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後宮の調略
後宮潜入
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エリカとアラは後宮の清掃のおばさんとして潜入した。
妃候補でも募集していればよかったのだが、そんなに都合よく募集はなかった。エリカは歌や楽器の特技もなく、芸事のアピールもできない。
剣技、体術、馬術であれば一流だと言ったら、それは衛兵試験だろうとおじさんが呆れていた。おじさんというのは、アラの妹のレミさんの常連客だ。なんと後宮の人事部長とのことで、どこでもいいから紹介してほしいと頼んだのだ。
人事部長はまさかこんな美女2人が来るとは思っていなかったので、掃除部の空き員枠を持ってきたのだが、実際に2人に会ってみて仰天した。2人とも王妃たちよりも美しいのだ。
いや、君たちならもっといい職がある、もう少し待ってくれ、と言ったのだが、すぐに働きたいというので、じゃあ、まずは働くかということで、掃除のおばさんにした。
***
掃除部の主任はキャサリンだ。今日来る新人2人は、人事部長からの推薦で、そんなに人が不足していないのに、無理矢理ねじ込められた。賞与は掃除部全体で配分するルールなので、人が増えると取り分が減ってしまう。そのため、キャサリンは不機嫌だった。
派遣されてきた2人は極上の美女だった。こんな美しい容姿は掃除の役に立つどころか、邪魔にしかならない。キャサリンはあのスケベ人事部長が囲っている女に違いないと思ったので、とりあえずは大切に扱うことにした。
「エリカとアラかい。人事部長からの推薦ということで大切に扱うよ。掃除する場所のなかでは一番楽な」
迎賓館と言おうとしたのだが、こんな美人が2人現れたらえらいことになる。
「迎賓館はちょっと新人には荷が重い。どこか希望はあるかい?」
「王様の書斎とかありますか?」
「エリカだったかね? 書斎は王のお付きの女官が掃除するんだ。王様に近づきたいのかい?」
「はい、できれば」
こんだけ美人なら、かなりの確率で王様の目に留まる。恩を売っておこう。
そうキャサリンは思った。
「わかった。王様の目に留まりそうなところの担当にするから、お前たちがえらくなったら、私のことを思い出しておくれよ」
そういわれてキャサリンから指定された場所はバラ園だった。
王の妃の何人かが毎日のように訪れ、王もまれに妃に連れられてくるという。
「キャサリンさん、なかなかいいところを紹介してくれたわね」
エリカとアラはさっそくバラ園の掃除に取り掛かった。つまらないことで問題を起こさぬように掃除はまじめに行った。
バラ園は小学校の校庭ぐらいの大きさで、2人で掃除をすれば2時間ほどで完了するが、キャサリンから1日かけていいと言われていた。
掃除を始めて1時間ほど経ったとき、1人の恐らく妃が、侍女数名を引き連れてバラ園を訪れた。
「あら? 掃除中?」
妃が気取った感じで聞いた。
「すぐに片付けます」
エリカはそう言って、アラと一緒にそそくさと掃除用具を持って、退散しようとした。
「ちょっと待って、あなたたち」
妃が引き留める。
「御用でしょうか?」
「見ない顔ね」
妃はただの掃除係にしては美し過ぎる2人に大きな違和感を感じた。
「はい、本日から配属になった新人です」
しかも、2人とも新人というのはおかしい。どちらかが経験者であるべきだ。
「そう。名前は?」
「エリカです」
「アラです」
妃はこの場ではこれ以上は追求せず、もう少し調査をしてからどう対応すべきかを考えることにした。
「ご苦労様、下がっていいわよ」
エリカたちは掃除部に戻っていった。
「あの二人の情報を集めなさい」
妃は侍女に調査を命じた。
エリカたちの初日は、このようなやりとりが、5人の妃との間で起きた。
妃候補でも募集していればよかったのだが、そんなに都合よく募集はなかった。エリカは歌や楽器の特技もなく、芸事のアピールもできない。
剣技、体術、馬術であれば一流だと言ったら、それは衛兵試験だろうとおじさんが呆れていた。おじさんというのは、アラの妹のレミさんの常連客だ。なんと後宮の人事部長とのことで、どこでもいいから紹介してほしいと頼んだのだ。
人事部長はまさかこんな美女2人が来るとは思っていなかったので、掃除部の空き員枠を持ってきたのだが、実際に2人に会ってみて仰天した。2人とも王妃たちよりも美しいのだ。
いや、君たちならもっといい職がある、もう少し待ってくれ、と言ったのだが、すぐに働きたいというので、じゃあ、まずは働くかということで、掃除のおばさんにした。
***
掃除部の主任はキャサリンだ。今日来る新人2人は、人事部長からの推薦で、そんなに人が不足していないのに、無理矢理ねじ込められた。賞与は掃除部全体で配分するルールなので、人が増えると取り分が減ってしまう。そのため、キャサリンは不機嫌だった。
派遣されてきた2人は極上の美女だった。こんな美しい容姿は掃除の役に立つどころか、邪魔にしかならない。キャサリンはあのスケベ人事部長が囲っている女に違いないと思ったので、とりあえずは大切に扱うことにした。
「エリカとアラかい。人事部長からの推薦ということで大切に扱うよ。掃除する場所のなかでは一番楽な」
迎賓館と言おうとしたのだが、こんな美人が2人現れたらえらいことになる。
「迎賓館はちょっと新人には荷が重い。どこか希望はあるかい?」
「王様の書斎とかありますか?」
「エリカだったかね? 書斎は王のお付きの女官が掃除するんだ。王様に近づきたいのかい?」
「はい、できれば」
こんだけ美人なら、かなりの確率で王様の目に留まる。恩を売っておこう。
そうキャサリンは思った。
「わかった。王様の目に留まりそうなところの担当にするから、お前たちがえらくなったら、私のことを思い出しておくれよ」
そういわれてキャサリンから指定された場所はバラ園だった。
王の妃の何人かが毎日のように訪れ、王もまれに妃に連れられてくるという。
「キャサリンさん、なかなかいいところを紹介してくれたわね」
エリカとアラはさっそくバラ園の掃除に取り掛かった。つまらないことで問題を起こさぬように掃除はまじめに行った。
バラ園は小学校の校庭ぐらいの大きさで、2人で掃除をすれば2時間ほどで完了するが、キャサリンから1日かけていいと言われていた。
掃除を始めて1時間ほど経ったとき、1人の恐らく妃が、侍女数名を引き連れてバラ園を訪れた。
「あら? 掃除中?」
妃が気取った感じで聞いた。
「すぐに片付けます」
エリカはそう言って、アラと一緒にそそくさと掃除用具を持って、退散しようとした。
「ちょっと待って、あなたたち」
妃が引き留める。
「御用でしょうか?」
「見ない顔ね」
妃はただの掃除係にしては美し過ぎる2人に大きな違和感を感じた。
「はい、本日から配属になった新人です」
しかも、2人とも新人というのはおかしい。どちらかが経験者であるべきだ。
「そう。名前は?」
「エリカです」
「アラです」
妃はこの場ではこれ以上は追求せず、もう少し調査をしてからどう対応すべきかを考えることにした。
「ご苦労様、下がっていいわよ」
エリカたちは掃除部に戻っていった。
「あの二人の情報を集めなさい」
妃は侍女に調査を命じた。
エリカたちの初日は、このようなやりとりが、5人の妃との間で起きた。
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