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「迎えに行くと言っただろう!」
入学式が終わり、予告通り光の速さで帰りの馬車に足を掛けた所で声を掛けられた。
マジですか。
僕は声がした方に顔を向けずに聞こえないフリをして、無言で馬車に乗り込んだ。
すぐに扉を閉め、馭者に『早く出して!!』と小窓から小声で伝えると、馭者は目を泳がせ慌てだした。
どうした?と思ったら、思いっきり馬車の扉が開けられてしまった。
「聞こえなかったようだから、もう一度言う。迎えに行くと言っただろう?何故待っていない」
ひぃぃ…馬車の中に入ってこないでください!!怖い顔しないでください!
「ぼ、僕に言われたのではないと思ったのです」
あの場に居たのは僕だけじゃない。僕以外の誰かと間違って言ったんでしょ?
僕の名前はサラセニアだし、サラというご令嬢と名前を間違ったのかな?天才だとか言われてるみたいだけど、うっかりさんだね!
「サラセニア・オブシディアン、俺は君に用がある。ついてきてくれるかな?」
正式に名前を呼ばれてしまったではないか…人違いじゃないのかよ!サラセニアという名前、誰かと被ってない?オブシディアン家というなら、リンドウ兄様と勘違いされているのでは?
「あの、僕にはリンドウ・オブシディアンという兄がおりますが…」
「知っている」
「お間違い…」
「じゃないと、何度も言っているだろう?俺はサラに逢いに来たんだ。そろそろ俺もキレてしまいそうだよ」
にっこりと笑っているが、似非スマイルさんとは違った、明らかに怒りを含んだ笑顔だ。
どうしようか焦っていると、キラキラさんの手が近付く。
殴られる?!と思って、キュッと目を閉じたら、すごく、すごーーく、そっと頬に触れられた。
「怖がらせたいわけじゃないんだ。お願いだ、一緒に来て?」
少しずつ目を開けていくと、大型犬が怒られてシューンとしてる時のような顔をしたキラキラさんとバッチリ目が合った。そんな顔、反則じゃん。
「わ、分かりましたから、手を離してください」
「サラの頬はスベスベだね。俺の手が、離れたくないと叫んでいるよ」
「喋る手をお持ちとか、恐ろしいですね。離してください」
このままではずっと離してくれなさそうなので、厳しめに言う。すると残念そうな顔をしながらも手を離してくれた。
強い心を持て!強気でいかなければ、いけない気がする!
生粋のモブの魂が、全力で注意喚起してくるんだけどー!
キラキラさんが、僕から離れてサッと馬車から降りると、手を差し出した。
「サラ、手を」
「…いえ、僕は令嬢ではないので」
差し出された手を華麗にスルーし、馬車を降りた。
しかしスルー出来たと思ったキラキラさんの手は、降りた瞬間に僕の腰に回された。なんで!?
というか、身長差!何これ!止めてくれ!いくらモブの僕でも、惨めな気持ちになる!
腰を抱くな!令嬢みたいに扱ってくれるな!
はっ!まさか…
「僕に常識がないだけで、公爵家では貴族令息をこうやってエスコートするものなのですか?」
右斜め上を見上げて訊いてみると、サラにだけだよって額にチュッとキスされた。
おいおい、何してくれてんだ。
おそらく14歳男子が、デコチューするなよ。しかも男の僕に!
誰得だよ!これだから熟れた陽キャは嫌なんだ!
だけど僕はあ然とするしか出来なかった。そもそもモブの引きニートですよ?どう対処しろと?
前世でもしたことなければ、されたことなどあるわけないしな!
あ然としたままの僕は、引きずられるように出てきたはずの校舎に連れて行かれる。
馭者はオロオロしたままだし、助けてくれる気はないらしい。待機場所には人は疎らだけど、決定的な場面を目撃されてザワついてるから、そちらからの救援も望めない。
いや、まぁ僕的にはやましいことなどないし、デコチューくらい……やっぱ駄目だろ!伯爵家の子息として!
公爵家の令息に、伯爵家の令息が腰を抱かれながら白昼堂々デコチューされる!だなんて、どこの三流ゴシップ記事だよ!
