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67.気づいちゃいました?

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 やっぱり恥ずかしくて、俯いてしまう僕の頭を撫でて、レヴェリルインは、捕まえたウサギを見下ろした。

「これはウサギじゃない。魔法ギルドの使いだ」
「……気づいてたんですか?」

 そう言ったのは、レヴェリルインにつままれたままのウサギ。
 ウサギは、くるんと宙返りしてレヴェリルインの手から逃れると、地面に着地するまでにウサギの耳がある男の人に姿を変えた。お尻には白いウサギの尻尾があって、僕と同じくらいの背で、動きやすそうな黒い服を着ている。レヴェリルインが作った湖で、僕が洗っていたにんじんを食べた人だ。

 彼は、僕らに無表情で言った。

「はじめまして。コエレシールさんを取り返しにきました。魔法ギルドのロウィフです」

 この人、確かラックトラートさんが、魔法ギルドの回し者って言ってた人だ。コエレシールを助けにきたのか?

 けれど、当のコエレシールは、顔を顰めている。

「ロウィフ……俺は自分の意思で来たんだ」
「そうなんですか? レヴェリルイン様に縛られて、情けなく連れていかれたって聞いたのですが。違うんですか?」

 それを聞いて、コエレシールはそっぽを向いてしまう。

 今度はレヴェリルインが腕を組んでロウィフにたずねた。

「コエレシールを連れ戻しに来たのか?」
「それはどうでもいい目的で、他にも大事な用事があるんです」
「……大事な用事?」

 聞かれたロウィフは、アトウェントラに振り向いて、姿勢を正した。

「魔法ギルドからアトウェントラさんに伝言です。魔法薬はどうやら、不良品だったみたいです。こっちが商人から買う予定だったはずのものを、あなた方が持って行った件に関しては、もう何も言いません。代金も請求しないので、ギルドも閉鎖しなくていいです」

 突然一方的なことを言われて、アトウェントラはひどく顔を歪めていた。

「何を今更……」
「僕らも魔法薬がインチキって知ることができて、よかったです」

 そんなことを急に言われても、アトウェントラは納得していないようだ。

 ラックトラートさんが、ロウィフを指差して言った。

「皆さん!! 聞きましたか!! あいつら、インチキですよ! レヴェリルイン様に、魔法薬とその魔法具がインチキだったことがバレてしまって、ことが公になる前に事態を無理やり収拾しにきたんです! 横暴です! 詐欺です!! たぬきさん新聞に真相を書いてやります!」
「うるさい……インチキたぬき……」

 ロウィフは冷たくラックトラートさんを睨みつける。
 だけど、ラックトラートさんだって負けてない。

「僕たちはインチキじゃありません!! そっちなんか、王家の回し者のくせに! レヴェリルイン様! あいつら、クリウールト殿下に言われて来たに決まってます! 早く爆発させちゃってください!」
「言いがかりはやめろ。こっちも、王家から送られてきた魔法使いたちには手を焼いてるんだ」

 睨み合う二人。

 一歩も引く様子のないラックトラートさんの首根っこを、レヴェリルインが掴んで無理矢理後ろに下げた。

「どういうことだ? 今回の件は、剣術使いたちの力を奪うためにお前たちが仕組んだんじゃないのか?」
「僕らじゃなくて、王家からの回し者の指示です。やったのは僕らですけど……レヴェリルイン様に全部バレたし、もう、魔法ギルドはアトウェントラさんを責めたりしません。例の魔法薬も、全部ドルニテット様に回収されてしまったみたいだし……なんなら、うちでちゃんとした魔法薬をタダで提供します」

 けれどアトウェントラは、ロウィフを睨みつけて「いりません」と冷たく断った。

「なぜですか? 身売りの件なら、コエレシールさんが勝手に言い出したことなので、どうでもいいですよ」

 辛辣に言う彼の前で、レヴェリルインは片手に杖を呼び出す。真っ赤にその先が光り、ロウィフは一歩下がった。

「れ、レヴェリルイン様?」
「……言いたいことはそれだけか?」
「待ってください! 僕らにも言い分はあって……」
「お前、以前、コフィレグトグスの人参を盗み食いしたな?」
「に、人参?? 食べたけど……」
「俺の従者の人参に手を出しておいて、無事に帰れると思うなよ」
「そ、そんなこと!? 待ってください! にんじん食べたのが僕だなんて、わからないじゃないですか……そこのチビの見間違いかも……」
「……この期に及んでとぼけるのか? 死刑だ」
「待ってください待ってください! すみません!! 確かに僕です! だって美味しそうだったから…………それに、そこのチビがボーっとしてるから……」
「ドルニテット……」

 レヴェリルインが背後のドルニテットに声をかけるときには、すでに彼は杖を握っていた。

「兄上、すでに不慮の事故に見せかける準備は整えています」
「ち、ちょっと準備良すぎ……」

 ロウィフが焦った様子で後ろに下がるけど、ドルニテットは無表情のまま、ずっと彼に杖を向けている。

 ラックトラートさんまで、「大丈夫です!! だったら僕が、魔物が出たって記事にしておきます!」なんて言い出している。

 それを聞いてロウィフは「そんなんだからお前らがせたぬきって言われてるんだよ!」って言い返していたけど、杖を持って迫ってくるレヴェリルインを見て、顔色を変えていた。

「ま、待ってください! 僕は、あなたたちを糾弾するために来たんじゃないんです!」

 ロウィフは、その場で頭を下げる。

「僕らも、アトウェントラさんを追い詰めてしまったことは、心苦しく思っています。申し訳ございませんでした。だけど僕らも、今は王家からの使いには逆らえないんです」
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