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「君、ねぇ君、名前教えてよ」
嵐が去った後、周囲に居た人たちに囲まれている。
「オブシディアン伯爵家のサラセニアだよ。宜しく」
僕が名乗ると、また周囲がざわめく。何なんだ一体。
「は、伯爵家だったんだね…君、先程の方とお知り合いではないの?」
皆訊きたかったであろう質問を、我慢しきれなくなった者がゴクリとつばを飲み込んで僕に問う。
「知り合い…ではないかなぁ?人違いされてるっぽかったけど」
僕がそう言うと、ギャラリーはヒソヒソと相談するように話し出す。
「だよね!そうだよね!レシュノルティア様はラフィオレピス様以外親しいご友人がいらっしゃらないはず!地味顔の君がまさか、ね」
周囲から、『なんだ、やっぱり勘違いじゃない?』という声がチラホラ上がり、皆それぞれの立ち位置に戻っていった。
いや、地味顔関係なくない?伯爵家だから公爵家と縁が全く無いわけでもないし、現に兄様は公爵家で騎士として働いているわけだし。
似非スマイルさんは何処の家の人か知らないけど、親しかったらどうだと言うんだ。
「あの二人、そんなに凄いの?」
何故か胸を撫で下ろしていた同じ入学生であろう隣人に声を掛けた。
すると驚愕した様に目を見開いた隣人がこっちを向いた。
「君、本当に伯爵家の人間かい?お二人の凄さを知らないとか、貴族の名を語る潜り?」
潜りって、酷い言われようだな。顔は地味だが気品があるだろ!だが知らないものは知らないんだ。
幼少期から屋敷内で全て事足りたから、外出も殆どしたことないし、根が引き籠もりだから親しい友人もおらず、お茶会は一度しか体験してないんだから世俗の事も知らない。
入学前の子どもってそういうもんじゃないの?僕って普通じゃないの?
「こう見えて箱入り息子…なのかな?」
箱入り息子というか、引き籠もりニートというか…今思うと外界から遮断された生活だったような気がしないでもない。
「僕が公爵家の方を語るのはよろしくないのだけど、あまりにも君が無知で可哀想だから教えてあげるよ」
何かイラっとする言い方だな。この話が終わったら二度と関わりたくない人物リストの2番目に名を刻んでやろう。1番目はもちろんキラキラしたさっきの公爵令息ね。
「で?」
イラつきながらも得意げな顔をしている隣人に話を促した。
「彼らは天才だよ。全てにおいてパーフェクトな人って存在するんだと、彼らと同学年より下の者は学園に入学る前から家庭教師から散々聞かされて比べられるんだよ。お二人は入学前から神童だったからね」
「ふ~ん。で?」
「で?って何だよ。まだわからないのかい?」
「まったくわからない」
「家柄、容姿、勉学、剣術、その他諸々、学園の教師を軽く超えてくる彼等だよ?」
「だから?」
「えっと…親しくなりたいとか思わないのかい?」
「あーそういうの、興味ないんだ。兄が公爵家で騎士をしてるから、僕は迷惑かけないように目立たず平均値を目指しているんだ。次男だし」
「そ、そっか…」
おいおい、哀れんだ目で見るんじゃない!
僕にとってはベストポジションなのだよ。
過度な期待はされないし、基本さえ出来ていれば何事も強要されない。何でも出来る優秀な兄が居るし。
特に僕の年頃までは、騒いだり問題行動起こさないだけでも誉められるんだからな。お前も同い年なら分かるだろ!
まぁ、僕は同年代より少しばかり記憶上での人生経験があるから要領よくやってるだけだが。
このまま行けば、平穏に一生を過ごせるはずはずなんだよ。
…結婚だけは努力次第だけど。
「でもさ、周囲から一目置かれる存在に絡まれた僕って、どうなの?殺される?」
「口止めされていたから大丈夫じゃない?ここにいる皆は僕を含め、正直君がお二人と関係があるとは思ってないよ。絶対勘違いされてただけだよ。だけど勘違いでもレシュノルティア様に抱きしめらるだなんて、羨ましい奴め!」
何が羨ましいだ!肘で小突くな!
そして関わりたくない人物リストに名を刻む為にも名を名乗れよ!と思っていたら、講堂のドアが開いた。
ちなみにキラキラした人たちと出会った場所は講堂前の控室だ。
やっと入学式が始まるのか…ひ弱な僕はもう既に帰りたいよ。
あの人、入学式後に迎えに来るとか言ってたけど、大丈夫だよね?
