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第四章
式典の始まり
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「空飛べるとか聞いてないよ、テオ」
「こっちでは飛ぶ必要もなかったし……」
こわいとびびりまくりのテオのお兄さんはがっちりしっかり、しがみついている。
首しまりそうじゃない?
空を飛ぶ? そんな馬鹿な、無理無理という考えが主流のこの世界では、なかなかに受け入れられない事実だとは思うけど。
テオが背負って飛んだ瞬間変な声だしてたのが私には聞こえたので、まぁ。
お兄様にもテオにも聞こえてたと思う。
そんな様子に、そのうち慣れると言って、お兄様は視線巡らせる。
そう、足元には――式典会場。それは王宮の中庭で、ロの字みたいに囲まれた場所。その角にはそれぞれ高い塔で、二階建てくらいの建物でつながって囲んでる。そこはバルコニーみたいな廊下もあるから、二階から会場を見てる人もたくさん。
少し高くなった舞台には、ミカエラ様とかの姿があるので、おそらく皇族の皆さんだと思う。
ミカエラ様の隣が空いているから、あそこはガブさんの席のはず。
さーっと視線を巡らせると貴賓席っぽいところがあって。そこに殿下とデジレ様がいらっしゃった。その後ろにいるのは、うちの国の軍服来てる人で、変装してるけどふたりのうちの一人はガブさんですよね、と。
「……トリスタン様、あそこ」
「ん?」
と、テオが気付いたのは皇族がいる檀上から離れた塔。そこに魔術師っぽいのがいたのが一瞬見えたらしい。
「……四つ全部にいると思うか?」
「二つ、じゃないですかね。さすがに皇族がいる側の塔は……警備の観点から見ても立ち入り禁止では」
「でもそういうとこって逆に使う感あるー」
なら、私が様子見してくると提案。
姿見えないし、魔力ちりちり流しながら行くし。何かいるって思われても相手が私を見つけることはできないと思う。
「時間もないしな」
もうすぐ式典が始まる。今はうろうろしているが、式典が始まればしばらく動くことは無いということで、狙いやすいということ。
「あ、いや。様子見に行く必要もない、のかも」
私、別にここから魔力流してなにか、そういうものがないのか探る事できそうだし。
そう思ったので、何をするとかそういうのは言わずに勝手にやった。
悪い事じゃないし。
私の魔力の波はゆるく、でも早く広がっていく。相手に気付かれない微かな魔力。
「……おう……仕掛けっぽい物、なんか四つともにあるんですけど」
「全部か」
「あとちょっと魔力で触った感じでは、あっちの皇族の皆さんの舞台ある側のふたつは、やばそうな感じ。あっちを先にどうにかするべきだと思うけど、あれは……直接触らないと難しそう」
なんていうか、その舞台側の塔の方は冷たい。そう、傍に人の気配がない。得体のしれない感じ。
あれは直接触って、どうにかした方がいいって気がする。
「なら、残りの二つの塔は俺が制圧してくる。あの舞台側のはレティ、テオドール。お前ら二人でいけ。でもその前にライルを降ろして、ライルはアレクに報告。四塔がやばそうだから、気をつけろって」
「了解しました」
ライルさんは、あの茂みのあたりにとテオに支持。テオはそっと降ろして、また戻ってくる。
報告をしたら、きっと殿下達も動くはず。
うん、でもそれどう動くかわかんないの怖いーと思うのは私だけかな!
殿下じゃなくて、デジレ様が。
お兄様は何かあれば動ける人間がいるのは大事、って思ってるんだと思うし。
「お兄様は一人でいけるんです?」
「余裕」
「どうやるんです?」
「こっち見た瞬間に転移酔いを」
「ひぇ」
転移酔い? なにそれ、みたいな顔をしているテオですが。
あれみたらそんな顔できなくなるからね。
ああ、はい。それを初手でやるなら、多分誰も勝てないと思う。いえ、勝つの無理でしょ……お兄様が限りなくやばい制圧手段を得てしまった事をしってるのは、今の所私だけ。
「そっちに人の気配はないみたいだが、注意しろよ。テオドール、レティを頼む」
「え、私そんなに頼りないです?」
「頼りがいはある」
!?
頼りがいがあるってお兄様が言った!?
「けどな、やりすぎることもあるだろ。その塩梅はテオドールの方が上手い」
「ああ、なるほど……ストッパーってことですね」
「そうやって理解してるなら、いつも押さえてくれると良いんだけど」
それは、無理かな!
そういう事、考えられるほどの余裕。自分の自制は、私はできないから。
止めてくれるのはテオのお仕事。私がテオを見ると、テオは瞬いて。
「好きにやればいいよ」
「そうする」
「まずかったら止めるから」
「よろしくね」
テオが私が間違いかけたら止めてくれる安心感。
さくっとやっちゃおうと、私たちはお兄様と別れた。
「ところで転移酔いって」
「お兄様の最強魔術。私もあれには勝てない」
「……それはまた」
やばそうな、とテオも察したらしい。うん。
やばいのよ……本当に、やばいのよ……死屍累々!
