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第98話「やり方は間違っていない。 だが…… インパクトが弱い。 決定打に欠ける」

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フェルナンさんとの話合いが終わり、俺たちは3人で、
ローラン様たちが待つ俺の部屋へ移動した。

当然、ローラン様から告げられた本契約に伴う付帯説明が行われる事も伝えてある。

と、いう事で、俺が既に聞いた付帯説明が再び、
シャルロットとフェルナンさんへ行われ……
俺は自分のとったメモと付け合わせしつつ、改めて話を聞いた。

うんうん、今ローラン様がしている説明と、
俺の記憶、メモに書かれた内容、全てが合ってる。

問題なしと頷く。

それから質疑応答が行われた。
シャルロットとフェルナンさんからは、いくつか確認、質問があった。

俺は不明な点はなかったので、特にそのままスルー。

その質疑応答が終わり……頃合いと見た俺は「はいっ!」と手を挙げた。

ず~っと無言だった俺が、発言を求めたので、ローラン様は微笑む。

「ふむ、何かな? エルヴェ」

「はい、お願いがあります」

「お願い?」

「はい! 単刀直入に申し上げます。俺とシャルロットで同期のフェルナンさんを助けたいんです」

「ほう! フェルナンをか?」

「はい! しかしふたりだけでは全くの力不足。ですからお願い致します! ローラン様たちにもお力を貸していただけませんか?」

「ふむ、フェルナンを助ける為に君たちが? 我々も協力する……のか」

「はい! フェルナンさんは、ローラン様にお認めいただき、名を上げる事で、困難な道を切り開こうとしております。俺とシャルロットは 全身全霊をもって力添えするつもりなのです」

ここでシャルロットもローラン様へ懇願する。

「ローラン様! 何卒宜しくお願い致します!」

俺とシャルロットは敢えて、詳しい話をしなかった。

詳しい話をするのは、フェルナンさん本人からと思ったからだ。

自身の人生。
他人ではなく、自らが語らねば、ローラン様たちの心には響かない。

俺の真剣な表情を見て、ローラン様は柔らかく微笑む。

「ははは、同期ふたりにここまで言って貰えるとは、フェルナンも果報者だ。結構なわけありのようだが……詳しい事情を聞こう、皆、構わないな?」

ローラン様は、バスチアンさん、セレスさん、クリスさんを見て、
相談話を聞くよう促した。

3人は全員、無言で頷いた。

よし!
どうやら、つかみはOKのようだ。

俺はローラン様へ深く礼をし、フェルナンさんへと向き直る。

「ありがとうございます! では、フェルナンさん、ローラン様たちに誠心誠意、詳しく話をしてください」

対して、フェルナンさん。
感極まったらしく、目が潤んでいる。

「わ、分かった! あ、ありがとう! エルヴェ君! そしてシャルロットさん! 君たちへ心の底から感謝する!」

フェルナンさんは俺とシャルロットへ深々と礼をし、

「ローラン様! 皆様方! フェルナン・バシュレ! 一生のお願いを申し上げます! 何卒よろしくお願い申し上げます!」

と、改めてローラン様へたちへ、深々と礼をしたのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

……フェルナンさんは、伯爵令嬢彼女さんとの馴れ初めと経緯。
そして現在置かれている状況を話して行った。

特に伯爵令嬢彼女のお父上の意向で、侯爵家次期当主との見合いが迫っている事を、
切々と語り、何とか状況を打破し、彼女さんと結婚したいと熱く決意を述べた。

ローラン様たち、そしてシャルロットもじっと聞いている。

俺はいつもの癖で、メモをとった。

フェルナンさんから、何度も事情を聞いているが、
思い違い、行き違いなどがないよう、しっかりと記録しておこうと考えたからだ。

やがて……フェルナンさんの話は終わった。

ローラン様が言う。

「ふむ、事情は理解した。私はブラントーム伯爵家は勿論だが、アングラード侯爵家とも付き合いはある。まあ、顔見知りに毛が生えた程度だがな」

補足しよう。

ブラントーム伯爵家は、伯爵令嬢彼女さんの実家。
彼女さんの名は、オレリア・ブラントーム。

見合い相手の名は、ウジューヌ・アングラードだ。

「それで、フェルナン君は何か方法を考えているのかね? 私ローランに認めて貰ったとブラントーム伯爵家へ伝えるのかい?」

「は、はい! 実は昨日オレリアと会い、研修を終え、良い感じだったと伝え、彼女のお父上、ブラントーム伯爵へも伝えるよう頼んでいます」

「成る程」

「はい! そしてこのたびめでたくグランシャリオの本契約を結ぶに至った、なのでアングラード家との見合いの中止をお願いし、私フェルナン・バシュレとの婚約を申し込もうと思っています」

「そうか……やり方は間違っていないと思う。だがインパクトが弱い。決定打に欠けるな」

やり方は間違っていない。

だが……

インパクトが弱い。
決定打に欠ける。

そんなローラン様のコメントを聞き、
やっぱりな! 予想した通りの反応だな! と思った。

なので、俺は自分のアイディアを出すべく「はい!」と挙手をしたのである。
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