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2巻
2-2
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◇ ◇ ◇
「さぁ、今からギルドに寄って家に帰ると、ちょうど昼食の時間だね。そろそろ帰ろう」
「うん!」
『何貰えるかなぁ!』
エイデンお兄ちゃんの号令で、僕達は帰ることにします。
ウインドホースに乗って門の場所まで行くと、いつも通り騎士さんのチェックの列に並びました。入る時に、今回は書類じゃなくてギルドカードを見せます。
ギルドにあった小さな箱と同じような箱にカードを差して、チェックはすぐに終了。僕達はそのまま冒険者ギルドに向かいます。
到着したら、依頼書とカード、依頼のお花を袋から出して受付のお姉さんに渡しました。すぐにチェックするお姉さん。
チェックはすぐに終わって、お姉さんは依頼書に完了の判子を押した後、僕達にニッコリ笑って箱を出してきました。
その中にはリボンやメダルが入っていて、何だろうと思ってたら、好きなものを選んでいいって言われました。
これが今回の報酬みたい。
僕もルリもリボンを選んだよ。ルリがね、リボンがいいって言ったから、お揃いにしたんだ。
ルリは首に、僕はちょっと伸びている前髪をリボンでまとめてもらいました。そういえば、この世界には美容院とかあるのかな?
「うん、なかなか似合うね」
「さらに可愛くなったな」
お兄ちゃん達に褒めてもらって僕達はルンルンです。
お姉さんにバイバイして家に帰る僕達。
その帰り道、いいお話を聞きました。リボンやメダルは気に入ったらそのまま持っていてもいいし、もしたくさん……六個集まったら、お菓子の詰め合わせと交換してくれるんだって。そんないいシステムがあるんだよ。
これからも、お兄ちゃん達やスノーラと一緒に依頼を受けられるよね? そうしたら気に入っているリボンとかメダルは、おもちゃ箱や宝物の入っている入れ物にしまっておいて、他を交換するのもいいよね。
ふへへ。また依頼を受けるのが楽しみになったよ。
そんなことを考えているうちに、お屋敷に帰ってきました。
ルリの変身が解けないか心配だったけど、結局最後までしっかりとエメラルドグリーンのままでした。帰ってきてすぐに変身は解けちゃったけど、今までで一番長く変身していたかも。
ルリ、やったね!
それで帰ってきた僕達は、お兄ちゃん達と一緒に大きなお風呂に入って、さっぱり綺麗になります。
そしたら、お風呂に入ってる時に、レオナルドお兄ちゃんが聞いてきます。
「レン、この後はどうする? 摘んできた花をどこかに飾るのか?」
そうそう、まだまだやることはいっぱいなんだ。
まずは摘んできた花を人数分に、色とか種類があんまりかぶらないように分けて。その後はリボンでまとめるとか、こう花屋さんみたいにできればいいんだけど……今の僕にできるかな?
それに、準備をしている時は、お兄ちゃん達に見られるのはちょっと。プレゼントだからね。
「うん、おはなみりゅ。でも、しゅのーといっちょ」
「スノーラが帰ってきてから一緒に見るってことか? じゃあ、レンの部屋に持っていってやる。花瓶に入れておくから、周りであんまりバタバタするなよ。倒れて花瓶が割れて怪我するといけないからな」
この世界では前の世界に比べて、摘んだ花が枯れるのが遅いんだよね。もちろん、自然に生えている花よりは長持ちしないけど……長いと一ヶ月くらいは持つんだ。
あっ、でもね、摘んだ瞬間に枯れちゃう花や草もあって、そういう特別な花は、取り方も特別。高ランクの冒険者でも難しいみたいです。どんな花か見てみたいね。
夜のご飯は、帰ってきたスノーラとローレンスさん達、お兄ちゃん達とみんなで食べました。
ご飯を食べながら今日の依頼の話をした僕とルリ。あんまり話していたから途中でスノーラに怒られちゃいました。もう少し静かに食べろ、それかご飯が終わったらにしろって。
だから急いでご飯を食べたんだけど、でも結局ご飯を食べ終わったのは僕達が一番最後。
そしたら、レオナルドお兄ちゃんが凄い勢いで笑っていました。
なんか、僕達の顔がご飯のタレだらけだったみたい。おでこの方までタレが付いていたんだ。どうやって付いたのか、自分でも分かりません。
ご飯を食べ終わったら、いつもゆっくり休む部屋に移動して、やっと依頼のお話ができたよ。
スノーラもローレンスさん達もずっとニコニコ、僕達の話を聞いてくれて。最後は僕とルリでリボンを見せてシャキーンッ!! のポーズです。
その後はみんなでそれぞれ自分の部屋に戻って、僕はスノーラに花のことを話します。
「ぷりぇじぇんちょ。みんにゃにしゅる」
「この花をか?」
『いっぱい摘んだの、綺麗でしょ。リボン付けたい。ボク達のプレゼントもリボン付いてた』
「リボンか……我はプレゼントのように、綺麗にリボンを結ぶことはできん。どうも苦手でな」
え? そうなの? スノーラ何でもできるのにね。じゃあどうしようかな? こう、紙でくるくるまとめて結ぶだけにする? でもそれだとちょっと寂しいかな。
僕とルリが考え込んでいると、ドアをノックする音が。セバスチャンさんが、紅茶を持ってきてくれたんだ。
「ちょうどいい。お前に頼みがあるのだが」
「何でございましょう」
スノーラが僕達の代わりに説明すると、すぐに部屋を出て行ったセバスチャンさん。すぐに戻ってきたかと思ったら、手には箱を持っていました。
「この箱の中には、綺麗な紙とリボンが入っております。レン様、ルリ様。私と一緒に花をまとめてみましょう」
「うん!!」
『綺麗にできるかな』
僕とルリは、セバスチャンさんを挟むようにそれぞれ左右に隣に座りました。
まずは花を分けるところから。これはすぐにできて、ちゃんと人数分、均等に花を分けることができたよ。
次は紙を選びます。とっても綺麗な紙でキラキラ光っているの。セバスチャンさんがみんなの好きな色を教えてくれて、せっかくだからみんなの好きな色の紙にすることに。
ローレンスさんは青色、フィオーナさんはピンク、エイデンお兄ちゃんは緑、レオナルドお兄ちゃんはオレンジだって。
紙を選び終わったら、ついでにリボンも選んじゃいます。同じ色で揃えてみました。
これで準備は完了です。
セバスチャンさんと一緒に、まずはローレンスさんとフィオーナさんのから。紙で花を包んでそれからリボンを結んで。
う~ん、ちょっと紙がボロボロになっちゃった。それにリボンも曲がっちゃったよ。ルリのもね。
「ほほ、レン様、ルリ様。とてもよくできておりますよ」
僕達が首を捻っていると、セバスチャンさんがそう言ってくれました。
本当? 大丈夫?
