147 / 243
第四章
お小言タイム
しおりを挟む
移動は、私兵達が乗ってた馬を拝借した。
私も一人で乗れるけど、おいでとテオに引きずりあげられて一緒に乗ってる。
二人とも馬にまたがってる状態だから、顔は見えないんだけど。
テオが近い。超近い! こういう風に馬、乗ったことなかったなぁってこんな時にちょっと不謹慎かもと思いつつ嬉しいのは仕方ない。
何か話そうと思って、まずこれからの事かなって思ったんだけど、そうではなくて!
「レティは自覚が足りないんだよ。なんで一番前に立ってるわけ? 扉の開け方も雑だし、あそこで罠がないとかは考えてないよね」
「ちゃんと扉開ける前に魔力流して、罠とかないか確認したし!」
「でもそれ、扉開ける直前じゃなくて扉の前に来るまでだろ? 魔力抑えられてても何か流れてるくらいのはわかる」
「……罠なかったじゃない」
「今回はね」
お小言である。
え、待って。再会を喜ぶとかそういうのないの? ないの?
始まってしまったお小言大会をとどめる術が私にはない。
しかも言われてることに完全に、私が正しい! って反論できないようなところをつついてくるからしんどい。
「……テオさ、捕まってて助けられたのに、ありがとうもないのね」
「言ったよ」
「それ、お兄様に向かってでしょ。私にはないじゃない」
「…………」
「なんで黙るのよ」
ぐぬぬぬ。ほ、ほんと、テオ。テオなんなの、離れてる間に何かあったの。
なんか冷たいようなそっけないような。
何か言いなさいよー! と思っていると後ろでため息がひとつ、落ちた。
「あのね、確かに連絡つかなくなって、心配させた俺も悪い。悪いけどさ」
「悪いけど、なによー」
「トリスタン様にこっちに来てるって聞いて、生きた心地しなかったんだよ、俺は。巻き込んだって思って……レティ、何も考えずに色々しちゃうことあるから」
「うっ」
「デジレ様と殿下の所にいる。そこからここにくることは、よっぽどの事がない限りは無いって聞いて、ひとまずは安心したけど」
結局は、今ここにこうやって一緒にいる。一番前、とはいかないけど事件の前の方に立って、率先して解決しようとしてる。
テオはそう言って、それって危険に突っ込んでいくってことだよねと私にちくちくお小言を零す。
く、くそう。
今までこうやってお小言言わず、やっちゃえやっちゃえ! みたいなデジレ様と一緒にいたから刺さる。めちゃくちゃ刺さる!!
「しかも、俺達を見つけたのは幽体離脱とか、なにそれ……なにやってるの、それ本当に体に負担、かかってないの?」
「それはお兄様に見てもらったから多分大丈夫」
「でも気づいたらいつのまにか、ってやってるだろ?」
なんでわかるの。なんでわかるの……!!
今度は私が黙る番。やっぱりね、とテオはまた溜息をつく。
うう、後ろにいるから表情わかんないけど、でもすっごく呆れた顔をしているのは、わかる。
「だって、テオの事心配だったし、国で待ってるとかできない性格なのはわかってるでしょ。これでもすぐ飛び出すのは、我慢したんだから」
「はいはい。うん、今回の事で良くわかった」
「何よー、何がわかったのよー」
唸りながら問えば、テオはふはと笑い零す。そんな吐息が聞こえて、何笑ってるのよこいつー! と私は思うわけで。
「レティの傍には俺がいないと、やっぱ駄目だなってこと!」
は?
今更、今更何言ってるの、テオ。
ほんと、何言ってるの。
そんなこと最初からわかりきってる事じゃない。
けど。でも。
言葉にして言われると、恥ずかしくて幸せで堪らないわけで。
「そういう事いきなり言われるのは困る……」
「なんで」
「恥ずかしくなってどうしようもなくて馬から落ちそうになる」
そう言うと、落とさないよとテオは言って私の腰をしっかり、片手で抱えた。
ひぎゃああああ!!!
「本当にレティが傍にいる」
そこでやっと、何かこう。
安堵したようなものを感じる声色に替わった。
あ、テオもやっぱり、色々と気持ちに余裕はなかったんだと思う。なんとなく、今の言葉は柔らかかったから。
「いちゃだめ?」
「ううん、いて欲しい」
「うん、私もいて欲しい――けど」
お小言はほどほどでとお願いすると、それは無理かなと即答。
ですよね。
「……お前ら、いちゃついてるけどもうつくぞ」
「テオがでれでれしていることにちょっと動揺が隠しきれない……」
「いちゃついてないしー!」
「でれでれしてません」
一区切り、というところを見計らってかお兄様とライルさんが声をかけてくる。
王宮の中まで、この馬では入れないし、今日は入場規制というか、そういうのもある。
式典はどこで、と言うと王宮の中庭だそうだ。
じゃあそこまでどうやっていくのかって。
空飛んで見えなくなっていくに決まってるじゃない!!
なおライルさんは初体験だそうですが、テオのお兄さんなんだし多分すぐになれるはず。すぐには飛べないから、テオが背負うことになりました。
そんなわけで、王宮の近くに馬を乗り捨てる。馬はお利口さんなので自分で戻るところに戻れるそうな。
人気のない路地に入り、姿を消して、そして私たちは飛んだ。
きっと、事件の終わりまであとちょっと!
