87 / 243
第三章
結果として
しおりを挟む
あの初、怪盗から三日。
王都はあわただしく動いていた、らしい。
というのも学園にいて勉学に励む私からすれば、そういうのは関係ないことというか。
学園の外での出来事だ。
けど、学園内の生徒の耳にも何があったかは届く。
それは家族からであったり、友人からであったりさまざまなのだろうけど。
私の場合は、お兄様からだ。
恒例となりつつあるガブさんのとこでごはん。
今日は炊き込みご飯にチャレンジしてみたのだけど、おいしい。おいしい……私料理の天才かよ! と思う程度に美味しい。
おこげのところはわたさないんだからね!! と、お茶碗にごっそりいれた。
「つまりは、あの屋敷に入って、証拠っぽいものがあるのがわかったから殿下の指示で騎士団が突入、捜査ってことなんですよね」
「ああ。あの家……ウェリィ家とベイル家、それからステフォール商会にだ」
うーん、どれも私にはなじみがなさげ!
ステフォール商会が何してるだとかウェリィ家とベイル家がどうかかわってるとか私は興味がない。
だから右から左へ話の内容はお流れ状態だ。
「手紙の内容は、この前アレクが取り潰すべく動いた家の連中の居場所だとか、そこが持っていた販路をウェリィとベイルに振りたいという打診だった。書類はそれによる利益の見込みなどの予想だな」
「あ、これおいしい」
「打診には馬鹿正直にステフォールの名前、代表のサインと印があった。ステフォールが白を切ってもあれが動かぬ証拠。知らぬ誰かが作ったものだといっても、偽物を簡単につくれるようなものじゃあない」
「ああ、これお出汁かけてお茶漬にしたらおいしそう……」
「……俺も出汁をかけたら美味いと思うがレティよ」
「はい?」
「お前のために説明してやってるんだが?」
「あっ、ちゃ、ちゃんと聞いてますよ?」
テオが!
私は思ったことを口に出しまくっていた!
お兄様は聞いてなかっただろうと睨んでくる。ええ、聞いてませんでしたよ、なんでしたっけ!
「と、とにかくそのステフォール商会を捜査できる、やったー! ってことなんですよね?」
「……そうだと、いいんだがな」
お兄様はぷいっとそっぽむいた。
えー、そううまくいかない、いってないってことかな」
「レティ、ベイル家って覚えはないです?」
「まったく!」
なにそれ、みたいなノリで私が答えるとテオは本当に、どうでもいいことは素早く忘れるなぁと言う。
いや、そうじゃないと情報量多くてやってけないでしょ、と思うのだけど。
「ジュリア・ベイルは」
「あ。え、そこの家?」
「そうです」
ジュリア・ベイル。
さすがにその名前は覚えている。
あ、なんか、ちょっと察することができた。
「……ウェリィ家も、ジャジャル家の派閥ってことです?」
「そうだ」
「つまり、ステフォール商会って、ジャジャル家がバックについてると?」
その問いにお兄様は答えない。
沈黙は肯定だ。
ああ、それは……めんどそうですね。
というかこんなの、ジャジャル家が何か悪いことしてるってこと? そう言う流れじゃないです?
黒い話と言うのはどこにでもあると思うけど、我が家が黒い話担当じゃなくてよかったなと地味に思ってる。
「お兄様と殿下は」
結局のところ、何がしたいんです? と私は尋ねてみた。
ここに殿下はいないけども。
お兄様がしたいことくらいは、知りたいと思う。
「……俺は正義の味方ではないが」
「どっちかというと悪……いえなんでもないです」
「アレクは私的に友人で、公には将来使える相手だ。アレクがしたいことを手伝うくらいは、な」
お兄様の口から友人という言葉が落ちる違和感。
いや、そこじゃないか!
「なるほどー、殿下もお忙しいですね」
「アレクはあれだよね、そもそも国の金の流れがおかしいからはじまったんだっけ」
と、ここで黙ってもぐもぐしていたガブさんが口をはさんだ。
「なんか、国庫に余裕はある。あるけど、何か起きた時に国を賄えるかと言えばそうではない。じゃあこの金を食ってるのはいったいどこのどいつだ、っていう」
それでちょっとずつ調べてみると、国の金の使い道、つまり運用という点ではまぁ、多少の問題はあったけど、許容範囲内。問題はない。
しかし、貴族が納める税が、明らかにジャジャル家の派閥はおかしい、というとこから始まったのだとか。
なにがどうおかしいとかは教えてくれなかったけど。いや、私が聞いても忘れそうだけど。
「つまりは殿下はジャジャル家のあれそれを叩きだして綺麗にしたいってことなんですね?」
「そうだな。そうなる」
「ふーん。ジャジャル家の帳簿とか見ればいいんじゃないです?」
「その開示はさせた。綺麗すぎて何かやってるなとアレクは見てるけどな」
へー、と私は零す。けど、まったくすべて、綺麗にするっていうのはなかなか、というか。
とても難しいことじゃないかなぁ。大変そう。
しかし、まだ王子の殿下がそこまでやりまくってるのもすごいな、と思う。
私のイメージでは王子とか王様は貴族の言葉にホイホイ頷いてるイメージだったんだけど、少なくとも殿下はそうじゃない。
それをお兄様は、楽しいから手伝ってるんだろうなぁ。
この二人、やっぱり一緒にしない方が良いと思うんだけど。
そんなこんなでご飯も終わり、お開き。
どこそこの家がどうというのは、私にはあまり関係の無いことだと思う。
王都はあわただしく動いていた、らしい。
というのも学園にいて勉学に励む私からすれば、そういうのは関係ないことというか。
学園の外での出来事だ。
けど、学園内の生徒の耳にも何があったかは届く。
それは家族からであったり、友人からであったりさまざまなのだろうけど。
私の場合は、お兄様からだ。
恒例となりつつあるガブさんのとこでごはん。
今日は炊き込みご飯にチャレンジしてみたのだけど、おいしい。おいしい……私料理の天才かよ! と思う程度に美味しい。
おこげのところはわたさないんだからね!! と、お茶碗にごっそりいれた。
「つまりは、あの屋敷に入って、証拠っぽいものがあるのがわかったから殿下の指示で騎士団が突入、捜査ってことなんですよね」
「ああ。あの家……ウェリィ家とベイル家、それからステフォール商会にだ」
うーん、どれも私にはなじみがなさげ!
