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第29話「人狼君、再び②」
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やがて、ダンとスオメタルは……
タイミングをはかり、忽然と消えた!
ダンが『隠れ身の魔法』を発動し、姿と気配を消したのである。
《!!!》
たまげたのは、つかず離れず尾行していた人狼である。
ダンの言う通り、今の姿は、漆黒の精悍そうな顔つきをした『大型の狼』なのである。
多分、獣本来の姿の方が鼻も利き、追跡且つ尾行もし易いのだろう。
先日見せていた半狼半人の姿ではなかった。
尾行していた人狼は戸惑い、何とか消えたふたりを見つけ出そうと右往左往する。
ビンゴである。
やはり人狼の目的は、ダンとスオメタルであった。
しかしダンが行使した隠れ身の魔法は、ほぼ完ぺきだ。
姿が見えなくなるのは勿論、人狼は匂いも気配も察知は出来ない。
しばし経っても……
ダン達の姿は見えない。
と、ここでいきなり!
人狼へ魔法がかけられた。
「がっ!」
短く吠え、苦悶の表情を浮かべた人狼は、ばったりと無様に地に伏した。
身体機能を一時的に停め、捕縛する『束縛の魔法』が、
ダンから発動されたのである。
ここでようやく……
隠れ身の魔法が解除され、ダンとスオメタルが姿を現した。
ダンは念話を使い、狼――人狼との意思疎通を試みる。
ううう~っ。
しかし、地に伏した人狼は唸り、憎悪の眼差しを投げかけてくるだけだ。
と、ここで、手を挙げたのがスオメタルである。
一応、笑顔ではある……
『マスター、この場は私にお任せください』
『おお、スオメタル、言葉遣いも元に戻ってる。その感じだと、クールダウンしたか?』
『はい、スオメタルは何とか冷静さを取り戻しました……もう気分はフラットでございます』
『良かった、落ち着いて』
『はい、私の個人的な怒りの感情を爆発させるより、任務遂行が第一優先ですゆえ』
『うん、偉いぞ、スオメタル』
『はい! 我ながら偉いと思うのでございます』
『うんうん』
『ひとつ、試してみたいのでございます』
『ひとつ? 試す?』
『はい! マスターにより開発され、新たに授けて頂いた、種族間万能翻訳機能を使い、念話と併せて、コイツとやりとりしてみますゆえ』
『おお、以前作った万能翻訳機能か! そうだったな。ぜひやってみてくれ。上手く行けば、俺も指輪形態の魔道具化して持ち歩くから』
『御意でございます。……おい、クソ狼! 何故、私とマスターをデバガメした上、しつこくストーカー尾行するでございますか? 理由次第では容赦なく! めためたにぶった斬る上、粉々のミンチに破砕するでございますよぉっ!』
『お、おいおい! スオメタル。クールダウン全然してね~じゃないか!』
『……うふふふふ、そうでしょうか? そう見えますか、マスター』
スオメタルは一見、爽やかな笑顔だ。
しかしダンが良く見れば、笑っているのは口元だけ、目は殺気に満ちていた。
『おいおい、見えるし、聞こえたぞ。クソ狼とか、ぶった斬るとか、ミンチって、最初からそんなケンカ腰で……』
『はぁい! 華麗にスルー! ほら、クソ狼。さっさと私に全部ゲロするのでございます。さもないと容赦なくぶち殺しますよ』
スオメタルはそう言うと、ダンから貰ったミスリル合金製スクラマサクスを
「どん!」と無造作に地面へと突き刺した。
倒れている人狼の顔と刀身は10㎝も離れていない。
下手に動けば人狼の顔が切れてしまいそうだ。
『う、うわああああ~っ!!』
「ぎらり」ときらめく刃を見て絶叫した人狼ではあったが……
何とかという感じで言葉を告げて来る。
『あ、あぶなっ! や、や、やめてくれぇっ!! ……あ、あ、兄者達からよ! い、言われて来たんだよ!』
スクラマサクスを至近距離に刺され、伏したままの人狼。
怯えと興奮の感情を交互に見せながら、念話を使い、人語で返して来た。
スオメタルの目が更に冷たい怒りに燃える。
『……何だ、お前。念話が使えるし、下手でも人間語が喋れるのでございますか? わざわざ手間をかけさせやがってです』
『う、う、うるせぇなっ! ひ、ひ弱な人間如きと気安く喋りたくね~んだよ!』
『で、ございますか? 私もお下劣で、最低なけだものとは一切喋りたくないのでございますが、マスターの命令でございます。遺憾ですが、致し方ありませぬ』
『うるせ~!! 遺憾言うな! お前らと! け、決着を付けろって兄貴達から、言われて来たんだ、勝負しろや、ごらあ!!』
『ほう、決着? はい、こちらとしては、大いに望むところでございます。例えばこうでございますか?』
淡々と話すスオメタルは無造作に右手を挙げると、いきなり魔法を発動した。
どっがががががががががが~~ん!!
