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2巻

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 第1章 初めての依頼、次々起こる問題


 僕は長瀬蓮ながせれん。普通の中学生だったんだけど、気がついたら、知らない森に一人でいました。
 しかも、二歳児の姿で!
 これからどうなっちゃうか不安だったんだけど、スノーラっていう白いとらの魔獣に拾われたり、弱っていた青い小鳥を助けてルリって名前をつけてあげたり……それで、二人と一緒に住むことになりました。
 それからしばらく経ったある時、僕達は、森の近くにある街――ルストルニアの領主さんのところに引っ越すことに。
 領主のローレンスさん、奥さんのフィオーナさん、二人の長男のエイデンお兄ちゃんに、次男のレオナルドお兄ちゃん。ローレンスさんが契約しているブラックパンサーのバディーと一緒に暮らしていた僕。
 スノーラの知り合いのペガサス、ブラックホードさんの子供がさらわれたことが判明したり、それがルリが森で弱っていた原因につながっていそうなことが分かったり……
 僕としては、ギルドで冒険者登録できたから、楽しいことがいっぱいあるといいなって思ってるんだけど……これからどうなるんだろう?


 ギルドで冒険者カードをもらった僕は、スノーラ、ルリ、ローレンスさんと一緒に、ローレンスさんのお屋敷に帰ってきました。
 スノーラはローレンスさん達とお話があるからって、部屋に行っちゃいました。たぶん、ブラックホードさんの子供の話をするんだろうな。
 本当は僕も探しに行ってあげたいけど、スノーラに止められちゃったし。
 それによく考えたら、今のちびっ子の僕にできることなんて、ほとんどないよね。体力もないし。僕にできることはスノーラ達の邪魔じゃまをしないことだけ。
 そんなわけで、僕はルリと一緒に、レオナルドお兄ちゃんの部屋に来ました。

「お、冒険者カードを作れたんだな。よかったじゃないか」
「うん! いらい、うけりゅ! どうすればいいのかにゃ?」
「依頼か。冒険者ギルドにも商業ギルドにも、かべのボードに、いっぱい依頼がり出してあっただろう。その中から、やりたい依頼を選んで、みんな冒険に出かけるんだ。まぁ、依頼なしの冒険の方が楽しいんだけどな」

 レオナルドお兄ちゃんが言う通り、冒険者ギルドも商業ギルドも、僕が地球の本で読んだのとほとんど一緒でした。
 掲示板にランクごとに分けられている依頼が貼ってあって、依頼を選んだら受付で確認してもらうみたい。
 あとは、ローレンスさんとか他の偉い人達から、個人的な依頼を受ける人達もいます。もちろん報酬ほうしゅうをちゃんと払える人だったら、市民でも個人依頼を出せるんだよ。

「レオナルド、そんなに一気に話しても、レンもルリも理解できないと思うよ。それにもっと簡単に説明してあげないと」

 そう言いながら、エイデンお兄ちゃんがお部屋に入ってきました。

「そうか? まぁ、まだちびっ子だもんな。そりゃそうか」

 ぽりぽりと頭をかくレオナルドお兄ちゃん。
 僕は二歳。そうなるよね。でもちゃんと分かっているよ。レオナルドお兄ちゃん、教えてくれてありがとうね。

「そうだ。ここで話してるのもなんだから、明日冒険者ギルドにも行ってみようか。スノーラは忙しいみたいだし、僕達が連れて行ってあげるよ。小さい子でもできる依頼があるんだよ」

 何ですと!?
 僕もルリも、バッ! とエイデンお兄ちゃんの方を見ます。
 子供でもできる依頼!? そんな簡単な依頼が?

「ルリはまだ長い間変身は無理だけど、子供ができる依頼なら、そんなに時間がかからないはずだからね。それにもし途中で変身が解けても、レンのカバンに隠れればいいよ」

 ルリは実はとてもめずらしい種類の鳥で、体が青いとそれがバレちゃうから、お出かけする時は体の色を変える変身をしてもらっています。でも、エイデンお兄ちゃんの言う通り、長時間は無理なんだ。
 それで僕のカバンっていうのは、商業ギルドで買ってもらった、スノーラのマークが付いたやつ。それにフィオーナさんが、マークが隠れないようにポケットを付けてくれたの。外で遊んでいて変身が解けちゃったルリが、すぐに隠れられるようにしてくれたんだ。
 窓が付いていて、外からは黒くて中に何が入っているか分からないけど、中からはちゃんと見えるようになっているんだ。中には森から持ってきたワタを入れたよ。

「朝早くは、依頼を受ける冒険者で混み合っているから、朝ご飯を食べて少ししたら行こうか」
「やっちゃ!!」
『冒険! 冒険できる!?』
「う~ん、冒険まではちょっと。でも楽しいはずだよ」

 どんな依頼があるんだろう、楽しみだな!


