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234.あの時の兄さん(レオナルド視点)

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「レオナルド!」

 スノーラやレン達と話しをしていると、向こうから父さんとセバスがこっちに走って来た。良かった、父さん達も無事だったみたいで。

「レオナルド、大丈夫だったか? 怪我は?」

「俺は大丈夫、怪我もしてない」

「そうか、なら良かった。あの攻撃でどうなったかと心配していたんだ。それにしても良く魔法陣を発動させたな。良くやったぞ!」

「…ああ」

「あの攻撃の後の発動だっただろう、良く発動出来たな。お前達の所もあの攻撃にあっていたはずだが、それともお前達の所は大丈夫だったのか。それとエイデンはどうした。まだ何かやっているのか?」

「………」

 俺が黙ると、父さんの顔色が変わった。それからスノーラに回復してもらっているレンが、俺に再びお兄ちゃんはと聞いてきて。

「大丈夫。向こうでまだやる事があって残ったんだ。ただ1人で残してきてないから安心しろ、今兄さんの側には母さんがいるから。レン、お前まず自分の体を治さないとな」

 そう言うとレンは何とも言えない表情をしたけど、取り敢えずは静かになって、そのままヒールを受けた。それを確認して、エン達がディアブナスを見張ってくれている最中に、俺とケビンであの時の事を簡単に説明する。エイデン兄さんの事を。

 屋敷の方から土煙が上がって、大変な事になっているだろう事は分かってた。でも魔法陣を描くのをやめる事はできない。早く描き終えて魔法陣を発動させて、屋敷に戻らないと。そう思いながら描いていたせいか、危うく魔法陣を書き間違えそうになって、兄さんに注意された。

「焦るのは分かるよ。本当は僕だって早く向こうに駆けつけたいんだから、心配でしょうがない。でも…、これを終わらせる事が、僕達の今の仕事だ。大丈夫、レン達も父さん達もきっと大丈夫。なるべく早く終わらせて戻ろう!」

「…ああ!」

 その時の兄さんの姿に、俺は気を引き締め直しまた作業に戻った。
 そして最初から最後まで邪魔も入る事なく、しっかりと魔法陣を描く事ができ、さぁ、これから魔力を流そう! そう俺達が動き出そうとしたところで、あの突然の攻撃だった。

 それまで本当に少しの邪魔も入らず、ここまで順調で良いのかと思うほど順調だったのに、何であと少し、この攻撃を待ってくれなかったのか。
 上から何かの力に押しつぶされ、ほとんど体を動かす事が出来ず、まだそれが俺だけだったら良かったんだけどな。

 何とか周りを見渡してみれば、全員が倒れていて。少し上を見れば、壁の所にい騎士達も変な格好で壁にもたれかかっていた。
 ここだけじゃない? じゃあ魔法陣を描いたせいで、攻撃されたんじゃないのか? もしこの攻撃が街全体だったら…。

 何とか立ち上がって、せめてあの中心の鉱石にだけでも魔力を流せば、この魔法陣を発動できないか? 俺は全身に力を入れ立ちあがろうとする。だが、上から押される力は相当なもので、少し体をズラしたり持ち上げる事はできたけど、それ以上何も出来ず、起き上がる事なんてできるわけもなかった。

 その時だった。兄さんが何かブツブツと独り言を始め、そして手を動かしたと思ったら、いきなり自分の足を刺したんだ。それだけ動けた事にも驚いたし、さらに自分の足を刺すなんて、何でそんな事!

 兄さんに呼びかけても、兄さんはただ真っ直ぐに前を見ていて、そしてその刺した足を引きずりながら立ち上がったんだ。そうか、この今までに見た事がない攻撃から抜け出すために、ワザと足を刺して意識をしっかりさせたのか。ただ、それだけで立てるものなのか? どうして立てたんだ? 兄さんが立てたんだ俺だって。

 と、考えている時。兄さんがこっちを振り向いて。

「レオナルド、後のこと任せるね」

 そう言ってきた。

「兄さん…、何を?」

 兄さんが動き出した。そして鉱石の前まで行くと、しっかりと鉱石に触れ、自分の魔力を流し出したんだ。俺と同じ事を考えていたらしい。なら早く兄さんの手伝いをしないと、さっき俺は、何とか鉱石まで辿り着いて、魔力を流せばって思ってたけど。よくよく考えれば、1人でなんて絶対に無理だ。

 でも、そう思っていても、どうしても立ち上がる事ができないでいるうちに、兄さんの体がガクンとそのまま倒れそうになり。すぐに態勢を戻したけど。

 目の前に兄さんが倒れているのに、俺はそこまでも行く事ができないのか? 力では兄さんよりも強い俺が動く事ができなくて、兄さんが動けたのに? 頼む、動いてくれ、このままじゃ兄さんが!! もうかなり魔力を流しているはずだ。これ以上魔力を流したら兄さんは。

「兄さん! エイデン兄さん、ダメだ!!」

「エイデン様!! いけません、それ以上魔力を使ったら!!」

 ケビン達も気づいていて、何とか兄さんを止めようと声をかけているけど、やっぱり俺みたいに動く事はできないみたいで。俺も腕でも足でも刺して気合を入れれば。俺は腰のナイフに手を伸ばそうとする。だけどケビンに止められた。

「ダメです! もし動けるようになれば、あなたの剣が必要になります!」

 その言葉に俺の手が止まる。でも、そうしたら兄さんの魔法だってと思いながら、兄さんを見ると。

 俺の方を向いた時の兄さんの顔を、俺はこれから絶対に忘れないと思う。いや、うん、忘れないと言うか、あまりにもいつも通りで。ただただいつも通りに笑い、そして…。
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