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第一章 最強の少年
16 話してはいけない
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ルイスが食事を持って自分の部屋に向かった後。
レカーティアは、正座している目の前の人物に説教していた。
「まぁ、空気をぶち壊したことは、知らなかったから仕方ないとしてもね?今は夕暮れよ?もうすぐ日が落ちて夜になるのよ?あんな大きな声を出したら迷惑でしょう?」
「はい、すみません……」
先ほどの豪快さがまるで嘘のように、縮こまってしまっていた。
レカーティアは、さすがに罪悪感のようなものを感じ始めた。普段とは違い、自分にはこんな姿を見せるところに惹かれてしまっているのもあるだろう。
惚れた弱みというやつだ。
「わかったならいいわよ。それよりも、本題に入らせてちょうだい。ここからはルイスの母親として話したいわ」
「なら、俺もルイスの父親として聞いてやらねぇとな」
そう言って、彼は立ち上がる。
彼は、ジュード。レカーティアの夫であり、ルイスの養父でもある。
普段はレカーティアの尻に敷かれているが、ルイスの前では、父としての威厳を見せることもある。
「今日、ルイスが約束を忘れて、帰ってくるのがギリギリになったのよ」
「それで説教していたのか」
先ほどまで、怒られた理由がよくわからなかったが、それを聞かされると、ジュードは文句の一つも出てこない。
「ええ。ダグラスが言ってくれたお陰で間に合ったけど……あんな調子なら、話すべきなのかしら」
ルイスは、自分自身も知らない、ある重大な秘密を抱えている。
それは、力加減ができない理由にも繋がってくるのだが、二人は隠していた。
だが、最近のルイスは、加減できないことへの悩みが大きくなっている。それを解消できるのならば話したほうが……と、考えてしまうのだ。
「……いや、まだ幼いルイスにはわからんだろう。わかるように……いや、力が加減できるようになってから話せばいい」
「……そうね。下手に話して混乱させるわけにはいかないもの……」
レカーティアは、歯を噛み締める。
悔しかった。ルイスが苦労しているのを知っていながら、自分は見ていることしかできないのが。まだ、話すわけにはいかないのが。
「ほら、辛気臭い話はこれくらいにして、飯を食うぞ!腹が減って仕方ねぇんだ」
ジュードが大声でそう言うと、もう冷めてきていた料理を頬張る。
(もうちょっときれいに食べられないのかしら……)
レカーティアは呆れてしまうが、同時に、少し心が軽くなってくる。
これだから、この夫は嫌いになれない。
「別に誰も取らないから、ゆっくり食べなさいよ」
レカーティアは、パンを一口大に千切って、口に運んだ。
◇◇◇
一方、ギルドでは、夕方の依頼の達成報告のラッシュが終わり、後片づけをしていた。
ダグラスも、その後片づけを手伝っていたが、誰かに肩をとんとんと叩かれる。
ダグラスが振り向くと、受付嬢のドロシーだった。
「あの……ダグラスさん。なんで彼のことをあんなにも気にかけるのですか?」
「彼っつうと……ルイスのことか?」
ダグラスが聞き返すと、ドロシーはこくりと頷く。
「別に、彼を悪く言うわけではないですけど……普段は薬草採取や街の雑用などで稼いでいますよね?魔物も討伐できないですし。でも、そんな人たちって他にもいるじゃありませんか」
ドロシーの言う通り、どうしても戦いが苦手という人は一定数いるのは事実だ。
冒険者は、よほどの大罪でも犯していない限りは、経歴を問わない。保護者の許可があれば、未成年でもなることはできる。
だからこそ、全員が戦えるというわけではなく、ただ生きるために細々とした依頼を受けながら暮らしている者もいる。ルイスが特別なわけではない。
だが、それはルイスが魔物を討伐できないという前提があっての話だ。
変にルイスに注目が集まるのは避けたかったが、何も言わないままでは、おそらく納得してくれない。
「ルイスは、魔物は討伐できる。討伐証明を持ってこれないだけだ」
「えっ……?どういうことですか?」
討伐証明は、体の部位を持ってくればいい。
ギルドから、魔物ごとに部位を指定はされているが、別に、それじゃないと討伐証明にならないわけではない。
その魔物から手に入れたものであることが分かれば、頭であろうが腕であろうが、それこそ魔石でも証明はできた。