 その日の夜。いつの間にか出かけていたスノーラが帰ってきたので、明日のことを話しました。
 そうしたら今は色々あるからね、スノーラが心配しちゃって、なかなかいいって言ってくれなくて。でもお兄ちゃん達や僕達で一生懸命いっしょうけんめい説得して、やっといいって言ってもらいました。
 そして次の日。
 昨晩は早く寝て、元気いっぱいな僕とルリ。しっかり朝ご飯も食べて、さらに元気いっぱいです。
 そしたらスノーラが出かける時間になって、部屋を出る前に心配そうに言ってきます。

「いいか、何かあったらすぐに戻るのだぞ。皆の言うことをよく聞き、余計なことはするんじゃない。二人だけで勝手にどこかに行ってはいけないし、知らない人間が話しかけてきても付いていくんじゃないぞ。それから……」

 スノーラ、心配してくれているのは分かるんだけど。あまりに色々言われて、楽しい気持ちがちょっとだけしぼんできちゃって、僕もルリも下を向いちゃいました。

「スノーラ様、そのへんで。私が付いておりますので」
「そうそう、俺達が一緒だ」
「それに街からは離れないから安心して」
「そうか? 他にも色々……」

 執事しつじのセバスチャンさんに、レオナルドお兄ちゃん、エイデンお兄ちゃんの言葉にも、スノーラはまだ続けようとします。

『「いってらっしゃい!」』

 まだまだ続きそうなので、あわてて僕達はスノーラにいってらっしゃいをします。
 スノーラは窓の方へ歩いていったけど何回も振り返って、それでまた戻ってきて……

「あと、落ちているものを、確認しないで何でも拾うんじゃないぞ。それから……」

 また始まっちゃったの。
 それで最後にはローレンスさんに止められて、渋々街の調査に行きました。
 スノーラ、心配しないで。僕達、お兄ちゃん達から離れないから。
 少しして、いよいよ冒険者ギルドに向かって出発です。ローレンスさんが見送ってくれたよ。
 今日はいつもと違って、馬車では移動しないんだ。
 僕はセバスチャンさんと一緒に、お兄ちゃん達もそれぞれウインドホースに乗って、冒険者ギルドに向かいます。
 街の外に出ることになるだろうから、馬車じゃちょっとね、逆に動きづらくなっちゃうから。

「パカパカ、パカパカ! ちゃあー!!」
『パカッパカ! パカッパカ! ピョー!!』

 テンションが上がって、変な雄叫おたけびを上げちゃったよ。

「ふふ、御二方おふたかたの小さいころを思い出しますね」
「そうかな、セバスチャン。僕は静かに乗ってたはずだよ。レオナルドはうるさかったけど」
「兄貴だって同じだろ?」
「ほほ、そうですね。今のレン様ルリ様と同じ反応をされていましたね」
「本当? そんなにうるさくしてたつもりはなかったんだけどな」

 ウインドホースで、すぐに冒険者ギルドの前に着いた僕達。セバスチャンさんがウインドホースを見ていてくれるから、僕はお兄ちゃん達と一緒にギルドの中へ。

「さぁ、掲示板を見に行こうか」

 冒険者ギルドの中は、あんまり人がいませんでした。もうみんな依頼をしに行ったのかな。
 僕達は誰もいない掲示板の前に行きます。

「左に貼ってあるのが簡単な依頼、右が難しい依頼だよ。分かるかな? レンのこっちの手が……」

 エイデンお兄ちゃんは僕が右と左が分かってないと思って、とっても丁寧に教えてくれました。
 左側にあるのが簡単で、右にいくにつれて依頼は難しくなります。分かりやすいように、依頼書には星のマークが書いてあって、簡単なものは星一個、一番難しいのは星が七個です。
 そして星一個の下には、もう一つ特別な依頼が。そう、それが子供でも簡単に受けられる依頼です。星の代わりに、花のマークが付いてるんだ。
 やっぱり冒険者にあこがれる子供は多いんだけど、星一個の依頼でも、小さい子には無理。
 でも小さい頃から慣れていた方が、本当に依頼を受けるようになった時に、スムーズに受けることができます。だからあちこちの街のギルドで、特別な依頼が用意されているみたいです。
 エイデンお兄ちゃん達は、色々なお話を聞かせてくれました。
 自分達もやったよねとか、依頼とは全然違う草を持ち帰って、それでもうれしくて、少しの間それを部屋に飾っていたとか。お兄ちゃん達は何歳の時から依頼をやったのかな?

