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235.あの時の兄さん2(レオナルド視点)

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「兄さん!!」

 今までで1番鉱石が光を放ち、そして魔法陣が光を放ち始めた。本当に? 本当に兄さんが1人で? 今ここに居る人数で最低限の魔力だと、兄さんは言っていた。本当はもっと人数がいるけれど、でも最低人数が集まって良かったと。

 ここへ来る前にスノーラに聞いてきたんだ。魔法陣に魔力を流すのに、人数が居ればいるほど良いって。昔、この魔法陣を使った時は、順番にどんどん魔力を流していったらしい。途切れる事なく。だから今の人数は最低限なんだ。

 でもそれなのに、魔法陣は発動した。そして魔法陣の模様が光、そしてその光が少し浮かび上がったように見えた瞬間、それが一気に上空に上がり、結界と同じくらいまで上がると、さらに強く光った。

 思わずそれに見入っていると、ドサッと言う音が聞こえて、急いでそっちを見れば、光っている鉱石の隣に倒れている兄さんの姿が。

「兄さん! エイデン兄さん!!」

 呼んでも返事もなければ、ピクリとも動かない兄さん。俺の所からだと呼吸していないように見えて…。

「兄さん! 兄さん!!」

 と、急に今まで俺を押さえていたあの変な力が弱まり、それは俺だけじゃなくてケビン達もそうだったみたいだ。みんなが起きあがろうとしていて、俺も急いで軽くなった体を起き上がらせようとしたんだけど。

 何故か途中までは起き上がる事ができたんだけど、それ以上動く事ができない。早く兄さんの所に行って、今の兄さんの状況を確かめないと行けないのに。

「魔法陣は発動しましたが、もしかしたら完全には、発動していないのかもしれない」

「ああ、ディアブナスを押さえられてはいるんだろう。だがやはり。エイデン様だけの魔力では。ここまで発動できた事自体奇跡だが」

 それはそうだ。何人も、いやスノーラの言う通りだと、ずっと魔法陣には魔力を流しておかないといけないんだ。それを兄さんの魔力だけで発動させようなんて。ここまで兄さんがやってくれたんだ、何としても起き上がらないと。

「兄さん、後は俺が…!」

 ぐっ、ぐぐぐぐっ! さらに力を入れ、無理やり立とうとする。それを見てケビン達が無理をするなって言ってきたけど。兄さんは全てをかけて魔法陣を発動させたんだ。俺だって兄さんと同じ、レン達を守るためにここへ来たのに、俺はまだ何もしていない。ただ魔法陣を描いただけだ、しかも細かい事が苦手で、難しい所は全部兄さんが引き受けてくれて。

 それに兄さんは俺に言ったんだ。『後は任せる』って。だから俺は動かなくちゃいけない。無理をしてでも動いて、そしてレン達を、大切な弟達を守りに行かないと。俺はさらに力を入れる。

「ぐ、ぐあぁぁぁっ!!」

 気合を入れ直し、さらに力を込めて立ち上がる。

「くっ、はぁはぁ」

 そして俺は何とか立ち上がる事ができた。そんな俺の様子を見ていたケビン達、すぐにケビン達もまた動き出して。

「私が動けないで、何が使用人か」

「全くです。私が遅れをとるなど」

 そう言うと、ケビンとスレイブさんも、グググググッと体を持ち上げ、ゆっくりと立ち上がった。
 その後、まだ思うように動かない体を何とか動かして、少しすればさらに体は軽くなり、取り敢えず歩けるようなって、すぐに兄さんの元へ行った。

「兄さん、兄さん!」

「レオナルド様、あまり動かしてはいけません」

 兄さんは息はしているものの、その呼吸はあさく、すぐにでも止まるんじゃないかって程で。どうすれば良い、このままじゃ兄さんが。俺とケビンが兄さんを見ている間に、他のメンバーを起こしに行ったスレイブさん。全員が起き上がる事ができると、すぐに俺達の所へ来た。

「上級ポーションでも難しそうですね。回復魔法も今のエイデンを回復できるほどの、回復魔法を使える者は今ここには…」

 どうする、どうすれば。兄さんを何とかしないといけないし、でも屋敷の方へも急いで行かないと。

「レオナルド様、ここは私に…」

 と、ケビンが何か言いかけた時だった。

「エイデン!! レオナルド!!」

 それは母さんの声だった。そしてその母さんの声が聞こえた方を見れば、木を飛び飛び、どんどんこちらへ近づいて来る人影が。そしてすぐにその影が母さん達と確認できると、少し体から力が抜けた。

 母さん達は最後の木から飛び降りると、凄い勢いで俺達の所まで走ってきて、俺達の所に着くと同時に、兄さんの事を抱き上げた。

「エイデン、何があったの!」

 ケビンが素早く、簡潔に母さんに何があったかを話す。母さんはと言うと、やっぱり体を押される、動けなくなっていたけれど、何とかそれでも無理やり立ち上がって、何とか途中まで移動して来たって。うん、魔法陣が発動して体は軽くなる前に。それでさっき体が軽くなって、更にスピードを上げてここまで飛んできてくれたんだ。ダイルさんから魔法陣の事は聞いたって。

 話しを聞いた母さんは兄さんを見つめて、一瞬苦しそうな、寂しそうな顔をした後、すぐにしっかりとした姿に戻り。兄さんをさらに抱きしめてると、母さんと兄さんの体がほのかに光り始めた。

「あなた達、レオナルドとケビンとスレイブは屋敷の方へ。残りはここで魔法陣に魔力を流しなさい。エイデンには私の魔力を流しておくはわ。魔法陣が不完全でも発動した今、奴を止めるチャンスよ! 今すぐ屋敷へ」

「分かったよ母さん!」

 すぐにもう1度、体が動くかを確認して、この時にはもう、軽くジャンプをできるほどのにまで体は回復していた。そして屋敷へ向かおうとした時。

「レオナルド、覚悟をしておいて。もしかしたらスノーラが回復できるかもしれないけけれど、向こうがどうなっているか分からないから」

 そう母さんが静かに言った。俺は黙って頷くと屋敷へ向かい。そしてレンがやられる前に何とか着くことができたんだ。本当にギリギリだった、これでレンがやられていたら、兄さんの努力が…。

 俺の話しを聞いて、父さんの顔つきが変わった。俺はレンの方を見る。小さな声で話したから、兄さんの今の状況はレンは聞こえなかったはずだ。それで良い、今は…。

「そうか、あやつはそれほどにまで頑張ったか。では我らもやらなければな」

 みんながしっかりとした顔つきでディアブナスを見る。兄さん、絶対にレンは守るよ、そしてディアブナスを絶対に止めてみせる。
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