それを出せないというのは、明らかに異様だ。魔物を倒せば、自然とそこに死体が残るのだから、そこから剥ぎ取ればいいだけだ。
そう、思っていたのだがーー
「ルイスはな、体の原型を残せないんだよ。魔法も拳も蹴りも強すぎてなぁ……」
「な、何を言ってるんですか。そんな子どもがいるわけーー」
「……あぁ、お前たちは、ルイスの実力を知らねぇからな。無理もねぇか」
ダグラスは、ルイスが初めてギルドに来た時に、たった一度だけ見たことがある。
ルイスは、半年前に養父母と共にギルドへとやってきて、わざわざ自分を呼び立てた。
(まったく……あの時は何事かと思ったな。わざわざこの俺を呼ぶから……)
ダグラスは、このギルドのギルドマスターだ。普段は奥の執務室で、依頼の仕分けや、報酬額を決めたりしているので、表に出てくることは滅多にない。
だが、いきなりあの見ず知らずの夫婦に呼び出された。最初は訳がわからなかったが、ルイスのあの常識外れの強さを見て、全て納得した……いや、してしまった。
「前に、レッドロックワームが迷宮に出たことがあっただろ?」
「あぁ、先日の……。ですが、あれは高ランクの冒険者が退治したのでは……?」
「そういうことにしたんだよ。ルイスに変に突っかかる奴が現れかねないからな」
「えっ……?で、では、ルイスくんが退治されたんですか!?」
レッドロックワームをルイスが倒したという噂は、ドロシーも聞いていたが、本当とは思ってもいなかった。
「声でけーよ……!」
ダグラスがドロシーの口を手で塞ぐ。
受付嬢は、視線を周りに向けると、同じように後片づけをしていた仲間たちが、こちらを訝しんでいる。
幸い、ドロシーの大声しか聞こえず、何の話なのかは理解されなかったようだった。
ドロシーは、少し恥ずかしくなり、顔を赤くして俯いた。ダグラスは、手をドロシーの口から離す。
「とにかく、そんなわけだから、迷宮以外でも、素材を残したまま退治できる方法を一緒に考えてやってるんだ。わかったらもうルイスのことは聞くな」
「えっ、で、でも……」
「それがルイスのためでもある」
ダグラスはそれだけ言うと、執務室のほうへと向かった。
(ルイスくんのためって、どういうこと……?)
残されたドロシーは、ただその後ろ姿を呆然と見ているしかできなかった。
レカーティアは、正座している目の前の人物に説教していた。
「まぁ、空気をぶち壊したことは、知らなかったから仕方ないとしてもね?今は夕暮れよ?もうすぐ日が落ちて夜になるのよ?あんな大きな声を出したら迷惑でしょう?」
「はい、すみません……」
先ほどの豪快さがまるで嘘のように、縮こまってしまっていた。
レカーティアは、さすがに罪悪感のようなものを感じ始めた。普段とは違い、自分にはこんな姿を見せるところに惹かれてしまっているのもあるだろう。
惚れた弱みというやつだ。
「わかったならいいわよ。それよりも、本題に入らせてちょうだい。ここからはルイスの母親として話したいわ」
「なら、俺もルイスの父親として聞いてやらねぇとな」
そう言って、彼は立ち上がる。
彼は、ジュード。レカーティアの夫であり、ルイスの養父でもある。
普段はレカーティアの尻に敷かれているが、ルイスの前では、父としての威厳を見せることもある。
「今日、ルイスが約束を忘れて、帰ってくるのがギリギリになったのよ」
「それで説教していたのか」
先ほどまで、怒られた理由がよくわからなかったが、それを聞かされると、ジュードは文句の一つも出てこない。
「ええ。ダグラスが言ってくれたお陰で間に合ったけど……あんな調子なら、話すべきなのかしら」
ルイスは、自分自身も知らない、ある重大な秘密を抱えている。
それは、力加減ができない理由にも繋がってくるのだが、二人は隠していた。
だが、最近のルイスは、加減できないことへの悩みが大きくなっている。それを解消できるのならば話したほうが……と、考えてしまうのだ。
「……いや、まだ幼いルイスにはわからんだろう。わかるように……いや、力が加減できるようになってから話せばいい」
「……そうね。下手に話して混乱させるわけにはいかないもの……」
レカーティアは、歯を噛み締める。
悔しかった。ルイスが苦労しているのを知っていながら、自分は見ていることしかできないのが。まだ、話すわけにはいかないのが。
「ほら、辛気臭い話はこれくらいにして、飯を食うぞ!腹が減って仕方ねぇんだ」