そして私達が動き始めたと同時に、式典が始まる流れ。
拡声の魔道具でそろそろですとアナウンスが入った。
「こっちでは飛ぶ必要もなかったし……」
こわいとびびりまくりのテオのお兄さんはがっちりしっかり、しがみついている。
首しまりそうじゃない?
空を飛ぶ? そんな馬鹿な、無理無理という考えが主流のこの世界では、なかなかに受け入れられない事実だとは思うけど。
テオが背負って飛んだ瞬間変な声だしてたのが私には聞こえたので、まぁ。
お兄様にもテオにも聞こえてたと思う。
そんな様子に、そのうち慣れると言って、お兄様は視線巡らせる。
そう、足元には――式典会場。それは王宮の中庭で、ロの字みたいに囲まれた場所。その角にはそれぞれ高い塔で、二階建てくらいの建物でつながって囲んでる。そこはバルコニーみたいな廊下もあるから、二階から会場を見てる人もたくさん。
少し高くなった舞台には、ミカエラ様とかの姿があるので、おそらく皇族の皆さんだと思う。
ミカエラ様の隣が空いているから、あそこはガブさんの席のはず。
さーっと視線を巡らせると貴賓席っぽいところがあって。そこに殿下とデジレ様がいらっしゃった。その後ろにいるのは、うちの国の軍服来てる人で、変装してるけどふたりのうちの一人はガブさんですよね、と。
「……トリスタン様、あそこ」
「ん?」
と、テオが気付いたのは皇族がいる檀上から離れた塔。そこに魔術師っぽいのがいたのが一瞬見えたらしい。
「……四つ全部にいると思うか?」
「二つ、じゃないですかね。さすがに皇族がいる側の塔は……警備の観点から見ても立ち入り禁止では」
「でもそういうとこって逆に使う感あるー」
なら、私が様子見してくると提案。
姿見えないし、魔力ちりちり流しながら行くし。何かいるって思われても相手が私を見つけることはできないと思う。
「時間もないしな」
もうすぐ式典が始まる。今はうろうろしているが、式典が始まればしばらく動くことは無いということで、狙いやすいということ。
「あ、いや。様子見に行く必要もない、のかも」
私、別にここから魔力流してなにか、そういうものがないのか探る事できそうだし。
そう思ったので、何をするとかそういうのは言わずに勝手にやった。
悪い事じゃないし。
私の魔力の波はゆるく、でも早く広がっていく。相手に気付かれない微かな魔力。
「……おう……仕掛けっぽい物、なんか四つともにあるんですけど」
「全部か」
「あとちょっと魔力で触った感じでは、あっちの皇族の皆さんの舞台ある側のふたつは、やばそうな感じ。あっちを先にどうにかするべきだと思うけど、あれは……直接触らないと難しそう」
なんていうか、その舞台側の塔の方は冷たい。そう、傍に人の気配がない。得体のしれない感じ。
あれは直接触って、どうにかした方がいいって気がする。
「なら、残りの二つの塔は俺が制圧してくる。あの舞台側のはレティ、テオドール。お前ら二人でいけ。でもその前にライルを降ろして、ライルはアレクに報告。四塔がやばそうだから、気をつけろって」
「了解しました」
ライルさんは、あの茂みのあたりにとテオに支持。テオはそっと降ろして、また戻ってくる。
報告をしたら、きっと殿下達も動くはず。
うん、でもそれどう動くかわかんないの怖いーと思うのは私だけかな!
殿下じゃなくて、デジレ様が。
お兄様は何かあれば動ける人間がいるのは大事、って思ってるんだと思うし。
「お兄様は一人でいけるんです?」
「余裕」
「どうやるんです?」
「こっち見た瞬間に転移酔いを」
「ひぇ」
転移酔い? なにそれ、みたいな顔をしているテオですが。
あれみたらそんな顔できなくなるからね。
ああ、はい。それを初手でやるなら、多分誰も勝てないと思う。いえ、勝つの無理でしょ……お兄様が限りなくやばい制圧手段を得てしまった事をしってるのは、今の所私だけ。
「そっちに人の気配はないみたいだが、注意しろよ。テオドール、レティを頼む」
「え、私そんなに頼りないです?」
「頼りがいはある」
!?
頼りがいがあるってお兄様が言った!?
「けどな、やりすぎることもあるだろ。その塩梅はテオドールの方が上手い」
「ああ、なるほど……ストッパーってことですね」
「そうやって理解してるなら、いつも押さえてくれると良いんだけど」
それは、無理かな!
そういう事、考えられるほどの余裕。自分の自制は、私はできないから。
止めてくれるのはテオのお仕事。私がテオを見ると、テオは瞬いて。
「好きにやればいいよ」
「そうする」
「まずかったら止めるから」
「よろしくね」
テオが私が間違いかけたら止めてくれる安心感。
さくっとやっちゃおうと、私たちはお兄様と別れた。
「ところで転移酔いって」
「お兄様の最強魔術。私もあれには勝てない」
「……それはまた」
やばそうな、とテオも察したらしい。うん。
やばいのよ……本当に、やばいのよ……死屍累々!
そして私達が動き始めたと同時に、式典が始まる流れ。
拡声の魔道具でそろそろですとアナウンスが入った。
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