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2.思い出のミックスジュース(4)

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「ミオ、ジュースを飲みに行こう」

「え? ジュース?」

「ああ、この近くに喫茶店があるんだ。学校の授業が始まるまで時間はまだだいぶあるし、もうちょっとだけ一緒にいようよ」

「お兄ちゃん……嬉しいけど……いいの? お仕事は大丈夫?」

「平気さ。でも今日だけの特別だよ」

「うん。ありがとう!」

 こういうのは本当はいけないことなのかも知れないけど、できるだけ長く一緒にいてあげることで、ミオのさみしさが少しでも紛れてくれればいいと思っての提案だった。

「いらっしゃいませー」

 学校から歩くこと約三分。立ち寄った近くの喫茶店では、マスターの奥さんと見られるおばあさんが、俺たちを席まで案内してくれた。

「あらあら。こんなかわいいお嬢ちゃんが、ウチみたいなお店に来てくれるのは珍しいわね」

「えっ?」

「お嬢ちゃん?」

 俺たちは思わず顔を見合わせる。

 どうやらこのおばあさんも、ミオの事を女の子だと勘違いしているらしい。

 確かにミオはかわいい女顔だし、体つきもどちらかと言えば女の子寄りな方だから、お嬢ちゃんだと思い込むのも無理からぬ話ではあるが。

「それじゃあ、ご注文が決まったら呼んでくださいね」

 おばあさんはテーブルにお冷やとおしぼりを置いて、カウンターの方へと戻っていった。

「ねぇお兄ちゃん」

「ん?」

「あのおばあちゃん、ボクの事を『お嬢ちゃん』って言ったよね」

「うん。たぶん、俺の娘だと思ったのかも知れないね」

「えー。娘って女の子でしょ? ボク、そんなに女の子に見える?」

「そうだなぁ。やっぱり施設の園長先生が買ってくれたその服の事とかもあるし、見た目だけじゃ男か女かは分からないと思うよ」

「うーん」

 と唸りつつ、ミオは熱いおしぼりでゴシゴシと手を拭く。

「いいじゃん女の子ぽくても。俺はそういうの好きだよ」

「そうなの?」

「うん。ミオが女の子に間違えられるって事は、それだけ今の服が似合っていて、何よりかわいいって事だからね」

「お兄ちゃんがそう言ってくれるのは嬉しいけど、ボク、そんなに女の子っぽいかなぁ」

 ミオは自分の頬を突っつきながら、ポツリとつぶやいた。
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