十八夜

一・火渡り 『十八夜』仏と人と祈りの世界・聖火の祈願祭。偶然ポスターを見て、さゆみは法泉寺というお寺へ行く。そこで年配の巫女に「おまえは百年にいちど選ばれし幸運な娘じゃ」と言われる。

二・母親代わり さゆみは母と弟の祐史の三人暮し。喘息の祐史が心配でたまらない。その日定時に帰宅した母と三人で久しぶりの団欒。ポン酢がないことに気付き祐史と駅前へ買い物に出かける。それなのに交差点を渡ろうとした瞬間、トラックが急ブレーキを踏み祐史の体が跳ね上がる。

三・加害者 その人がさゆみの家にやってきたのは祐史が事故に遭った日の深夜だった。北城さんは玄関タイルにひたいを押しつけた。けれど母は決して許さなかった。さゆみの脳裏には、まだはっきりと事故の有様が焼きついていた。

四・願いごと 数ヵ月が過ぎた頃、以前会った巫女がさゆみの家に来ていた。祖父母の墓が法泉寺にあるという。さゆみが「願いは本当に叶うのですか?」と訊くと「叶う」とはっきりと答える。十八夜のお祭りは八月の十八日にあるという。

五・納骨 さゆみは母と法泉寺へ納骨に向かった。骨壷のなかにいる父と祐史。突然草むらから北城さんが出て来る。手に野花を握りしめている。

六・野の花 あれから急に来なくなった北城さんがまた家に来て母と親しそうに話をしている。どうして母と? あれほど憎んでいたはずなのに。さゆみの心に母への疑念が生まれる。

七・赤ちゃん 北城さん夫婦が生まれたばかりの赤ちゃんを連れて祐史のお参りに来る。事故後こなくなったのは奥さんがお産をしたからだという。

八・祐史 命日にだけお参りに来ていた北城さんたちが、頻繁に来るようになる。けれどさゆみの憎しみはますます増大する。

九・誕生日 北城さん家族が手料理で、さゆみの誕生日をお祝いしてくれる。それなのにさゆみはひどい仕打ちをして赤ちゃんを傷つけてしまう。赤ちゃんの様子がどこかおかしい。目が見えない?

十・お地蔵様 母に誘われ早朝ジョギングに出る。
事故現場で北城さんが道路をタオルで何度も何度も拭いている。母は事故後、雨の日も風の日も毎朝道路を拭いている北城さんの姿を見て許す気持ちになったのだという。

十一・十八夜 「弟の祐史を生き返らせてほしい…」
火渡りの願いは決めていたはずだった。それなのにさゆみの心は揺れ動き始める。
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