すると!
見えない力が働き、
轟音、地響きとともに、少し離れた場所の白っぽい大岩が粉みじんに砕け散った。
『ひ、ひええええ~~っ!!』
ぎゃうん! ぎゃうん! と
しっぽを丸め悲鳴をあげる人狼に対し、スオメタルは全く容赦しない。
『魔力を固め、かる~くあの岩にぶつけてみましたが、いかがでございます? ……岩の次はお前の番でございますよ。それとも切り刻む方をお好みですか?』
スオメタルの声は届いていない。
ぎゃうん! ぎゃうん!
人狼は恐怖で、吠えるだけ……
大混乱に陥っていた……
だが、スオメタルの厳しい追及は終わらなかった。
『何か、慌てているようですが、よっく、ご覧になりましたか? 補足致しますと、岩を砕いたのが悪魔を魂ごと何体も粉砕した、遠当ての魔法でございます』
ぎゃうん! ぎゃうん!
『私の話が聞こえていないようでございますね。もう切り刻むのも面倒です。宜しければ、お前も遠当ての魔法をとくと味わって魂ごと一気に消滅してみますか?』
『おいおい、スオメタル、もうコイツ完全にビビってるって』
しかし、ダンの制止は、またもスルーされた。
瞬間、スオメタルの口調が一変したのだ。
『ごらぁ!! いつまでびびっとる! しゃきっとせんか! 早く尾行の理由をゲロせいっ! クソ狼ぃ!』
乙女の命は恋の道……
恋路を邪魔されたスオメタルの怒りはとどまることを知らなかったのである。
タイミングをはかり、忽然と消えた!
ダンが『隠れ身の魔法』を発動し、姿と気配を消したのである。
《!!!》
たまげたのは、つかず離れず尾行していた人狼である。
ダンの言う通り、今の姿は、漆黒の精悍そうな顔つきをした『大型の狼』なのである。
多分、獣本来の姿の方が鼻も利き、追跡且つ尾行もし易いのだろう。
先日見せていた半狼半人の姿ではなかった。
尾行していた人狼は戸惑い、何とか消えたふたりを見つけ出そうと右往左往する。
ビンゴである。
やはり人狼の目的は、ダンとスオメタルであった。
しかしダンが行使した隠れ身の魔法は、ほぼ完ぺきだ。
姿が見えなくなるのは勿論、人狼は匂いも気配も察知は出来ない。
しばし経っても……
ダン達の姿は見えない。
と、ここでいきなり!
