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 聖女の衣裳は確かに上質の絹でできていて高価な物だとわかる。引っ掛けでもしたら、と思うとこんな服怖くて外では着られない…聖女としての誇りがどうとか、神殿から来たという侍女達は話すのだけど、誇りよりも何よりも少し身体を動かすのだけでも緊張してしまう物を常時の服装として着てくれと言われても……


 馬車にしても、居心地はいいけど…ちょっとやり過ぎな感じがするし…


 ゴトゴトと走り出した馬車は揺れも少なく、座椅子のクッションも硬さのちょうど良い事……考え事をしていてもつい睡魔に襲われて意識を手放しそうになって困るくらいだ。


 食べ物は何というか…凄く新鮮で健康には良さそう…精進料理?という見た目からして薄味なのが分かる物が出てくる。

 
 焼肉と唐揚げ、オイルを使ったドレッシングをたっぷり使ったサラダにお茶漬け食べたい……

 
 浄化が終われば湯浴みをして公爵家に帰る訳だが、ルーチェリアの心の中ではこんな事を思っていたりもする。

 聖女聖女と言われても…中身はルーチェリアではない事をまだ誰も知らない。奇跡的に病から回復し、死の淵から蘇ってこられたのは聖女の力があったからとか何とか。聖女の偉大な力を受けた代わりに今までの記憶を全て失うと言う悲劇的な代償を払わなければならなかった、とドラマティックな解釈を魔術士様が説明してくれてたっけ……


 いや、ルーチェリアじゃないんだけど?


 ちゃんと自分の意識も記憶もある。正直、こう言いたいし、元の世界に帰りたくもある。でも、この子…ルーチェリアがとてもいい子で、いい子すぎてちょっと可哀想になっちゃったんだ。いずれは帰るにしても、交代した時に困らない様に、ルーチェリアの仕事を確認しておいてあげようと思った。


 それが今につながって………


「こんな服、着るようになっちゃったんだよねぇ~~」

 どべ~ん、と馬車の座椅子に寝転ぶ時も、どこか引っ張りすぎてはないか、伸びてはないかとヒヤヒヤして気が休まらない。

「着物や浴衣だったら着た事あるけど、ドレスなんて着た事無いし…」

 聖女の衣裳は真っ白な足首までの丈の絹地に、所々刺繍が入っている物だ。はっきり言って可愛い。お姫様になった気分を少しは味わえる。好きか嫌いかと言えばかなり好き……
 

 けれど、聖騎士を名乗るイケメンの騎士様。私はここに来てからの短い期間に、私は既に悟っているのですよ………







 
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