「さぁ、どれにしようか。レンもルリも初めてだからね。この中でもさらに簡単なのがいいよね……あ、これなんかどうかな? 花を探す依頼だよ」

 依頼書には花の絵が描いてあって、それから文章も書いてありました。
 花の特徴とか色とか、それから何本必要かとか、お兄ちゃん達が読み上げてくれます。
 えっと、とってもいいにおいのする花で、花びらがハートの形をしてるみたい。それから色はピンクと黄色があるんだって。この花を各五本ずつ集めてきてくださいって依頼だったよ。
 探す場所も書いてあって、外の壁の周りに花が咲いているみたいです。

「ルリ、おはなしゃがしゅ?」
『うん! ルリ、お花好き!!』

 もし五本以上見つかったら、この前おもちゃとかプレゼントしてくれたお返しに、ローレンスさんやフィオーナさん、もちろんお兄ちゃん達にも、お花をあげられるかも。
 よし! この依頼に決定!!
 お兄ちゃん達と依頼書を持って受付へ。レオナルドお兄ちゃんに抱っこしてもらって、受付のお姉さんに依頼書を渡します。
 それから、お兄ちゃん達のギルドカードと僕のギルドカードを渡して。お姉さんがそれを何か箱みたいなものに差し込みました。
 そうしたら箱が光って文字が浮かび上がったよ。それを確認したお姉さんが紙に何かを書いていきます。

「レン、ギルドカード作れてよかったね。じゃないと今お姉さんが書いている紙が、あと二十枚くらい増えていたんだよ」

 え、エイデンお兄ちゃん、本当? あと二十枚くらい? そんなに!?
 その後すぐにカードを返してもらった僕達。依頼書も受け取って、お姉さんがいってらっしゃいをしてくれたから、僕は大きな声で挨拶あいさつしました。

「いっちぇきましゅ!!」

 さぁ、いよいよ依頼開始です。
 外で待っていてくれたセバスチャンさんと合流して、またウインドホースに乗って街の門の所へ。
 街を出る時も、来た時みたいに騎士きしさん達のチェックがあるんだけど、もちろんお兄ちゃん達はローレンスさんの家族だから、ローレンスさん達用の列に並べます。だから一般の人達が並んでいる列よりも早く外へ出られたよ。
 門から出たら壁に沿って、ゆっくり依頼ができるように人が少ない場所へ進んで行きます。今向かっている方に、花がいっぱい咲いているんだって。
 しばらく歩いたところで、お兄ちゃん達は立ち止まりました。

「――さぁ、ここまで来ればいいかな」
「ほら見てみろ。あそこで草を取ってる子供がいるだろう? あいつらも家族と一緒に依頼をしに来てるんだぞ。ルリ、レン、負けるなよ!」
「うん!! がんばりゅ!!」
『ルリ、いっぱい見つける!!』

 ウインドホースから降りて、僕達はすぐに花を探し始めました。
 依頼書に描いてある花の絵、ちゃんと色も付いているんだ。これも子供用だから、ちゃんとどういうものか分かるようになっているの。普通の依頼書は絵が描いてないこともあるし、描いてあっても色なんか付いてないんだって。

「どこかにゃあ?」
『お花いっぱい、探すの大変。でも頑張がんばって探す』

 うん、そうだね。お兄ちゃんが言っていた通り、花はいっぱい咲いていたんだけど、種類が多くて探してるのが見つかりません。
 でも頑張って探すんだ。それでみんなにプレゼントするの。
 と、探し始めて少し経った時でした。
 僕は顔を上げて、そして周りをキョロキョロ。何か聞こえた気がしたんだけど……気のせい?
 僕は気を取り直して、また花を探し始めて――

『……こ? ……よ』

 こ? よ? 僕はまた顔を上げます。何? 誰か何か言っている?

