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侍女はしばらく考えていたようだったが、やがて諦めたように一礼して部屋から出て行った。
──そう、アドニス様は何か別の理由でわたくしのことを守ろうとしてくれているのだわ……。
そうでなければあんなふうにわたくしに触れてくれるはずがないもの……。
そう思いながらも、セーリーヌの心は少し晴れなかった。
アドニス侯爵が自分を見舞いに来てくれたのは嬉しい。
しかし、そのことと彼がセーリーヌを大切に扱ってくれるのは別のことだ。
──なぜかしら……。胸の奥が痛むわ……。
セーリーヌは目を伏せた。
そして、頭から布団を被ると無理矢理に目を閉じたのだった。
☆■▽☆■▽
三日後、セーリーヌの体調も安定したので、実家の伯爵家に戻ることになった。
王宮の客室にいたにもかかわらず、結局、殿下もエリザベータも一度も病室には来ず、そのまま帰ることになってしまった。
──別に、寂しくはないけれど……。
そう思いながらも、命がけで守った代償がこれほど大きかったことは……ショックだった。
セーリーヌが帰り支度をしていると、そこにはアドニス侯爵が立っていた。
彼はなにも言わずに静かにこちらを見つめている。
「アドニス様……!」
──そう、アドニス様は何か別の理由でわたくしのことを守ろうとしてくれているのだわ……。
そうでなければあんなふうにわたくしに触れてくれるはずがないもの……。
そう思いながらも、セーリーヌの心は少し晴れなかった。
アドニス侯爵が自分を見舞いに来てくれたのは嬉しい。
しかし、そのことと彼がセーリーヌを大切に扱ってくれるのは別のことだ。
──なぜかしら……。胸の奥が痛むわ……。
セーリーヌは目を伏せた。
そして、頭から布団を被ると無理矢理に目を閉じたのだった。
☆■▽☆■▽
三日後、セーリーヌの体調も安定したので、実家の伯爵家に戻ることになった。
王宮の客室にいたにもかかわらず、結局、殿下もエリザベータも一度も病室には来ず、そのまま帰ることになってしまった。
──別に、寂しくはないけれど……。
そう思いながらも、命がけで守った代償がこれほど大きかったことは……ショックだった。
セーリーヌが帰り支度をしていると、そこにはアドニス侯爵が立っていた。
彼はなにも言わずに静かにこちらを見つめている。
「アドニス様……!」
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