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258.レンの規格外ヒールの作用?(エン視点)

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『くっ! おい、大丈夫か?』

「っああ、俺は大丈夫だ。スタット、お前達はどうだ?」

「俺は大丈夫だが、ちょっと待ってくれ。確認してくる」

 そう言うと、ストックというハイエルフが少しふらつきながら、周りを確認しに行く。我も他の者達を確認しようと立ち上がり、少々足を引きずりながら、ローレンス達が居た方へ進み始めた。

 その途中で壁の裏から出てくる者が。レオナルドだった。ふむ、見た限りは大きな怪我はしていないようだな。ギリギリで張った結界が役にたったか。ならばローレンス達も無事の可能性がある。

「お前は何処も怪我をしていないように見えるがどうだ?」

「俺は大丈夫、父さん達を見てくるよ。…それ大丈夫なのか?」

 レオナルドが俺の肩を指差してきた。今我の左肩はコレイションの中に入ったディアブナスの攻撃によって、大きな穴が開いていた。別にこれくらい、我としては少し経てば自然の治るくらいの怪我なのだが。まぁ、人間が見ればかなりの怪我に見えるのだろう。

『大丈夫だ。そのうちふさがる。ローレンスの方はお前に任せるぞ。ダメそうなら我を呼べ。少しならば回復させられる』

「分かった!」

 そう言ってすぐに、ローレンス達が飛ばされたと思われる方へ走っていくレオナルド。我は再び足を引きずりながら元居た場所へ戻り、そこにどかっと座った。本当はすぐにディアブナスを追いたかったが、さすがに今の我では。

 あそこには息子がいるというのに。ただ、気配の感じから、しっかりとは分からないが、息子とルリ達は魔法陣の中心から離れたように感じる。おそらくスノーラがそうしろと言ったのだろう。アーティストも共にいるようだ。

『!!』

「中心に奴が着いたな」

 我の隣に、ふらふらと歩いてきたユイゴが座る。そして服の中から小瓶を出し我に渡してきた。ユイゴも今の状態では向こうへ行けないだろう。力ある者達がこれとは。ディアブナスを止めないといけないと言うのに。

『これは?』

「時間がかかってしまうが、これを飲めば傷の回復が少しだけだが早くなる。少しでも早く向こうへ行かなければ」

 そう、今魔法陣の中心、スノーラ達が魔力を流している場所へ、ディアブナスが着いた気配が。我はユイゴにもらったが薬を一気に飲み干すと目を瞑る。本当ならば、ここに止めておきたかったが。すまない…。

 先程までどうにか我等は、コレイションの中へ入ろうとしていたディアブナスを止めていたが、結局はそれを許してしまい。しっかりとコレイションに入る事はなかったが、それでもコレイションの力と奴の力が合わさり、我等は一気に押されてしまった。

 最初にローレンス達が襲われ、急いで我はローレンス達に結界を張ったが、向こうの屋敷の壁の方へ吹き飛ばされた。その次にはユイゴ達が飛ばされて、最後には我が。そしてディアブナスはスノーラ達の方へと飛んで行ってしまった。

 まったく、強い強いと周りからずっと言われ続けている我が、ここまで何もできないとは、何がエンシェントドラゴンか。ユイゴに貰った薬、少しでも体が動くようになったらすぐに向こうへ行かなければ。

 我は目を開ける。そして肩の怪我を見た。これは…。

『ユイゴ、この薬はまだあるか?』

「ああ、もう数本なら」

『すまんがもう1本貰えるか? お前、これは傷の治りが早いと言ったが、そんなどころの話ではないぞ。ずいぶん控えめに言ったな』

「何を言って…」

 ユイゴが私の肩を見て、そして途中で言葉を止める。我の肩の怪我は、半分ほど穴が塞がっていた。

「何だ? 俺はこんなに早く薬が効いたのを見たことがないぞ」

『どういう事だ? 控えめに言っただけではないのか?』

「そんな事を控えめに言ってどうする。お前がすぐにでも向こうへ行きたいのは分かっているし、俺だってすぐに向こうへ行きたいと思っているんだ。いくらお前の、いや俺もだが、心を落ち着けるためであっても、そんな事を今は言わない」

『ならばこれはどういう事だ?』

「俺に分かるわけないだろう…。まさか」

『何だ? 何かあるのか。と、その前にもう1本くれないか』

「あ、ああ」

 我はもう1本、ユイゴから小瓶を受け取ると、すぐにその中身を飲み干した。これでもう少し回復が早くなるだろう、そうすれば…。

『それで、何か心当たりがあるのか?』

「確証はないのだが、レンが全員にヒールをかけただろう。あの時ヒールをかけてもらった後、薬を確認しておこうと、全ての薬を確認したんだ。その時何故だが全ての薬が微かにだが光っていた」

 おかしいと思いながらも、薬がダメになった感じはしなかったのと、またすぐに戦闘が始まってしまったため、その後確認はできなかったようだが。今我らが薬を飲んだ時は、まったく光ってはいなかった。

「もしかしたら、レンのヒールが薬に作用して、効能が良くなった?」

 そんな話し我は聞いたことがないぞ。大体ヒールは軽い怪我を治すものだ。レンのヒールがおかしいだけで…。
 あ~、確かにレンのヒールはかなりおかしかったな。何回もそれを見てそれが普通だと、錯覚してしまっていたが。我等でも見た事のないおかしなヒールだ。ユイゴの言う通り、そのおかしなヒールが薬に変化をもたらした可能性が高い。

『くくくっ、どこまでも規格外な奴め』

「これならばもう少しで」

『ああ』

 スノーラ、どうにか耐えてくれ。もう少しでそっちへ向かえそうだ。

 こうして向こうが気になりながらも、どういうわけが効能が良くなった薬を飲んだおかげで、数分後には我は飛べるまでに回復をし。同じくらいにユイゴも回復したため、無事だったハイエルフ達と共に移動を始めた。

 と、その時だった。魔法陣の中心で力が爆発し、そしてその力は一気に消えていった。今の感覚、ディアブナスか!? 何があった!?
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