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第二章 王国編

第二十二話 即位

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 辺境伯のいない王国は全く問題にならないと思ったのだが、意外と手強かった。

 すでに偵察済の王国の北ニ十キロまでは瞬く間に占領出来たのだが、その後また膠着状態となった。

 私の背後の父に聞いたところ、王国の皇太子は聡明で、私の能力を熟知しており、私を王都まで潜入させないように対応策を施しているらしい。

 実際、私は先に進めないでいる。王国は完全に私だけをターゲットにしており、危なくて未知の土地に入れないのだ。

 私を兵士で囲いながら、少しずつ王国領土に侵攻していくという方法も試してみたが、恐ろしいほどの弓矢の雨が私めがけて降って来て、危うく死にそうになった。

「純粋に軍事力だけで戦っても勝てると思うのですが、その場合、かなりの被害が予想されます」

 カイエン軍師の弁だ。

 その通りだと思う。レギンの騎馬軍団は強力で、負けることはないと思うが、王国軍も弱くはない。王国は負ければ滅びてしまうため、必死なって戦うだろう。そうなると勝ったとしても被害は甚大となる。

 そういった状態で二年の月日が流れ、王国は国難を上手く切り盛り出来ない国王が、王位を皇太子に譲位し、新王ジョージ三世が即位した。

 その知らせを受けた翌日の朝議で、遂に陛下は私に皇位を譲位するとの話を持ち出した。

 朝議にはカイエン、マルクスの文武の両頭のほか、陸軍大将、海軍大将、十二の大臣が参列していた。

 私はようやく十八歳になったばかり。早すぎるのではないか、と私は思ったのだが、軍部は私の能力をよく知っており、全員が賛成だった。そして、十二大臣も半数以上が賛成だった。

 マルクスが私の皇位継承に賛成していることが原因だ。私の関白としての仕事はほとんど公にはなっていないが、賄賂が横行していた政治の腐敗が浄化され、有能で清廉な大臣に入れ替わっており、彼らがマルクスを崇拝していたのだ。

 陛下は上皇として政治から一歩退くものの、引き続き相談役として私をサポートしてくれるということで、私もしぶしぶ承諾した。

「ようやく皆に真実を話すことができる」

 朝議の終わりに、陛下はふうっと息を吐いた。

「私はロリコンではない」

 朝議の参列者は突然のお言葉に意表を突かれた感じだ。

 私の能力のことを話すのかと思っていたら、私とは偽装結婚であることを説明したいようだ。

「皇后ももう十八だから、最近は『ロリ帝』などと私を呼ぶ輩は減って来たが、私はこれまで皇后に指一本触れてはいない。そうだろう、皇后?」

「はい、男女の営みという意味では、触れられたことはございません。夜伽のときもベッドは別々です」

 皆は信じていない顔つきだ。

「信じてくれそうもないか。もう少し秘密を打ち明けよう。私の生母は皇太后様ではなく、皇后の祖母だ。つまり私は皇后の母の兄で、皇后の叔父だ。知っての通り、我が国の法律で叔父は姪は婚姻できない。皇后を皇帝に即位させた後、皇后には婿を取らせるつもりだ」

 参加者が衝撃の事実にざわついているが、私は構わず、私の主張を述べた。

「陛下、私の夫は私がじっくりと選びたいのですが」

「ダミアンではだめか?」

「ダメではないですが、もう少しいろいろな殿方を見てみたいのです」

 陛下はしばらく考えていたが、大きくうなずいた。

「ははは、わかった。カレンは皇帝になるのだ。思うようにすればよい」

 私の即位の儀式は、それから1週間後に執り行われた。
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