【騎士王と主の伝説】18禁乙女ゲーの世界に来たからには全力で推しを幸せにします【風丸編】

知見夜空

文字の大きさ
46 / 68
第8話・波乱

私が誰かに愛されるより(視点混合)

【風丸視点】

 マスターちゃんの前で見っともなく感情をぶちまけてから、自室には戻らず野宿するようになった。マスターちゃんの顔を見たら、また言ってもどうにもならないことを、思わず吐き出してしまいそうだったから。

 前にマスターちゃんを狼から助けた森で、大木に背を預けるようにして目を閉じていた。しかし質量を持った何かが、ふと眼前に降り立つ気配に目を開ける。

 そこには暗闇を跳ね返すように、神聖な光を放つユニコーンが居た。マスターちゃんからこの森にはユニコーンが居ると聞いていたが、実際に見るのははじめてだ。

 敵意は感じないが、なんのつもりで現れたのか。向こうの出方を待っていると

『君が由羽のつがいだね』

 頭の中に直接語りかけるような不思議な響き。白い馬は続けて

『由羽が君を想って泣いている。彼女を悲しませないで』

 マスターちゃんが泣いていると聞いて胸が痛む。でも俺だって好きで悲しませているわけじゃない。何も知らない人外に、意見されたのが不愉快で

「馬のくせに人間の問題に口を出すなよ」

 つっけんどんに返すと、馬はどうやら気分を害して

『君がこのまま由羽をないがしろにするなら、彼女は僕がもらうよ』
「馬がどうやって人間の女を口説くつもりだよ……って」

 俺の目の前でユニコーンは人間の男に姿を変えた。馬だった時の神聖な雰囲気をそのままに、見惚れるような背の高い美男になった。

『もともと精霊にとって形なんてあってないようなものだから、その気になれば簡単に人の姿を取れる。人間と同じ機能があるから、君の代わりに由羽を抱くことだってできるよ』

 挑発めいた馬の言葉に、ぶわっと殺意が湧き上がる。俺の殺気を受けた馬野郎は、こちらを冷たく見返して

『怒りに任せて僕を殺すつもりなら、いよいよ君には由羽と居る資格が無い』
「由羽、由羽って気安く呼んでんじゃねーよ! アイツは俺の……!」

 激情のままに言い返そうとしたが、アイツは俺のなんなんだ? 自分自身が答えを出せず、何も言えなくなる。

 沈黙する俺の代わりに、馬野郎が口を開いて

『君の事情は知らないけど、明日も由羽が悲しんでいたら僕はこの姿で慰める。じゃあね、君は勝手に独りで居て』

 もとの馬の姿に戻ると、幻のようにかき消えた。

 マスターちゃんを取られるなんて絶対に嫌だ。あんな馬殺しちまおうか。そう思う一方で、どうせ俺はマスターちゃんと一緒になれない。後たった1週間あまり独占して、どうなるという諦念ていねんが湧く。

 どうせマスターちゃんは元の世界に帰り、いつか他の男のものになる。それを俺は止められないし、止めるべきじゃない。

 ……じゃあ、それが明日だって同じだ。あの馬がマスターちゃんにちょっかいを出そうが、俺に止める権利は無い。


【由羽視点】


 今日は牧場の老夫婦のお手伝いをしてから、畑の世話をはじめました。食べ頃になった野菜を収穫したり、水をあげたりしていると

『由羽』

 ユニちゃんの声に、私は笑顔で振り返って

「あっ、ユニちゃ……じゃない!? だ、誰ですか、あなたは!?」

 そこに立っていたのは若い男性でした。容姿が整いすぎているのもありますが、なんだか神々しい雰囲気で、人の形をしているのに、明らかに人ではない感じです。

 髪も肌も服も全身が真っ白ですし、真昼に幽霊ですか!? と恐怖する私に

『声で分からない? ユニだよ』
「えっ、ユニちゃんなんですか? わー、すごい。この世界のユニコーンは、人の姿にもなれるんですね」

 一気に警戒を解いて自分から歩み寄ると

「でも、これまでずっと馬の姿だったのに、どうして人間に?」
『この姿のほうが由羽を慰められると思って』

 ユニちゃんは思わせぶりに微笑んで、私に近づいて来ました。いつもと違う妖しい雰囲気に、私は少し戸惑いながら

「慰めてくださるなら、お馬さんの姿のほうがいいです」
『この姿の僕は嫌?』
「嫌と言うと語弊ごへいがあるんですが……人間はどうしても異性には身構えてしまうんです。だから普通にお話しするなら、いつものユニちゃんのほうが私は気楽で癒されます」
『それって要するに、異性として見ないで済むからでしょう』

 ユニちゃんは冷たい手で私の手を取ると

『僕は君に異性として見られたい』
「えっと……どうしてですか?」
『君が辛い恋をしているから。君の彼は、どうやら君に報いる気が無いようだから、それなら僕が由羽を幸せにしたい』
「心配してくれて、ありがとうございます」

 ユニちゃんの奇行の理由が分かって、私はホッとしました。ただユニちゃんの厚意をありがたくは思っても

「でも、この前も言いましたが、私が悲しいのは自分が報われないからじゃなくて、風丸が心配だからなんです」

 私はユニちゃんの手をそっと外すと

「私は自分が誰かに愛されて幸せになるより、風丸に幸せになって欲しいんです。私が居なくなった後、救いも光も無い場所に戻らないで済むように」

 何もしてあげられない悲しみで、声は硬く強張っていました。私は口にしてから、これじゃまたユニちゃんを心配させてしまうと

「……どうにもならないことを言って、すみません。せっかく考えてくれたのに、喜べなくてゴメンね……」

 いつの間にか馬に戻っていたユニちゃんの頭に、額をくっつけるようにして謝りました。
感想 10

あなたにおすすめの小説

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

冷徹義兄の密やかな熱愛

橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。 普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。 ※王道ヒーローではありません

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」

透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。 そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。 最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。 仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕! ---

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。