『……いよ。ぱ………………いよ』

 よく聞こえないよ? もっと大きな声でハッキリ話して。
 どこからかかすかに聞こえてくる声に、僕は周りをキョロキョロ。それから立ち上がって、あっちこっちにフラフラ。僕に何か言いたいの?

「レン!!」

 エイデンお兄ちゃんの声と一緒に肩をつかまれて、ビクッとして周りを見ます。
 あれ? 僕何をしていたっけ? 確か声が聞こえて……
 後ろを見たらエイデンお兄ちゃんが、とっても心配そうな顔で僕のことを見ていました。
 向こうには一生懸命花を探しているルリと、なんか真剣な顔をして僕を見ているレオナルドお兄ちゃんが。それからセバスチャンさんがウインドホースを壁の近くのくいに繋げて、僕の方に急いで走ってきていました。

「エイデン様、いかがなさいましたか?」
「いや、急にレンがフラフラ歩き始めて。いくら声をかけても反応がなかったんだ。レン、どうしたの? 何か気になるものでもあった?」

 う~ん、僕、声が聞こえた気がしたんだけど。
 考え込んでいたら、エイデンお兄ちゃんがもっと心配な顔になっちゃいます。

「大丈夫? 今日はもう帰る?」

 ダメダメ!! 帰らないよ。せっかくの初めての依頼だもん、ちゃんと最後まで花を探すんだから。
 僕は急いでルリの所に戻ります。
 後ろの方では、セバスチャンさんとエイデンお兄ちゃんが話していました。

「どうされたのでしょうか?」
「急に様子がおかしくなったんだ。それから『誰?』『聞こえない』って。僕もレオナルドも何も聞こえなくてさ。それでフラフラ歩き出すんだもん」
「お二人に聞こえない声ですか」
「今の様子だと大丈夫そうだけど。一応帰ったら父さんに報告するよ。また何があるか分からないし。あのこともあるからね」
「その方がよろしいかと。私も気をつけておきます」

 あのこと? なんのことだろう。


 それから花探しを再開してから少しして、僕とルリは同時にピンクと黄色の花をそれぞれ見つけたんだよ。顔を見合わせた僕達、一緒にニコニコです。
 見つけた花をむ前に、間違っていないか依頼書を確認。間違ってギルドに持っていったら報酬が貰えないもんね。
 花の形、模様もようは同じか、葉っぱと色も確認。間違ってないと思うんだけど……お兄ちゃんが僕とルリに間違いない? って聞いてきました。
 大きな声で返事をする僕達。お兄ちゃんはニッコリ笑った後、頑張って見つけたねって。
 よかった、間違っていなかったよ。その後も一生懸命探した僕達。
 ちょうど探してる花がまとまって生えている場所だったのか、予定時間よりも早く、五本ずつ花を見つけることができました。
 見つけた花は、お兄ちゃんが用意してくれた布の袋にしまって、これで依頼完了です。僕達はシャキーンッ!! のポーズ。
 残りの時間は、お兄ちゃん達に他の花を摘んでいいか聞いて。じゃあって、別の布の袋を出してくれたお兄ちゃん。依頼の花と混ざらないように、別の袋を出してくれました。
 僕とルリは気になったお花を、どんどん袋に入れていきました。
 綺麗きれいな花、カッコいい花、かわいい花。色々な花を摘んだんだ。そんな楽しいお花摘みだったんだけど……帰る間際に、問題が起こりました。
 エイデンお兄ちゃんが、何かお話があってセバスチャンさんの所に、レオナルドお兄ちゃんは、近くにいた家族連れの所に行っちゃいました。
 それで僕とルリだけになったんだけど……

「やめてよ! 僕が集めたんだよ!」
「うるせぇ、ヒック。こんな場所でうろちょろしてんじゃねぇよ! ヒック」

 僕達から少し離れた所で、男の子の声と、男の人の声が聞こえてきました。
 そっちを見たら、手にお酒のびんを持っている、明らかにっているおじさんが、小さな兄弟にからんでいました。それで、集めた草が入っているかごを、蹴飛けとばしてバラバラにしたんだ。
 しかも、その子達のお母さんが止めに入ったのに、そのお母さんのことをたたこうとして。
 僕は立ち上がって、ルリの方を見ます。ルリも僕を見ていて、二人でうなずきました。
 僕が近くに落ちていた石を投げると、ルリがそれをキャッチ! そのまま酔っ払いの頭めがけて石を投げました。石は見事に酔っ払いのおでこに当たったよ。