ステフォール商会が何してるだとかウェリィ家とベイル家がどうかかわってるとか私は興味がない。
だから右から左へ話の内容はお流れ状態だ。
「手紙の内容は、この前アレクが取り潰すべく動いた家の連中の居場所だとか、そこが持っていた販路をウェリィとベイルに振りたいという打診だった。書類はそれによる利益の見込みなどの予想だな」
「あ、これおいしい」
「打診には馬鹿正直にステフォールの名前、代表のサインと印があった。ステフォールが白を切ってもあれが動かぬ証拠。知らぬ誰かが作ったものだといっても、偽物を簡単につくれるようなものじゃあない」
「ああ、これお出汁かけてお茶漬にしたらおいしそう……」
「……俺も出汁をかけたら美味いと思うがレティよ」
「はい?」
「お前のために説明してやってるんだが?」
「あっ、ちゃ、ちゃんと聞いてますよ?」
テオが!
私は思ったことを口に出しまくっていた!
お兄様は聞いてなかっただろうと睨んでくる。ええ、聞いてませんでしたよ、なんでしたっけ!
「と、とにかくそのステフォール商会を捜査できる、やったー! ってことなんですよね?」
「……そうだと、いいんだがな」
お兄様はぷいっとそっぽむいた。
えー、そううまくいかない、いってないってことかな」
「レティ、ベイル家って覚えはないです?」
「まったく!」
なにそれ、みたいなノリで私が答えるとテオは本当に、どうでもいいことは素早く忘れるなぁと言う。
いや、そうじゃないと情報量多くてやってけないでしょ、と思うのだけど。
「ジュリア・ベイルは」
「あ。え、そこの家?」
「そうです」
ジュリア・ベイル。
さすがにその名前は覚えている。
あ、なんか、ちょっと察することができた。
「……ウェリィ家も、ジャジャル家の派閥ってことです?」
「そうだ」
「つまり、ステフォール商会って、ジャジャル家がバックについてると?」
その問いにお兄様は答えない。
沈黙は肯定だ。
ああ、それは……めんどそうですね。
というかこんなの、ジャジャル家が何か悪いことしてるってこと? そう言う流れじゃないです?
黒い話と言うのはどこにでもあると思うけど、我が家が黒い話担当じゃなくてよかったなと地味に思ってる。
「お兄様と殿下は」
結局のところ、何がしたいんです? と私は尋ねてみた。
ここに殿下はいないけども。
お兄様がしたいことくらいは、知りたいと思う。
「……俺は正義の味方ではないが」
「どっちかというと悪……いえなんでもないです」
「アレクは私的に友人で、公には将来使える相手だ。アレクがしたいことを手伝うくらいは、な」
お兄様の口から友人という言葉が落ちる違和感。
いや、そこじゃないか!
「なるほどー、殿下もお忙しいですね」
「アレクはあれだよね、そもそも国の金の流れがおかしいからはじまったんだっけ」
と、ここで黙ってもぐもぐしていたガブさんが口をはさんだ。
「なんか、国庫に余裕はある。あるけど、何か起きた時に国を賄えるかと言えばそうではない。じゃあこの金を食ってるのはいったいどこのどいつだ、っていう」
それでちょっとずつ調べてみると、国の金の使い道、つまり運用という点ではまぁ、多少の問題はあったけど、許容範囲内。問題はない。
しかし、貴族が納める税が、明らかにジャジャル家の派閥はおかしい、というとこから始まったのだとか。
なにがどうおかしいとかは教えてくれなかったけど。いや、私が聞いても忘れそうだけど。
「つまりは殿下はジャジャル家のあれそれを叩きだして綺麗にしたいってことなんですね?」
「そうだな。そうなる」
「ふーん。ジャジャル家の帳簿とか見ればいいんじゃないです?」
「その開示はさせた。綺麗すぎて何かやってるなとアレクは見てるけどな」
へー、と私は零す。けど、まったくすべて、綺麗にするっていうのはなかなか、というか。
とても難しいことじゃないかなぁ。大変そう。
しかし、まだ王子の殿下がそこまでやりまくってるのもすごいな、と思う。
私のイメージでは王子とか王様は貴族の言葉にホイホイ頷いてるイメージだったんだけど、少なくとも殿下はそうじゃない。
それをお兄様は、楽しいから手伝ってるんだろうなぁ。
この二人、やっぱり一緒にしない方が良いと思うんだけど。
そんなこんなでご飯も終わり、お開き。
どこそこの家がどうというのは、私にはあまり関係の無いことだと思う。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3,168
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる