終末団地の真夜中庭ごはん
①登場人物の紹介
勇太は、半分水没した海沿いの街で、蓮見台団地の食料、水、見張り、修理順を帳面に記録して暮らしている元市職員。黒いスーツを作業着代わりに着続け、七年前の避難誘導で妹を見つけられなかった痛みを抱えている。莉乃は、壊れた文具や看板から暮らしの道具を作る少女。曲がる金属板に目盛りを刻んだ「自由定規」で、畑の幅も、壊れた配管も、人の心の余白も測ろうとする。茉優、絢輝、昌生、真宝、ムネノリ、耀瑠たちも、屋上菜園と雨水槽を守りながら、笑いと工夫で毎日をつないでいる。
②あらすじ
七年前の豪雨で街が水に沈み、蓮見台団地の住民たちは屋上菜園、雨水浄化槽、手作りの修理道具で暮らしていた。ある秋の朝、沈んだ湾岸倉庫の方角から、自律水上備蓄船リヴァイアサンが流れ着く。船内には、冬を越すための薬、浄水膜、種、発電部品が残っているかもしれない。だが、北側の高架道路で暮らす北環商会も、その船を求めていた。
勇太は物資を守ろうと焦るが、莉乃は「まず一緒にごはんを食べよう」と止める。食べ物を独り占めしないこと。怖いときは手を伸ばすこと。帰る場所を決めてから遠くへ行くこと。二人が交わした約束は、団地、商会、通信塔で暮らす人々を少しずつ結び直していく。終末後の街で、奪い合うのではなく、鍋を大きくして朝を迎える物語。
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