私も一人で乗れるけど、おいでとテオに引きずりあげられて一緒に乗ってる。
二人とも馬にまたがってる状態だから、顔は見えないんだけど。
テオが近い。超近い! こういう風に馬、乗ったことなかったなぁってこんな時にちょっと不謹慎かもと思いつつ嬉しいのは仕方ない。
何か話そうと思って、まずこれからの事かなって思ったんだけど、そうではなくて!
「レティは自覚が足りないんだよ。なんで一番前に立ってるわけ? 扉の開け方も雑だし、あそこで罠がないとかは考えてないよね」
「ちゃんと扉開ける前に魔力流して、罠とかないか確認したし!」
「でもそれ、扉開ける直前じゃなくて扉の前に来るまでだろ? 魔力抑えられてても何か流れてるくらいのはわかる」
「……罠なかったじゃない」
「今回はね」
お小言である。
え、待って。再会を喜ぶとかそういうのないの? ないの?
始まってしまったお小言大会をとどめる術が私にはない。
しかも言われてることに完全に、私が正しい! って反論できないようなところをつついてくるからしんどい。
「……テオさ、捕まってて助けられたのに、ありがとうもないのね」
「言ったよ」
「それ、お兄様に向かってでしょ。私にはないじゃない」
「…………」
「なんで黙るのよ」
ぐぬぬぬ。ほ、ほんと、テオ。テオなんなの、離れてる間に何かあったの。
なんか冷たいようなそっけないような。
何か言いなさいよー! と思っていると後ろでため息がひとつ、落ちた。
「あのね、確かに連絡つかなくなって、心配させた俺も悪い。悪いけどさ」
「悪いけど、なによー」
「トリスタン様にこっちに来てるって聞いて、生きた心地しなかったんだよ、俺は。巻き込んだって思って……レティ、何も考えずに色々しちゃうことあるから」
「うっ」
「デジレ様と殿下の所にいる。そこからここにくることは、よっぽどの事がない限りは無いって聞いて、ひとまずは安心したけど」
結局は、今ここにこうやって一緒にいる。一番前、とはいかないけど事件の前の方に立って、率先して解決しようとしてる。
テオはそう言って、それって危険に突っ込んでいくってことだよねと私にちくちくお小言を零す。
く、くそう。
今までこうやってお小言言わず、やっちゃえやっちゃえ! みたいなデジレ様と一緒にいたから刺さる。めちゃくちゃ刺さる!!
「しかも、俺達を見つけたのは幽体離脱とか、なにそれ……なにやってるの、それ本当に体に負担、かかってないの?」
「それはお兄様に見てもらったから多分大丈夫」
「でも気づいたらいつのまにか、ってやってるだろ?」
なんでわかるの。なんでわかるの……!!
今度は私が黙る番。やっぱりね、とテオはまた溜息をつく。
うう、後ろにいるから表情わかんないけど、でもすっごく呆れた顔をしているのは、わかる。
「だって、テオの事心配だったし、国で待ってるとかできない性格なのはわかってるでしょ。これでもすぐ飛び出すのは、我慢したんだから」
「はいはい。うん、今回の事で良くわかった」
「何よー、何がわかったのよー」
唸りながら問えば、テオはふはと笑い零す。そんな吐息が聞こえて、何笑ってるのよこいつー! と私は思うわけで。
「レティの傍には俺がいないと、やっぱ駄目だなってこと!」
は?
今更、今更何言ってるの、テオ。
ほんと、何言ってるの。
そんなこと最初からわかりきってる事じゃない。
けど。でも。
言葉にして言われると、恥ずかしくて幸せで堪らないわけで。
「そういう事いきなり言われるのは困る……」
「なんで」
「恥ずかしくなってどうしようもなくて馬から落ちそうになる」
そう言うと、落とさないよとテオは言って私の腰をしっかり、片手で抱えた。
ひぎゃああああ!!!
「本当にレティが傍にいる」
そこでやっと、何かこう。
安堵したようなものを感じる声色に替わった。
あ、テオもやっぱり、色々と気持ちに余裕はなかったんだと思う。なんとなく、今の言葉は柔らかかったから。
「いちゃだめ?」
「ううん、いて欲しい」
「うん、私もいて欲しい――けど」
お小言はほどほどでとお願いすると、それは無理かなと即答。
ですよね。
「……お前ら、いちゃついてるけどもうつくぞ」
「テオがでれでれしていることにちょっと動揺が隠しきれない……」
「いちゃついてないしー!」
「でれでれしてません」
一区切り、というところを見計らってかお兄様とライルさんが声をかけてくる。
王宮の中まで、この馬では入れないし、今日は入場規制というか、そういうのもある。
式典はどこで、と言うと王宮の中庭だそうだ。
じゃあそこまでどうやっていくのかって。
空飛んで見えなくなっていくに決まってるじゃない!!
なおライルさんは初体験だそうですが、テオのお兄さんなんだし多分すぐになれるはず。すぐには飛べないから、テオが背負うことになりました。
そんなわけで、王宮の近くに馬を乗り捨てる。馬はお利口さんなので自分で戻るところに戻れるそうな。
人気のない路地に入り、姿を消して、そして私たちは飛んだ。
きっと、事件の終わりまであとちょっと!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3,168
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる