悪魔と契約した少女

ばんご

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無惨な願い③

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アリアの言葉に気力を失った
ふと鏡に映る自分が視界に入った
本当に自分なのか疑った

けれどあの時の激痛が、それを物語っていた
体を作り替えられたことに
今の自分の容姿を見て、感じたのは恐怖

恐怖と一緒に様々な感情が昂り混じって、衝動的に鏡を拳にぶつけた

すると鏡は亀裂が走り、粉々になっていた
小さな破片が体に入る
けれど痛みは感じない

その虚しさに俺の中には絶望と苦しみしが残った
アリアの思惑通りに、俺は絶望した

そのうち、魂を喰らいに来るだろう
乾いた笑いが溢れた
抗うことさえ無意味だと知った

自害をしようとしたが、死ねなかった
致命傷になる部分を傷つけた
けれど、血飛沫が飛んだ瞬間
傷口が再生を繰り返した

何度も何度もやっで同じことの繰り返し
傷をつける速度よりも、修復する速度が早かった

そして悪魔には心臓がない
死ぬためには禁忌を犯せば死ねる

悪魔界の掟らしい
悪魔の王、支配者 サタンがいるらしい
そいつが決めたものだ

会ったことはないが、アリアの行いは悪魔界では許せるものなのだろうか
サタンはそれほど非道なものなのだろうか

禁忌に呼べるものだと俺は思った
だから、調べた
悪魔界におけるものを

悪魔は魂を刈り取るもの
死期に迫った人間は、悪魔を認識できる

悪魔同士では魂の取り合い、略奪
獲物ではない人間の魂の詮索
契約済みの魂を喰らうのは全て禁忌である

それを犯せば、悪魔は消滅を免れないだろう

他にも様々な禁忌、法律があった
俺は魂を喰らうことは考えていない
元人間が、人間の魂を喰らうなんて馬鹿げてる

幸いな事に、悪魔は食事をしなくても生きていける 人間とは違って

そして俺は一番欲しかった情報に巡り会えた

人間が悪魔になってしまった事例だ
その行為は、人間が望めば禁忌とされない

もし、悪魔とされてしまい魂の縛りをしてしまった場合、人間の時の心残りを叶えられれば解呪可能

その魂の縛りをした悪魔も、滅することが可能

『…陽菜』

俺の人間の時の心残りは、陽菜だ
陽菜を残して死んでしまうことが、苦しかった

陽菜は、どうなっているのだろう
俺は人間界に降りた
すると、彼女はいつものようにベットに横たわっていた

安堵するが、彼女は泣いていた
彼女の隣に寄り添いたくなって
窓に触れようとすると、すり抜けた

驚きを隠せなかった
物に触れられないのだ、人間界で俺は認識されない 拒絶されている

『今の俺は陽菜に触れることさえできない
 のか』

すぐ目の前に陽菜がいるのに、俺は呆然と立ち尽くした
そして、痛感した

誰にも認識されない孤独感が心に残って
今の俺には何もできない、という虚しさが残った

それでも俺は、諦めきれなくて陽菜を見守り続けた
例え見えなくても、陽菜が生きていられればそれでいいと思った

けれど、そのささやかな願いさえ壊された
あの日、陽菜が俺を認識する日までは

いつものように、窓越しに陽菜を見つめると
初めて視線が合い、まさかと思った

その瞳は虚で、以前のような光り輝く瞳ではなく、笑顔さえも失われていた
まるで人形のような姿に俺の心の中で何かが動いた

そして、行動に移した
俺は心の中で謝りながら
残酷な悪魔を演じ、陽菜に契約を持ちかけた
偽りの契約を
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