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第3章:ダンジョンリフォームと初めての突撃お宅訪問!

第10話:死者の王ブラムス

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「すげー立派な扉だな?」
『どうですか? 羨ましくないですか? カタログに扉も色々と載ってますよ? 夏のホラー特集のページには、期間限定のものもありますし』
「いや、褒めたわけじゃないし。玄関は人を招き入れるためのものだからね? こんな来るものを完全に拒絶するような扉とか一生引きこもれるわ! というか、夏のホラー特集ってなんだよ!」

 とりあえず石ころに突っ込みつつ、目の前の重厚なドアを見つめる。
 そして、溜息を吐いて首を横に振る。
 そうしたくなるような、そんなドア。

 扉にはスカルドラゴンの意匠が施してあり、そのドラゴンが生きてるかのように蠢いている。
 しかも、その周りを死霊がウヨウヨと飛び交っていて、近づくのも憚られる。
 そのうえ裸の目に包帯を巻いた姉ちゃんや、首に槍を刺され、抉られた両目から血を流してる兄ちゃんやらが、蠢くドラゴンの周りに両手両足を埋め込まれた状態で呻き声をあげている。
 正直触りたくも無いんですけど。

 あっ、開けて貰えるの?
 ドアマンだったの君たち?
 有難う。
 苦悶の表情を浮かべていた死霊たちが、ドアノッカーを鳴らしてくれる。
 ドアノッカーは普通の輪っかだったけど、近づきたくないから有難い。

「来たか……扉を開けよ」

 中から、えらく渋い声が聞こえてくる。
 というか、渋いを通り越してしわがれた声が聞こえてくる。
 どうやら結構なお年を召しているようだ……
 不老不死?
 老人になってからなったのかな?
 可哀想に。
 先に若返りの秘術から編み出せばよかったのに。

「ありがとう」

 死霊たちが扉を開けてくれたので、礼を言って中に入る。
 と同時に、燭台に火が灯る。
 光る魔石くらい、用意しとけよ!
 それか、せめて中に入る前に火はつけとけ。
 燃料費節約か?
 
「ここまで辿り着くとは、中々にやりおる……ゲホッゲホッ」
「それはどうも、大丈夫ですか?」

 というか、いきなり咳き込み始めたけどこの人大丈夫かね?

「ふむ……すまんな。流石に数1000年を生きると、身体にもあちこちガタが来ておってのう……最近じゃノーライフキングとかって呼ばれてるらしいが」
「そうですね。死を超越した存在とは聞いてますが」
「すまん、ゲホッゲホッ」

 大丈夫か本当に。
 話を遮ってまで咳き込むとか、結構来てないか?

「その目……わしの事を侮っておるの?」
「ああ、まあ、はい」

 正直、相手になるわけが無い。
 ようやく姿が見えたが、完全にヨボヨボの爺だ。
 骨に皮が張り付いてるだけの、生きているだけ。
 そう死なないだけといった印象でしか無い。

「フフフ……愚か者が!」
「なっ!」

 目の前の爺が一瞬で消えたかと思うと、胸に違和感を感じる。
 まさか……違和感の元に目をやると、老人の腕が深々と俺の胸に刺さっていた。

「馬鹿……やろう……」

 そのまま心臓を握り潰されたのが分かった。

「自分に向けて言っておるのかのう? フォッフォッフォッ」

 爺みたいな笑い声してんじゃねー。
 最後に見たのは、顔を歪めて笑うムキムキのナイスミドルだった。
 というか、絶対貫通とかマジでいらねえんだよ!
 貫通耐性が仕事してない時点で、こいつ絶対貫通持ちだ。
 そっちの耐性つけるの、まだ早いって。

――――――
2回目
 
「どういうトリックかのう? ゲホッゲホッ」

 流石に正体を見たあとだと、凄くわざとらしく感じる。
 というか、演技やめろ。
 騙されたのもあって、凄くこう……いーっ! ってなる。
 顔を覆ってしまいたくなるというか。
 自分にとっても、相手に対しても恥ずかしい。