婚約者探しは明日からにして、終わったら光の速さで帰ろう。うん、そうしよう。
嵐が去った後、周囲に居た人たちに囲まれている。
「オブシディアン伯爵家のサラセニアだよ。宜しく」
僕が名乗ると、また周囲がざわめく。何なんだ一体。
「は、伯爵家だったんだね…君、先程の方とお知り合いではないの?」
皆訊きたかったであろう質問を、我慢しきれなくなった者がゴクリとつばを飲み込んで僕に問う。
「知り合い…ではないかなぁ?人違いされてるっぽかったけど」
僕がそう言うと、ギャラリーはヒソヒソと相談するように話し出す。
「だよね!そうだよね!レシュノルティア様はラフィオレピス様以外親しいご友人がいらっしゃらないはず!地味顔の君がまさか、ね」
周囲から、『なんだ、やっぱり勘違いじゃない?』という声がチラホラ上がり、皆それぞれの立ち位置に戻っていった。
いや、地味顔関係なくない?伯爵家だから公爵家と縁が全く無いわけでもないし、現に兄様は公爵家で騎士として働いているわけだし。
似非スマイルさんは何処の家の人か知らないけど、親しかったらどうだと言うんだ。
「あの二人、そんなに凄いの?」
何故か胸を撫で下ろしていた同じ入学生であろう隣人に声を掛けた。
すると驚愕した様に目を見開いた隣人がこっちを向いた。
「君、本当に伯爵家の人間かい?お二人の凄さを知らないとか、貴族の名を語る潜り?」
潜りって、酷い言われようだな。顔は地味だが気品があるだろ!だが知らないものは知らないんだ。
幼少期から屋敷内で全て事足りたから、外出も殆どしたことないし、根が引き籠もりだから親しい友人もおらず、お茶会は一度しか体験してないんだから世俗の事も知らない。
入学前の子どもってそういうもんじゃないの?僕って普通じゃないの?
「こう見えて箱入り息子…なのかな?」
箱入り息子というか、引き籠もりニートというか…今思うと外界から遮断された生活だったような気がしないでもない。
「僕が公爵家の方を語るのはよろしくないのだけど、あまりにも君が無知で可哀想だから教えてあげるよ」
何かイラっとする言い方だな。この話が終わったら二度と関わりたくない人物リストの2番目に名を刻んでやろう。1番目はもちろんキラキラしたさっきの公爵令息ね。
「で?」
イラつきながらも得意げな顔をしている隣人に話を促した。
「彼らは天才だよ。全てにおいてパーフェクトな人って存在するんだと、彼らと同学年より下の者は学園に入学る前から家庭教師から散々聞かされて比べられるんだよ。お二人は入学前から神童だったからね」
「ふ~ん。で?」
「で?って何だよ。まだわからないのかい?」
「まったくわからない」
「家柄、容姿、勉学、剣術、その他諸々、学園の教師を軽く超えてくる彼等だよ?」
「だから?」
「えっと…親しくなりたいとか思わないのかい?」
「あーそういうの、興味ないんだ。兄が公爵家で騎士をしてるから、僕は迷惑かけないように目立たず平均値を目指しているんだ。次男だし」
「そ、そっか…」
おいおい、哀れんだ目で見るんじゃない!
僕にとってはベストポジションなのだよ。
過度な期待はされないし、基本さえ出来ていれば何事も強要されない。何でも出来る優秀な兄が居るし。
特に僕の年頃までは、騒いだり問題行動起こさないだけでも誉められるんだからな。お前も同い年なら分かるだろ!
まぁ、僕は同年代より少しばかり記憶上での人生経験があるから要領よくやってるだけだが。
このまま行けば、平穏に一生を過ごせるはずはずなんだよ。
…結婚だけは努力次第だけど。
「でもさ、周囲から一目置かれる存在に絡まれた僕って、どうなの?殺される?」
「口止めされていたから大丈夫じゃない?ここにいる皆は僕を含め、正直君がお二人と関係があるとは思ってないよ。絶対勘違いされてただけだよ。だけど勘違いでもレシュノルティア様に抱きしめらるだなんて、羨ましい奴め!」
何が羨ましいだ!肘で小突くな!
そして関わりたくない人物リストに名を刻む為にも名を名乗れよ!と思っていたら、講堂のドアが開いた。
ちなみにキラキラした人たちと出会った場所は講堂前の控室だ。
やっと入学式が始まるのか…ひ弱な僕はもう既に帰りたいよ。
あの人、入学式後に迎えに来るとか言ってたけど、大丈夫だよね?
婚約者探しは明日からにして、終わったら光の速さで帰ろう。うん、そうしよう。
応援ありがとうございます!
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