーリアさまも当たり前のように受け入れている。そんななか、僕だけ遠慮することはできない。
前までは、子どもだからで多少のわがままは許されたけど、リーリアさまと頻繁に交流するようになってからは、母さんに行儀作法を叩き込まれたので、もう子どもという最大の切り札は使えるに使えない状況になった。
魔法の教授を受けられない理由がすぐに思いつくほど、僕の頭はよくない。
なので、嫌々ながらも引き受けるしかないのだ。
「まず、前提として魔力を感じ取る必要がある。二人とも、魔力はわかるか?」
「はい、大丈夫です」
「僕も大丈夫です」
魔力らしきものは、今までの経験でなんとなくは感じ取れる。スキルを使うときに何かが抜けていくあの感覚は何度も味わったし、一度熱暴走したこともあるくらいだから。
「では、魔法の使い方を説明する」
領主さまはそう言うと、詳しい説明を始めた。
魔法というのは、『魔力』『詠唱』『イメージ』の三つで成り立っている。
まず、自分の適性のある魔力を選び取るんだけど、これは二つ以上の適性を持つ人にだけ当てはまるので、一つしかない僕は省略。
続いて詠唱する。詠唱というのは、魔法の構造を文章……というか、プログラム?にしたものである。
ここからがまあまあ複雑なんだけど、魔法にはコードと呼ばれる単語のようなものがあり、細かく分けるとたくさんあるんだけど、大きくわけて二つになる。
まずは、ギアと呼ばれるコード。これは、簡単にいえば属性の選択である。たとえば、僕が使う赤魔法ならギアはレドムとなる。
他にはこうだ。
青魔法→ブルム
黄魔法→イェルム
緑魔法→グリム
白魔法→ワイム
黒魔法→ブラム
銀魔法→シルム
金魔法→ゴルム
これは、基本となるコードなので、これなしで魔法を使うことはまずできない。例外として、『詠唱破棄』等のスキルを持っていれば詠唱を省略できるので可能らしい。
持ってなくても、訓練すれば手に入れることのできるものだそうなので、僕はすぐさま手に入れようと企んでいる。
リーリアさまのを【完全複製】すれば一発だろうけど、【完全複製】がどのようなものなのか具体的にわかっているわけではないし、安全策でいく。
【完全複製】は、領主さまや母さんたちがいるときにやるつもりだ。
次に、ナンバーと呼ばれるコード。これは、魔法の強さや形態を決めるコードである。
それぞれ1~10が割り振られており、数字が大きければ大きいほど強力な魔法が使えるけど、その分魔力の消費も大きいらしい。
そして、ここでカードに表示されていた魔力強度が深く関わってくる。
あの魔力強度の数字は、問題なく行使できるナンバーを表していたのだ。つまりは、僕の場合は七まで、リーリアさまの場合は六までを問題なく行使できる。
それ以上は、魔力切れなどの危険を起こすことがあるので、絶対にやってはいけないと領主さまが口を酸っぱくして言っていた。
ナンバーズのコードはこう。
1→ワール
2→ツール
3→スリル
4→フォール
5→ファブル
6→シクル
7→セブル
8→エトル
9→ナイル
10→テール
僕は七等級なので、セブルまでは問題なく行使できる。
そして、数字があがるごとに魔法の威力や効果があがるんだけど、これも順番通りにあがるわけではない。
順番としては、1→3→5→7→9となり、偶数はなんなのかというと並列発動である。ゲーム風に言うなら、全体攻撃のようなものである。
2の場合は、1の魔法を並列発動できるということだ。
他には、4が3の並列発動、6が5の並列発動、8が7の並列発動、10が9の並列発動となっている。
他にも、位置を指定するものや大きさを指定するものなどもあるが、それらはまたおいおいと言った感じになるようだ。
まぁ、一気に言われても覚えられないだろうしね。
このコードを唱えると同時に魔力を放出することで魔法となるらしい。
どうして魔法が六歳からなのかわかった。それくらいの年齢にならないと、相手の言っていることを理解できないからなんだ。
残りのイメージはそのまま。普通に思い浮かべるだけ。発動だけならコードだけでできるんだけど、レオンが前にやったみたいに水を自在に操ったりなどは、どのように動かすかのイメージが必要みたいだ。
「ルイくんは、魔力操作はやったことあるかい?」
「ないです」
ここであるなんて言おうものなら、後日に尋問が待っているだろうからね。
「では、リーリアの後に手伝うから、少し待っていてくれ」
「はい」
手伝うってなんだろうと思いながらも頷くと、領主さまはリーリアさまのを手を取る。
リーリアさまは、領主さまの手をぎゅっと握りしめた。
しばらくそのままだったけど、リーリアさまがパッと手を離して言う。
「わかりました!」
リーリアさまはそう言うと、手をかざす。
「『ワール ブルム』」
リーリアさまがコードを唱えるのと同時に、リーリアさまのを目の前に小さな水球が浮かぶ。
「わぁ、すごいです!」
青魔法はレオンがよく見せてくれたけど、リーリアさまが初めて使った魔法だからか新鮮だ。リーリアさまは、少し恥ずかしそうに言う。
「次はルイの出番だね」
おうふ……そうでした。リーリアさまが終わったなら僕だよ。
「では、ルイくん。手を出してもらえるか」
「はい」
僕は領主さまが差し出してきた手に自分の手を乗せる。
すると、その手のひらから何かが流れ込んでくる感覚があった。ものすごい違和感だ。肌がぞわぞわして、あまり心地よい感じではない。
「もう感じ取れるのか?」
表情に出ていたのか、領主さまが不思議そうに尋ねてくる。
「はい……これはなんですか?」
「それが魔力だ。流れていく感覚がわかれば、自分で動かしやすいだろう?」
ああ、これはそういう意味だったのか。それなら、僕にはいらなかったなと思いつつも、「ありがとうございます」と返した。
「できそうなので、やってみます」
僕は、意識を集中する。魔力を動かして、手のひらに集める。それと同時に、ろうそくの火をイメージする。
「『ワール レドム』」
コードを唱えると同時に魔力を放出すると、手のひらから小さな火がボッと燃えた。
おおー!これが魔法!ついに僕も魔法使いだ!
「ルイの火、きれいだね」
「ありがとうございます」
魔力切れかはわからないけど、リーリアさまの水はとっくに消えていた。体感的に十分も経っていないと思うから、ずっと維持し続けるのは難しいのかな?
それとも、それにすら何かしらのコードが必要なのか。ああ、『詠唱破棄』がほしい!
「今の感覚忘れないように、一日に一度は魔法を使って練習するように」
「「はい」」
どうやら、魔法講義は終了らしい。ようやく帰れる……と、思ったのもつかの間。「ルイくん」と呼び止められ、嫌な予感を感じつつも振り返る。
「ルーシーと一緒でかまわない。三日後に屋敷に来るように」
「はーい……」
どうやら、僕の平穏はまだまだ先のようです……
応援ありがとうございます!
1,431
お気に入りに追加
3,337
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる