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第6話・お題部屋でまさかのBLモードです

フカフカ、モチモチ、アッタカイ(視点混合)

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「つーか、アンタだって、ここ切なくねーの? 触って欲しいとか思わない?」

 ズボンの上からソフトタッチで股間を撫でられた私は

「ひゃっ、な、撫でないでください」
「アンタ、ここも自分で触ったことが無いの? 胸より、ずっと気持ちいいよ? 病みつきになるよ……?」

 甘い声で誘惑しながら、絶妙な力加減で入り口をくすぐってくる風丸に、私は足をもぞもぞさせながら

「んっ、んっ。ゆ、誘惑しないで。そこは本当にダメなんです。やだぁ……」
「……ここまで来てマジで生殺しなのか」

 風丸はガクッと項垂れると、そのまま私の胸にぽふっと顔を埋めて

「マスターちゃん、マジで性質たちが悪い」
「す、すみません。でも胸を触られるだけならともかく、風丸と最後までするのは……」

 本当は私も、風丸に最後までされてしまいたいです。でも風丸が私との触れ合いを心地よく感じるのは、多分あの能力のせいです。相手の正常な判断力を奪って体を繋げるなんて、絶対に許されません。

 まだ私のところに来たばかりの頃に

『本当は色事が好きじゃない』
『人に触れられるのは嫌い』

 と言っていたのが、きっと風丸の本心だから。風丸の意思を捻じ曲げて「触れられて嬉しい」なんて喜んじゃダメです。

 しかし言い淀む私に風丸は

「俺はもう丸ごと食っちまいたいよ」

 ハッキリ求められると、不覚にも心が揺らぎます。そのまま押されたら危ないところでしたが

「……でもこれは俺の自然な感情じゃないらしいしな」

 風丸は自分でブレーキをかけると、やや恨めしそうに私を見て

「本当に厄介な能力をもらってくれたよ、マスターちゃん」
「す、すみません。幸せにするどころか悶々もんもんとさせてしまって」

 いろいろと申し訳なくて、しゅんと謝罪する私に

「本当にな。欲求不満なんてはじめてだよ」

 風丸は疲れたように言いましたが、ふと雰囲気を和らげて

「まぁ、でもアンタのおかげで、まぁまぁ幸せだよ。胸を触るだけでも気持ちいいしね」

 風丸は機嫌よさそうに私の胸に顔を埋めました。もう性的な意図は無いようで、ただ甘えるような仕草に

「風丸これ好きですね」

 羞恥心がバグったのか、今はただ愛しさに和みながら言うと

「だってマスターちゃんの胸、大きくて気持ちいいんだもん」

 風丸はゲームでも聞いたことが無いような甘えた声で言いました。私の母性に100万のダメージです。ギュッと抱きしめたい気持ちを抑えて、ただよしよしと頭を撫でていると、風丸は心地よさそうに脱力して

「……下は諦めるから今日はこのまま、ここで寝ていい?」

 本当は断るべきだったのかもしれませんが、風丸を甘やかしたい気持ちが勝って

「はい。ゆっくり休んでください」

 私の胸に甘える風丸の頭を優しく撫でながら、その日はそのまま一緒に眠りました。


【風丸視点】


 夜。お題部屋でのことが響いて、なかなか眠れなかった俺はマスターちゃんのところへ夜這いに行った。本当はそのままやっちまいたかったけど、俺のこの謎の情動はマスターちゃんのトリップ特典とやらのせいらしい。

 正直ここまで来たら、どんな理由だろうが、マスターちゃんが欲しくて堪らないのは事実なんだから、その欲求を解消したかった。でもマスターちゃんはキスとか性交とか、大事に考えているらしい。ちゃんと心の伴った触れ合いじゃないと傷つくようだ。それを考えると、マスターちゃんが死ぬほど欲しくても、なぜか無理強いはできなかった。

 その代わり昨日はマスターちゃんの胸を枕にして、そのまま一緒に寝た。

 翌朝。職業柄眠りの浅い俺は、マスターちゃんより早く目覚めた。でも寝起きでぼんやりした頭は、昨日のやり取りをすっかり忘れていた。そのせいでマスターちゃんと同じベッドで、くっついて眠っていた自分に気付き、人と一緒に寝るなんてマジかと驚いた。

 俺は人前で無防備になるのが嫌いだ。自分がさんざん人の寝首を掻いて来たから。人の隙を突いて来た人間ほど、自分が隙を見せることを恐れる。

 だから人と寝るなんて言語道断。必要があって一緒に寝ても、それはフリで本当は起きていた。寝ようとしたって眠れなかった。

 それなのに今はガチでマスターちゃんと寝ていた。いつもの悪夢にうなされることも無く。何、気持ち良く寝てんだと自分にツッコむ。流石に気を抜き過ぎだ。さっさと離れろと思うのに……ダメだ。全然離れらんねぇ。

 はだけたままのマスターちゃんの胸に再び頬を寄せる。肌が吸い付くみたいに、気持ち良くて離れられなくなる。マスターちゃんの体は布越しだとフカフカで、じかに触れると水気を含んだようにモチモチしている。どっちの感触も気持ち良すぎてヤバい。人間じゃなきゃ絶対に持って帰っている。

 ちょっとだけ身を起こして、マスターちゃんの寝顔を見る。俺が乗っかっているせいか少し寝苦しそうだ。表情のせいもあるが、相変わらず美人とは言えない顔立ちなのに、不思議とずっと見ていたくなる。

 プニプニのほっぺたをつつきながら、自分の謎の情動について考えていたが、気付けば自然と微笑んで

「……可愛い」

 その呟きにギョッとして、ベッドからバッと飛び退すさる。なんだ、可愛いって。いや、可愛いのは可愛いけど。犬とか猫とかに言うアレじゃなくてなんか……言語化しようとすると、妙に顔が熱くて、胸がこそばゆくて、心臓がうるさくなる。

 戦ったわけでもねーのに、なんだこれ。ドキドキして気持ちいい気もするけど、なんか変に恥ずかしい。これもマスターちゃんの能力のせいなのか?

 ここまで情緒を狂わされたら、普通は本能的に排除したくなる。それなのにマスターちゃんを見ると、心がふにゃっとなって、どうがんばっても殺意が湧かない。

 取りあえず離れることにすると、マスターちゃんに毛布を掛け直してから自分の部屋に戻った。
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