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「佐久夜兄ちゃん!ハチミツ梅お代わり!」
「うむ、この茹で玉子なるものも、タルタルと絶妙な均衡じゃぞ!」

弁当のおかずを食い散らかされ、絶望感に打ちひしがれていた神さまと朱丸だったが、佐久夜が二人の好物を食卓に並べれば、途端に機嫌が良くなる。

佐久夜は、満面の笑みで食事をはじめた二人を微笑ましく思いながら、不貞腐れてゴロリと横になっている猫又に近づいた。

「何だ?オイラになんか文句あるにゃ?」
「いや、いきなり連れてきて悪かったなぁと思って」

佐久夜は、側に座ると、ぐるぐる巻きにされた組み紐を解いていった。猫又は、ジッと佐久夜を見つめ様子を伺うも敵意を感じられず、佐久夜の意図がわからない。

コトン

猫又の前に、牛乳が注がれたお椀が置かれる。佐久夜は、猫又の頭をそっと撫でた。

「とりあえず、お腹は一杯だろうと思うから、これでも飲んで寛いでいてよ」

佐久夜は、そっと立ち上がると、猫又の側を離れた。猫又は、お椀に鼻を近づけ、クンっと匂いを嗅ぐ。

「牛の乳……こんにゃもんで、オイラは懐柔されないにゃ」

猫又は、顔をプイっと背けて、再びふて寝をした。

「アイツ!佐久夜兄ちゃんが、せっかく…?」

猫又の様子に怒りを露わにする朱丸を、佐久夜は、そっと手を翳し諌める。朱丸が、佐久夜の顔を見ると人差し指をそっと口元に立てていた。

「朱丸、良いんだ」
「佐久夜は、お人好しじゃからのう。朱丸よ、佐久夜の好きにさせとこうぞ」

あまり納得していない朱丸は、ぷくりと頬を膨らます。そんな朱丸を佐久夜は、そっと指先で頭を撫でた。

「俺のために、怒ってくれてるんだろう?ありがとうな」
「そ、そんなんじゃないぞ。僕は、そうじゃなくてぇ、うわーん神さまのハゲ!!」
「待て!朱丸よ!我は、禿げてはおらぬぞ!」

猫又は、賑やかに食卓を囲む三人を一瞥すると背中を向けて丸くなって眠った。



次の日の朝、猫又が目を覚ますと、目の前におかかが塗されたおにぎり二個とお水、そして新しく入れ替えたであろう牛乳が注がれたお椀が置いてあった。

「ふん、何にゃんだよ。あの人間」

既に社には、学校に登校したため、佐久夜の気配はなかった。猫又は、ぐぐっと伸びをして立ち上がると、社の外に出た。

「うわぁ、何にゃ!オンボロにゃ」

昨晩は、気づかなかったが狛犬の頭は崩れ落ち、屋根は瓦が割れ、社周りの壁も所々崩れ落ち、向こうの竹藪が除いている。

「こんな廃れた神社にアイツ住んでいるのかにゃ?」

てくてくと猫又は、周りを見ながら散策し歩いていた。改めて見ると、境内には落ち葉一つも落ちていない。狛犬や灯籠もボロボロだけど、しっかりと磨かれている。社の床板も艶やかだ。

「オイラのことよりも、自分達の方が大変じゃにゃいか…」

猫又は、改めて自分が寝ていた場所に戻る。牛乳をペロリと舐める。

「…美味しいにゃ」

一口、そしてまた一口、猫又は、準備されていたご飯を食べていく。結局、おにぎりも牛乳も全て完食してしまった。











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