人狼へ魔法がかけられた。
「がっ!」
短く吠え、苦悶の表情を浮かべた人狼は、ばったりと無様に地に伏した。
身体機能を一時的に停め、捕縛する『束縛の魔法』が、
ダンから発動されたのである。
ここでようやく……
隠れ身の魔法が解除され、ダンとスオメタルが姿を現した。
ダンは念話を使い、狼――人狼との意思疎通を試みる。
ううう~っ。
しかし、地に伏した人狼は唸り、憎悪の眼差しを投げかけてくるだけだ。
と、ここで、手を挙げたのがスオメタルである。
一応、笑顔ではある……
『マスター、この場は私にお任せください』
『おお、スオメタル、言葉遣いも元に戻ってる。その感じだと、クールダウンしたか?』
『はい、スオメタルは何とか冷静さを取り戻しました……もう気分はフラットでございます』
『良かった、落ち着いて』
『はい、私の個人的な怒りの感情を爆発させるより、任務遂行が第一優先ですゆえ』
『うん、偉いぞ、スオメタル』
『はい! 我ながら偉いと思うのでございます』
『うんうん』
『ひとつ、試してみたいのでございます』
『ひとつ? 試す?』
『はい! マスターにより開発され、新たに授けて頂いた、種族間万能翻訳機能を使い、念話と併せて、コイツとやりとりしてみますゆえ』
『おお、以前作った万能翻訳機能か! そうだったな。ぜひやってみてくれ。上手く行けば、俺も指輪形態の魔道具化して持ち歩くから』
『御意でございます。……おい、クソ狼! 何故、私とマスターをデバガメした上、しつこくストーカー尾行するでございますか? 理由次第では容赦なく! めためたにぶった斬る上、粉々のミンチに破砕するでございますよぉっ!』
『お、おいおい! スオメタル。クールダウン全然してね~じゃないか!』
『……うふふふふ、そうでしょうか? そう見えますか、マスター』
スオメタルは一見、爽やかな笑顔だ。
しかしダンが良く見れば、笑っているのは口元だけ、目は殺気に満ちていた。
『おいおい、見えるし、聞こえたぞ。クソ狼とか、ぶった斬るとか、ミンチって、最初からそんなケンカ腰で……』
『はぁい! 華麗にスルー! ほら、クソ狼。さっさと私に全部ゲロするのでございます。さもないと容赦なくぶち殺しますよ』
スオメタルはそう言うと、ダンから貰ったミスリル合金製スクラマサクスを
「どん!」と無造作に地面へと突き刺した。
倒れている人狼の顔と刀身は10㎝も離れていない。
下手に動けば人狼の顔が切れてしまいそうだ。
『う、うわああああ~っ!!』
「ぎらり」ときらめく刃を見て絶叫した人狼ではあったが……
何とかという感じで言葉を告げて来る。
『あ、あぶなっ! や、や、やめてくれぇっ!! ……あ、あ、兄者達からよ! い、言われて来たんだよ!』
スクラマサクスを至近距離に刺され、伏したままの人狼。
怯えと興奮の感情を交互に見せながら、念話を使い、人語で返して来た。
スオメタルの目が更に冷たい怒りに燃える。
『……何だ、お前。念話が使えるし、下手でも人間語が喋れるのでございますか? わざわざ手間をかけさせやがってです』
『う、う、うるせぇなっ! ひ、ひ弱な人間如きと気安く喋りたくね~んだよ!』
『で、ございますか? 私もお下劣で、最低なけだものとは一切喋りたくないのでございますが、マスターの命令でございます。遺憾ですが、致し方ありませぬ』
『うるせ~!! 遺憾言うな! お前らと! け、決着を付けろって兄貴達から、言われて来たんだ、勝負しろや、ごらあ!!』
『ほう、決着? はい、こちらとしては、大いに望むところでございます。例えばこうでございますか?』
淡々と話すスオメタルは無造作に右手を挙げると、いきなり魔法を発動した。
どっがががががががががが~~ん!!
すると!
見えない力が働き、
轟音、地響きとともに、少し離れた場所の白っぽい大岩が粉みじんに砕け散った。
『ひ、ひええええ~~っ!!』
ぎゃうん! ぎゃうん! と
しっぽを丸め悲鳴をあげる人狼に対し、スオメタルは全く容赦しない。
『魔力を固め、かる~くあの岩にぶつけてみましたが、いかがでございます? ……岩の次はお前の番でございますよ。それとも切り刻む方をお好みですか?』
スオメタルの声は届いていない。
ぎゃうん! ぎゃうん!
人狼は恐怖で、吠えるだけ……
大混乱に陥っていた……
だが、スオメタルの厳しい追及は終わらなかった。
『何か、慌てているようですが、よっく、ご覧になりましたか? 補足致しますと、岩を砕いたのが悪魔を魂ごと何体も粉砕した、遠当ての魔法でございます』
ぎゃうん! ぎゃうん!
『私の話が聞こえていないようでございますね。もう切り刻むのも面倒です。宜しければ、お前も遠当ての魔法をとくと味わって魂ごと一気に消滅してみますか?』
『おいおい、スオメタル、もうコイツ完全にビビってるって』
しかし、ダンの制止は、またもスルーされた。
瞬間、スオメタルの口調が一変したのだ。
『ごらぁ!! いつまでびびっとる! しゃきっとせんか! 早く尾行の理由をゲロせいっ! クソ狼ぃ!』
乙女の命は恋の道……
恋路を邪魔されたスオメタルの怒りはとどまることを知らなかったのである。
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