「何がだ?」
「ふんっ、あの腐れ女の気配が消えたと思ったらお主、扉の前に転移してきたではないか」

 そうか、そう言えばそういう事になるんだったな。
 どういう事だ?
 教えて、偉い人……

『はあ……ヘルはマスターと従魔契約を結んでますからセーブにより転生の理から外れてますよ? なので、死に直しても、ヘルはすでに従属状態でマスターの所持品です。その状態でここまで転移で来てますから、ブラムスからしたらなんらかの手段でヘルとマスターが入れ替わったと考えているのでは?』

 ああ、大した問題じゃ無かったわ。

『いえ、相手からしたら最後の門番が、いきなり侵入者になったら驚きますよ?』

 うん、言い方間違えた。
 俺にとっては・・・・・・、大した問題じゃ無かったわ。

「腐れ女だと? やっぱり奪って正解だったわ」
「奪ったじゃと? ゴホッゴホッ」

 ああ、本当にわざとらしい……なんで、最初騙されたんだろ。
 てかもう、なんていうか。
 帰りたい。

「はあ、本当にそんなんでノーライフキングとかって呼ばれてるのかよ」
「ゴホッゴホッ……」
「大丈夫か?」

 俺の言葉に爺の目が、怪しく光る。

「わしが、そんなに弱そうか?」
「ああ、だいぶ歳いってるもんな?」
「ふんっ、愚か者め!」

 前回は爺の姿が一瞬で掻き消えたように見えたが、今回はしっかりと集中してみていたからな。
 普通に、最短距離で若返りながら突っ込んできてたわ。
 取りあえず腹に向けられた手を、右手で掴む。

「なっ!」
「ほらっ、足腰がそんなに弱ってるから、座っててもよろけるんじゃないのか?」

 そのままナイスミドルマッチョマンバージョンのブラムスを押し返す。

「ふっ、驚き過ぎて若返ったか?」
「ちっ、若造が。ここまで来たのは流石ということか」
「おっさんこそ、爺の振りして油断誘おうとか趣味が悪いな。それとも不意打ちしか出来ない雑魚なのか?」

 俺の言葉に対して、ブラムスは片眉を上げるだけに留める。
 なるほど、流石に本物らしい。
 いや、ちょっと膝がと手が震えてないか?
 さっきのは、演技じゃなかったとか?

 なら騙されても仕方ないか。


「震えてるけど、大丈夫か? 実は今の姿が精いっぱいの強がりで擬態とか? 歳だから、時間制限付きでしか本気出せないとか?」
「調子に乗るな若造が。お前なんか俺が相手をするまでも無い」
「えっ? 図星?」

 そうか……やっぱり、爺なのか。

「ちょっとからかった程度で、調子に乗りおって」
「はっ? なんでそうなるの? かなり本気だったよね? 絶対貫通まで使ってたし」
「なっ? くっ……そんなものは使ってない!」
「うわぁ、顔真っ赤」

 そんなに興奮すると、倒れるぞ爺。

「グヌヌ……」
「というか、普通に不意打ち防いだんですけど? 余りに見え見えで、不意打ちって気付くのが恥ずかしかったけどさ」

 さらに挑発を重ねる。

「フフ、驕るな。こいつらを倒して見せろ! そしたら、相手をしてやろう」

 聞けよ!
 っていうか、お前が俺を侮り過ぎなんじゃ無いか?
 ブラムスの両横に魔法陣のようなものが現れる。

「行け、アベル、カイン! こいつに現実を教えてやれ」
「はっ」
「御意に」

 現れたのは、豪華な鎧に身を包んだ顔の白すぎるイケメンと、真黒な豪華な刺繍の施されたローブと、いかにも何かを司ってそうな杖を持った同じく白すぎる顔のイケメンだった。
 勇者さんと賢者さんですね。
 おいっ! おまっ、ふざけんな!
 マジでこのおっさん最悪だ。
 この二人相手した後に、ラスボスの連戦とか普通にしんどいんだけど?
 いや長丁場、だるって思った程度だけど。

「必死だな。プッ」
「殺せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 煽り耐性、ひっく。

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