「ちっ!! 誰だ!!」

 酔っ払いは物凄ものすごく怒りながらきょろきょろすると僕とルリに気づいて、ズンズン、でもちょっとふらふらしながら歩いてきます。
 すかさず僕達は二回目の連携れんけい攻撃。これも見事に命中。

「みんにゃ、め! あちゅめちゃの、けりゅのめ!」
「何だと!!」
「わりゅいことしゅりゅの、め! りゅり、もっかい!!」

 ちょっと大きい石を、なんとか投げる僕。ルリは完璧かんぺきにキャッチして、今度は酔っ払いの足――さっき籠を蹴ったその足に命中させました。

「いてぇっ!? くっ、ガキが!! 調子に乗りやがって!!」

 酔っ払いが僕のことを掴もうとして、僕はそれをけようとします。でも酔っ払いなのに、思ったより動きが速くて、掴まれそうになった瞬間しゅんかんでした。

「やめとけ」

 知らない大きな男の人が、酔っ払いの腕を掴んでひねり上げました。大きな声を上げて苦しむ酔っ払い。
 僕とルリは、男の人をじっと見つめます。

「レン、ルリ!! 何してるの!?」
「驚かせんなよ!?」

 お兄ちゃん達がそう言いながら、こっちに走ってきました。
 その後はセバスチャンさんが騎士さんを呼んできて、酔っ払いは連れていかれました。
 兄弟のお母さんが僕達にありがとうしてくれたよ。
 それからお兄ちゃん達は、僕達を助けてくれた男の人にお礼をします。

「すみません、弟達を助けていただいて」
「いや、気にするな。当たり前のことをしただけだ」

 それだけ言うと、男の人はさっさとどこかへ行っちゃいました。
 カッコいい男の人、ありがとう!!
 ニコニコしていたんだけど、その後僕達は、お兄ちゃん達からお説教されてしょんぼりに。

「もう、ビックリしたよ。勝手にああいうことをしちゃダメだよ。ちゃんと僕達を呼んで。怪我けがしてからじゃ遅いんだからね」
「兄貴の言う通りだぞ。いいか、絶対に俺達を呼ぶんだ」
「ごめんしゃい」
『ごめんなさい』

 僕とルリはお兄ちゃん達に抱きつきます。
 そっとお兄ちゃん達の顔を見たら、二人共心配そうに笑っていました。
 それから怪我がなくてよかったって、ギュッと抱きしめてくれたよ。お兄ちゃん、本当にごめんなさい。

「って、いうのは、一応言わなくちゃいけないことだけど」

 急に明るい声になるレオナルドお兄ちゃん。

「レン、ルリ、よくやった!! よくあの家族を守ったな!」
「まぁ、それはちゃんとめないとね。二人共頑張って守ったね」

 今度はとってもニッコリのお兄ちゃん達に、僕もルリもとってもニッコリ。

「それにしても、あの酔っ払いどうする? どうせ注意されるだけで出てくるだろう?」
「そうだね。明日には出てくるだろうね。うちに呼ぼうか? 裏庭に古い小屋が余ってたよね。そこに呼んで話でもしようか? ついでに僕、やりたいことがあるんだよね」
「じゃあ兄貴の後でいいから、俺にも貸してくれよ。ちょうど試しり、じゃなかった、試しにやってみたいことがあるんだよな」
「いいよ。僕の後でいいならね。僕達の弟に手を出したんだから、何されても文句は言えないよね」

 お兄ちゃん達、よく分からないけど楽しそうだな。


 ◇ ◇ ◇


 ふんっ、俺が目をつけたものに、手を出されるのはと思って助けたが……あれがサザーランド家に出入りしているガキか。
 俺、ジャガルガはその場を立ち去りながら、息を吐いた。
 サザーランド家の子供達があれだけあせってるってことは、あのガキに何かあるはずだ。詳しく調べよう。
 それにしても、この街には色々と集まるな。
 しかしあのガキが連れていた鳥。助けた時に少しだけ見てみたが、前に俺が森で捕まえようとした鳥に似ていなかったか?
 色がまるで違うから、ただ似ているだけの鳥かもしれんが……そっちも調べてみるか。


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