はぁ…僕はこれから何処に連れて行かれて何されるの?ヤダもう本当に怖い。
入学式が終わり、予告通り光の速さで帰りの馬車に足を掛けた所で声を掛けられた。
マジですか。
僕は声がした方に顔を向けずに聞こえないフリをして、無言で馬車に乗り込んだ。
すぐに扉を閉め、馭者に『早く出して!!』と小窓から小声で伝えると、馭者は目を泳がせ慌てだした。
どうした?と思ったら、思いっきり馬車の扉が開けられてしまった。
「聞こえなかったようだから、もう一度言う。迎えに行くと言っただろう?何故待っていない」
ひぃぃ…馬車の中に入ってこないでください!!怖い顔しないでください!
「ぼ、僕に言われたのではないと思ったのです」
あの場に居たのは僕だけじゃない。僕以外の誰かと間違って言ったんでしょ?
僕の名前はサラセニアだし、サラというご令嬢と名前を間違ったのかな?天才だとか言われてるみたいだけど、うっかりさんだね!
「サラセニア・オブシディアン、俺は君に用がある。ついてきてくれるかな?」
正式に名前を呼ばれてしまったではないか…人違いじゃないのかよ!サラセニアという名前、誰かと被ってない?オブシディアン家というなら、リンドウ兄様と勘違いされているのでは?
「あの、僕にはリンドウ・オブシディアンという兄がおりますが…」
「知っている」
「お間違い…」
「じゃないと、何度も言っているだろう?俺はサラに逢いに来たんだ。そろそろ俺もキレてしまいそうだよ」
にっこりと笑っているが、似非スマイルさんとは違った、明らかに怒りを含んだ笑顔だ。
どうしようか焦っていると、キラキラさんの手が近付く。
殴られる?!と思って、キュッと目を閉じたら、すごく、すごーーく、そっと頬に触れられた。
「怖がらせたいわけじゃないんだ。お願いだ、一緒に来て?」
少しずつ目を開けていくと、大型犬が怒られてシューンとしてる時のような顔をしたキラキラさんとバッチリ目が合った。そんな顔、反則じゃん。
「わ、分かりましたから、手を離してください」
「サラの頬はスベスベだね。俺の手が、離れたくないと叫んでいるよ」
「喋る手をお持ちとか、恐ろしいですね。離してください」
このままではずっと離してくれなさそうなので、厳しめに言う。すると残念そうな顔をしながらも手を離してくれた。
強い心を持て!強気でいかなければ、いけない気がする!
生粋のモブの魂が、全力で注意喚起してくるんだけどー!
キラキラさんが、僕から離れてサッと馬車から降りると、手を差し出した。
「サラ、手を」
「…いえ、僕は令嬢ではないので」
差し出された手を華麗にスルーし、馬車を降りた。
しかしスルー出来たと思ったキラキラさんの手は、降りた瞬間に僕の腰に回された。なんで!?
というか、身長差!何これ!止めてくれ!いくらモブの僕でも、惨めな気持ちになる!
腰を抱くな!令嬢みたいに扱ってくれるな!
はっ!まさか…
「僕に常識がないだけで、公爵家では貴族令息をこうやってエスコートするものなのですか?」
右斜め上を見上げて訊いてみると、サラにだけだよって額にチュッとキスされた。
おいおい、何してくれてんだ。
おそらく14歳男子が、デコチューするなよ。しかも男の僕に!
誰得だよ!これだから熟れた陽キャは嫌なんだ!
だけど僕はあ然とするしか出来なかった。そもそもモブの引きニートですよ?どう対処しろと?
前世でもしたことなければ、されたことなどあるわけないしな!
あ然としたままの僕は、引きずられるように出てきたはずの校舎に連れて行かれる。
馭者はオロオロしたままだし、助けてくれる気はないらしい。待機場所には人は疎らだけど、決定的な場面を目撃されてザワついてるから、そちらからの救援も望めない。
いや、まぁ僕的にはやましいことなどないし、デコチューくらい……やっぱ駄目だろ!伯爵家の子息として!
公爵家の令息に、伯爵家の令息が腰を抱かれながら白昼堂々デコチューされる!だなんて、どこの三流ゴシップ記事だよ!
はぁ…僕はこれから何処に連れて行かれて何されるの?ヤダもう本当に怖い。
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