ジュードが大声でそう言うと、もう冷めてきていた料理を頬張る。
(もうちょっときれいに食べられないのかしら……)
レカーティアは呆れてしまうが、同時に、少し心が軽くなってくる。
これだから、この夫は嫌いになれない。
「別に誰も取らないから、ゆっくり食べなさいよ」
レカーティアは、パンを一口大に千切って、口に運んだ。
◇◇◇
一方、ギルドでは、夕方の依頼の達成報告のラッシュが終わり、後片づけをしていた。
ダグラスも、その後片づけを手伝っていたが、誰かに肩をとんとんと叩かれる。
ダグラスが振り向くと、受付嬢のドロシーだった。
「あの……ダグラスさん。なんで彼のことをあんなにも気にかけるのですか?」
「彼っつうと……ルイスのことか?」
ダグラスが聞き返すと、ドロシーはこくりと頷く。
「別に、彼を悪く言うわけではないですけど……普段は薬草採取や街の雑用などで稼いでいますよね?魔物も討伐できないですし。でも、そんな人たちって他にもいるじゃありませんか」
ドロシーの言う通り、どうしても戦いが苦手という人は一定数いるのは事実だ。
冒険者は、よほどの大罪でも犯していない限りは、経歴を問わない。保護者の許可があれば、未成年でもなることはできる。
だからこそ、全員が戦えるというわけではなく、ただ生きるために細々とした依頼を受けながら暮らしている者もいる。ルイスが特別なわけではない。
だが、それはルイスが魔物を討伐できないという前提があっての話だ。
変にルイスに注目が集まるのは避けたかったが、何も言わないままでは、おそらく納得してくれない。
「ルイスは、魔物は討伐できる。討伐証明を持ってこれないだけだ」
「えっ……?どういうことですか?」
討伐証明は、体の部位を持ってくればいい。
ギルドから、魔物ごとに部位を指定はされているが、別に、それじゃないと討伐証明にならないわけではない。
その魔物から手に入れたものであることが分かれば、頭であろうが腕であろうが、それこそ魔石でも証明はできた。
それを出せないというのは、明らかに異様だ。魔物を倒せば、自然とそこに死体が残るのだから、そこから剥ぎ取ればいいだけだ。
そう、思っていたのだがーー
「ルイスはな、体の原型を残せないんだよ。魔法も拳も蹴りも強すぎてなぁ……」
「な、何を言ってるんですか。そんな子どもがいるわけーー」
「……あぁ、お前たちは、ルイスの実力を知らねぇからな。無理もねぇか」
ダグラスは、ルイスが初めてギルドに来た時に、たった一度だけ見たことがある。
ルイスは、半年前に養父母と共にギルドへとやってきて、わざわざ自分を呼び立てた。
(まったく……あの時は何事かと思ったな。わざわざこの俺を呼ぶから……)
ダグラスは、このギルドのギルドマスターだ。普段は奥の執務室で、依頼の仕分けや、報酬額を決めたりしているので、表に出てくることは滅多にない。
だが、いきなりあの見ず知らずの夫婦に呼び出された。最初は訳がわからなかったが、ルイスのあの常識外れの強さを見て、全て納得した……いや、してしまった。
「前に、レッドロックワームが迷宮に出たことがあっただろ?」
「あぁ、先日の……。ですが、あれは高ランクの冒険者が退治したのでは……?」
「そういうことにしたんだよ。ルイスに変に突っかかる奴が現れかねないからな」
「えっ……?で、では、ルイスくんが退治されたんですか!?」
レッドロックワームをルイスが倒したという噂は、ドロシーも聞いていたが、本当とは思ってもいなかった。
「声でけーよ……!」
ダグラスがドロシーの口を手で塞ぐ。
受付嬢は、視線を周りに向けると、同じように後片づけをしていた仲間たちが、こちらを訝しんでいる。
幸い、ドロシーの大声しか聞こえず、何の話なのかは理解されなかったようだった。
ドロシーは、少し恥ずかしくなり、顔を赤くして俯いた。ダグラスは、手をドロシーの口から離す。
「とにかく、そんなわけだから、迷宮以外でも、素材を残したまま退治できる方法を一緒に考えてやってるんだ。わかったらもうルイスのことは聞くな」
「えっ、で、でも……」
「それがルイスのためでもある」
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残されたドロシーは、ただその後ろ姿を呆然と見ているしかできなかった。
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