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第1話・推しとまさかの急接近です

好きバレと同時にフラれました

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 風丸によると、エバーシュタインさんの班はあまり探索が進んでいないそうです。先ほど風丸が言っていましたが、エバーシュタインさんはなるべく戦闘にお金をかけたくないようで回復薬を節約しています。

 しかし流石に人命も大切なので2つを両立するために、怪我したらすぐに本拠地に戻って、神官さんたちの魔法によってタダで回復してもらっているそうです。『命を大事に』の方針はいいのですが、あまり頻繁に帰還すれば確かに探索が進みません。

 またゲームでは戦闘中、導き手はモンスターに攻撃されない代わりに、とっつかまってエッチなことをされます。

 具体的に言えば服を脱がされて、乳首責めやクリ責めなど、騎士の前でされちゃいます。流石に女性向け作品なのでモンスターに挿入される前に、騎士が必ず助けに入ります。しかし挿入寸前まではヒロインが騎士に助けを求めない限り、彼らは戦闘を優先します。

 ゲームではもちろんエッチなシーンを見たくてやっているので、あえて騎士に助けを求めません。またエロイベントを起こすには、わざとヒロインの淫らな姿を見せて、騎士の性欲を煽る必要があります。

 というわけで、エバーシュタインさんも騎士たちの性欲を煽るために、あえてモンスターにとっつかまりエッチな姿を見せつけているようです。プレイヤーとしてヒロインにやらせるならともかく、自分がモンスターに服を破かれ襲われるのは、結構なトラウマじゃないですかね?

 自分だったら絶対に嫌なことを騎士とのイチャイチャを目当てにやってのける彼女は、ある意味すごい人だと思いましたが

「す、すみません。私たちの世界の者が、ご迷惑をおかけしてすみません」

 普通にセクハラだなと、エバーシュタインさんの代わりに謝罪すると

「その様子を見ると、アンタは比較的マトモみたいだな。どうもセーラーちゃんも似たようなことをやっているみたいだから、そっちの世界の女は、みんな色狂いなのかと思ったよ」

 この辛辣な物言いからして、やっぱり不快な想いをしているらしい風丸に

「うわぁぁ、すみません! 実は私も彼女たちと似たり寄ったりの変態です! でも律子さんはちゃんとした人なので! 律子さんだけは信じてください!」

 律子さんだけは除外しつつ、自分もR18脳であることを表明すると、風丸は困惑した様子で

「なんでわざわざ自分から暴露するんだよ。言わなきゃ分かんねーのに」
「だって私も決してマトモとは言えない人間なので。マトモなふりをして風丸を騙したくなかったんです……」

 ここに居る風丸にはしませんが、ゲームの時はそりゃもう性的な目で見ていました。自分の変態性を知られて風丸に嫌われるのは辛いですが、彼を騙すよりは「に、逃げろ! 俺が正気を失う前に! 早く!」と警戒を促したい気持ちでいっぱいでした。

 しかし私の思考は、風丸には不可解だったようで

「なんで俺を騙しちゃダメなの?」

 首を傾げながら、猫のようにスッと私に近づくと

「もしかして俺が好き?」
「ふぇぇっ!?」
「図星か。分かりやすいね、アンタ」

 風丸はつまらなそうに呟くと、私からパッと離れて

「でも残念ながらアンタは俺のマスターじゃないから、媚びる理由も無いや。ゴメンね」

 身の程知らずな恋情を嘲笑うような、ちょっと意地悪な笑顔に

「あ~、大丈夫です~。その笑顔だけでご褒美なので~」

 どうせバレているんだしいいやと遠慮なくハートを飛ばす私を、風丸はサラッと流して

「話は変わるけど、アンタはどうしてこんなところに1人で来たんだい? ダンジョンの外にはモンスターは居ないと言っても、こっちにだって獣や犯罪者は居るんだぜ」

 しかし頭の天辺からつま先まで私の姿を観察すると

「……まー、アンタほど素朴だと男には襲われないかもだけど。街の外には熊や狼も出るし、1人で森に入るのはやめときなよ」

 全く興味が無い女に忠告してくれるなんて風丸は優しいです。ただ風丸の助言には従いたいのですが、私も無目的で森に入っているわけじゃないので

「アンタが畑や牧場をやってんのは知っていたけど、そんなことまでやっていたのか」

 ユニちゃんに会いに来ていると話すと、風丸は意外そうな顔をしました。でも私のほうも

「えっ? 私が何をしているかご存知だったんですか?」
「だって忍だもん。だいたいのことは知っているぜ。流石に休日の過ごし方までは知らなかったけどな」

 余談ですが、「だって忍びだもん」と言った時の、ちょっと得意げな顏が可愛かったです。見た目だけじゃなくて声も性格も仕草もツボすぎて、ときめきが止まりません。

 よりメロメロになる私をよそに、風丸は話を続けて

「それより休日まで馬術大会のためにユニコーンに餌付けしているんだとしたら、アンタのほうが年中無休じゃないの?」
「辛くなるほど働きませんから大丈夫ですよ。それにユニちゃんと戯れるのは癒しですから」

 ニコニコと返す私に、風丸は呆れ顔で

「なんか本当にアンタだけ導き手の中でも、だいぶ異質だよな」
「私だけ剣と魔法のRPGじゃなくて、ほのぼのスローライフしている自覚はあります」

 風丸と話せるのが嬉しくてえへへと笑いながら返すと、彼のほうは渋い顔で

「アンタはほのぼののつもりでも、実際は今みたいに獣に襲われることもあるんだから、無駄に命を散らさないように気を付けろよ」
「はい。安全に来られる方法を考えてみます。心配してくれて、ありがとうございました」

 薬草採集する風丸と別れて、私はユニちゃんに会いに行きました。
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