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7 火の玉?
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静かな暗闇の中待つこと30分。神さまは、全くもって戻ってくる気配はない。
「神さまのちょっとって信用できないな」
だいぶ夜目が効くようになり、佐久夜は境内を散策する事にした。岩と竹林に囲まれた境内には、今にも崩れ落ちそうな鳥居、もう動物の形すら成していない狛犬、手水舎なんて見慣れた物も無く、辛うじて牛舎っぽいと思われる建築物など、荒れ果てた状態だった。
「あ、この穴通り抜け出来そう」
岩壁が崩れ落ち、竹林へ入れそうな隙間を見つけ、体を捻り込んで足を踏み入れる。
「筍とかないかな?」
佐久夜は、足で笹の葉を避けながら、辺りを物色していった。
ギャギャッ!ギャギャギャッ!
神さまの神域と安心しきっていた佐久夜は、突如聞こえた獣の声に身体をビクンと震わせた。
恐る恐る鳴き声のする方向に顔を向けると、無数の火の玉を捕食しようとする大きな鳥がいた。大きな鳥は翼に炎を纏い、逃げ惑う火の玉を嘴で追い回す。
一つ、また一つと嘴で咥えられ、小さな火を纏ったまま、ゴクリと鳥に飲み込まれた。
「何あれ…」
佐久夜は、そっと竹林の影に潜み近づいて行った。
嘴で突き刺され、薙ぎ払われ、捕食され続ける火の玉たち。佐久夜は、思わず近くに落ちていた石を握り、大きな鳥に向かって投げつけた。食事の邪魔をされた大きな鳥が、ギロリと佐久夜を睨みつける。
「やっば!」
弱肉強食。自然の摂理だったかも知れない。だけど、無になるまで全てを喰らい尽くそうと捕食の限りを尽くす行為が、佐久夜には許せなかった。
「お前、食い過ぎなんだよ!」
弱々しく光る火の玉が、力なくゆっくり地面に落ちていく。鳥は、佐久夜を睨み、脚を踏み鳴らし威嚇してくる。
佐久夜は、手に持っていたペットボトルを鳥に投げつけた。
ギャン!
蓋の空いたペットボトルの中身の清水が飛び散る、鳥にバシャリと全身に浴びてしまった。
翼に纏った炎が消え、鳥がのたうち回る。佐久夜は、地面に落ちた火の玉を抱えると、鳥に飛び蹴りをかましてその場を走り去る。去り際にペットボトルも拾い上げポケットに捻り込む。
「早く社へ!火の玉、もう少しだかんな」
岩壁の隙間から、社へと急いで佐久夜は体を捩り潜り抜けた。
「神さま!神さま!!」
大声で神さまを呼びかける。社の中から、呑気な声を出して、神さまが出てきた。
「佐久夜、ちとまたせ過ぎたかのう」
「神さま、この火の玉、助け立てないか?」
肩で息をする佐久夜は、神さまの前に手を差し出して開いて見せた。
消えかかりそうな炎の衣を纏う、小さな鬼の子が、弱々しく横たわっていた。
「神さまのちょっとって信用できないな」
だいぶ夜目が効くようになり、佐久夜は境内を散策する事にした。岩と竹林に囲まれた境内には、今にも崩れ落ちそうな鳥居、もう動物の形すら成していない狛犬、手水舎なんて見慣れた物も無く、辛うじて牛舎っぽいと思われる建築物など、荒れ果てた状態だった。
「あ、この穴通り抜け出来そう」
岩壁が崩れ落ち、竹林へ入れそうな隙間を見つけ、体を捻り込んで足を踏み入れる。
「筍とかないかな?」
佐久夜は、足で笹の葉を避けながら、辺りを物色していった。
ギャギャッ!ギャギャギャッ!
神さまの神域と安心しきっていた佐久夜は、突如聞こえた獣の声に身体をビクンと震わせた。
恐る恐る鳴き声のする方向に顔を向けると、無数の火の玉を捕食しようとする大きな鳥がいた。大きな鳥は翼に炎を纏い、逃げ惑う火の玉を嘴で追い回す。
一つ、また一つと嘴で咥えられ、小さな火を纏ったまま、ゴクリと鳥に飲み込まれた。
「何あれ…」
佐久夜は、そっと竹林の影に潜み近づいて行った。
嘴で突き刺され、薙ぎ払われ、捕食され続ける火の玉たち。佐久夜は、思わず近くに落ちていた石を握り、大きな鳥に向かって投げつけた。食事の邪魔をされた大きな鳥が、ギロリと佐久夜を睨みつける。
「やっば!」
弱肉強食。自然の摂理だったかも知れない。だけど、無になるまで全てを喰らい尽くそうと捕食の限りを尽くす行為が、佐久夜には許せなかった。
「お前、食い過ぎなんだよ!」
弱々しく光る火の玉が、力なくゆっくり地面に落ちていく。鳥は、佐久夜を睨み、脚を踏み鳴らし威嚇してくる。
佐久夜は、手に持っていたペットボトルを鳥に投げつけた。
ギャン!
蓋の空いたペットボトルの中身の清水が飛び散る、鳥にバシャリと全身に浴びてしまった。
翼に纏った炎が消え、鳥がのたうち回る。佐久夜は、地面に落ちた火の玉を抱えると、鳥に飛び蹴りをかましてその場を走り去る。去り際にペットボトルも拾い上げポケットに捻り込む。
「早く社へ!火の玉、もう少しだかんな」
岩壁の隙間から、社へと急いで佐久夜は体を捩り潜り抜けた。
「神さま!神さま!!」
大声で神さまを呼びかける。社の中から、呑気な声を出して、神さまが出てきた。
「佐久夜、ちとまたせ過ぎたかのう」
「神さま、この火の玉、助け立てないか?」
肩で息をする佐久夜は、神さまの前に手を差し出して開いて見せた。
消えかかりそうな炎の衣を纏う、小さな鬼の子が、弱々しく横たわっていた。
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