【R18】心優しい淫魔のハジメテの相手は祓魔師でした

忘れられた悪魔

償い

あの後、ケンさんとカイがカリーナを家まで送り届けることになり、クオンとリアムは少し周辺を見回ってから帰宅するとのことで、その場で解散したおれ達。

リヒトに抱き締めて貰ったことで少しだけ魔力が回復したとはいえ、そのほとんどを羽根の傷を治すのに使ってしまったせいでまだ立ち上がることが出来なかったおれを、横抱きにして家まで連れて帰ってくれたリヒトは、脇目も振らず寝室に直行すると、おれの身体を壊れ物でも扱うかのようにそっとベッドに寝かせてくれて、沢山キスをしてくれた。

触れるだけのキス、啄むようなキス、ねっとりと舌を絡ませたキス...。

どれもすごく気持ち良くて、唾液と共に力を沢山分けてくれて、魔力を失い冷えきっていた身体がじわじわと熱を取り戻していくのと共に、久々にリヒトに触れられて、下腹部がジンジンと疼き、奥まった場所がトロトロと濡れ始めているのを感じた。

もう二度と触れて貰えないかもしれない、もしまた触れて貰えるようになるとしてもそれまで一体どれほどの年月がかかるのかも分からない、そう思っていたからこそ、彼と交わすキスが今まで以上に幸せで堪らなくて、さっき外で散々泣いたはずなのに枯れることを知らない涙が勝手に溢れて止まらない。


「...幸せにするって、誓ったばかりなのに。沢山辛い思いさせて、本当にごめん」


唇を重ねながら泣き続けるおれを見て、リヒトは一度身体を起こすとゆっくりとおれの身体も抱き起こし、優しく抱き締めて背中をさすったり頭を撫でたりしてくれた。

そして、そうしながら謝ってくる彼の言葉に、胸が締め付けられる。

すごく、寂しかった。
すごく、悲しかった。
不安で不安で堪らなかった。

だけどそれは、リヒトのせいじゃない。
リヒトは何も悪いことをしていない。

だから謝らないで。

またおれのところに戻ってきてくれたからそれだけでいい。

涙のせいで言葉に詰まりながらも、素直な気持ちをゆっくりと伝えるおれの話を、リヒトはうん、うん、と相槌を打ちながら最後まで聞いてくれて、聞き終えたあとはまた強く抱き締めてくれて、震える声で「ありがとう」と言ってくれた。

でも、そこまで伝えてもなお、リヒトは申し訳なさそうな空気を纏った表情でおれを見てくる。


「…ねぇ、ルカ」

「ん…なぁに？」

「ルカは、俺のせいじゃないって言ってくれてるけど…やっぱり、ルカを沢山傷付けた償いをさせて欲しい。だから、俺に出来ることならなんでもするから、遠慮なく言ってね」


そんなの、気にしなくていいのに。

悪魔に記憶を弄られてしまったら、いくらリヒトが強くたって自分の意思に反した行動をとってしまうってことぐらい、おれだって分かってるのに。

でもきっとリヒトは聖職者だからこそ、自分のおかした過ちは、自分の行動をもってして償わなければいけないと言う意識が強いんだろう。

だからここは逆に、彼に何か枷を負わせてあげた方が、彼の気持ちは楽になるのかもしれない。

…そうは言っても、おれはリヒトがそばに居てくれれば、それ以上望むものなんてないから。


「…じゃあ、一つだけわがまま言ってもいい？」

「一つだけと言わず、いくつだって聞いてあげるよ？」

「ううん、一つでいいの。…あの…ね、明日お仕事お休みして…？ずっと、そばにいて欲しい...」


 それが、おれの唯一の願い。

ギュッと彼の服の胸元の布を握り締めて伝えたその言葉に、なかなか反応が返ってこず不安になってちらりとリヒトの表情をうかがうと、切れ長の瞳を真ん丸に見開いたリヒトと目が合い、そしてキラキラの膜が張ったそれがふにゃりと細められた。


「…ルカが可愛すぎて泣けてきた。いいよ、明日は重要な職務は無いからお休みして、沢山甘やかしてあげる。…まぁ、重要な職務があったとしても意地でも休むけどね」

「……いいの？」

「いいもなにも…むしろ俺もそうしたかったし。というか、もっと他にして欲しいこととか無いの？欲しいものとか」

「…えー？うーん……おれはリヒトとずっと一緒にいることが一番の願いだし、欲しいのはリヒトだから…あ、そうだ」

「なに？なにか思いついた？」

「うん、もう一つだけ…今日は、おれが最初にリヒトのこと気持ちよくしたい…リヒトの、飲ませて？」