僕もルリもじっとプレゼントを見つめていたけど、セバスチャンさんはニコニコ。スノーラも「いい出来じゃないか」って言ってくれます。二人が言うなら大丈夫かな?
ちょっと気になりながら、次にお兄ちゃん達のを作って。うん、なんとかプレゼントを用意することができました。
僕もルリも、セバスチャンさんにギュッと抱きついて、それからしっかりありがとうをしました。セバスチャンさん、とってもニコニコしていたよ。
今日はもう遅いから、プレゼントは明日の朝ご飯を食べてから渡すことにしました。
僕達はニコニコのまま、残りの花を持って部屋の一角に作ってもらった秘密基地に行きました。
セバスチャンさんは、他のお仕事があるみたいで部屋から出て行くみたいです。
「すまなかったな、時間をとらせて」
「いいえ、スノーラ様。おかげさまで楽しい時間を過ごすことができました。エイデン様やレオナルド様が小さい時を思い出し、それもまた懐かしく……また何かあればいつでもお呼びください」
僕達は最後にもう一度秘密基地から顔を出して、セバスチャンさんにありがとうをしてから、すぐに引っ込みます。
これからまだやることがあるんだよ。
僕達がこれからやりたいこと。それは秘密基地をもっとカッコよくすることです。
この秘密基地は、何日か前に作ったばっかりなんだ。
森にいた時、僕達の遊び場所は、洞窟の奥に作った秘密基地でした。でもこの部屋には、そんなスペースはありません。
でも、ちょっと前に、本棚と部屋の隅っこの間が開いていたのを見つけたんだ。だから、そこに上手に秘密基地ができないかなって。
そう考えた僕は、まずはその隙間でゴロゴロできるか、それから宝物の箱を置いても余裕があるかの確認。
ルリを呼んで二人でゴロゴロしても、何も問題はありませんでした。
次は宝物の箱。スノーラに僕達が寝ている状態で置いてもらって、それからお兄ちゃんに貰った、馬車のおもちゃと剣も置いてみてもらいました。
これも大丈夫で、もし家とかお庭、森を探検、冒険して何か見つけてきても、それを置く余裕もあったよ。
確認が終わったら、壁とか屋根とかを作るか考えました。
森にいた時は、傘の代わりにできる大きな葉っぱを使ってたんだけど。それをちゃんと茎がついている状態で何枚か持ってきているから、それで屋根を作ってもいいし。
段ボールみたいなものを立てて、その上から毛布をかけてみるとかでもいいかも。でも、段ボールみたいなものがこの世界にあるのかな?
僕はスノーラになんとか説明して、壁のことを聞いてみました。そして話を聞いたスノーラは、ちょっと待ってろってどこかへ。
少しして戻ってきたスノーラの手には、板みたいなものがありました。
触ったら段ボールみたいだったんだけど、木の皮なんだって。色々な形に曲げられて、何回でも作り変えることができる不思議な板でした。
スノーラがやってみるぞって、板を半分に折ります。
それでちゃんと折れているか確認したら、元に戻して、折ったところを手でぐいぐい押すスノーラ。
そうしたら折ったところが真っ平らに戻って、跡が全然残っていませんでした。またまた別のところを折るけど、それもまた完璧に元に戻ります。
「聞いたら執事のケビンが用意してくれた。それからローレンスにも、秘密基地を作っていいか聞いてきたが、好きに作っていいそうだ」
そっか、部屋を借りているんだもん、勝手に作っちゃダメだよね。でもスノーラが聞いてきてくれたからよかった!
僕とルリは、すぐに秘密基地を作り始めました。といっても、まず板を折ってそれを立てて、部屋の端っこを囲んだだけだけどね。でもこう、角度とか本棚にぶつからないようにとか、難しいところもありました。
なんとか板を立てたら、次は屋根を作ります。
あっ、入口はね、スノーラが風の魔法で板を綺麗に切ってくれて、ドアみたいに作ってくれたよ。ルリ用の小さいドアも作ってくれました。
「しゅのー、おおきはっぱ、だちて」
『アレくっ付けてお屋根にする。いっぱい持ってきたから大丈夫でしょ?』
「ああ、アレか。よし、今出してやる」
すぐに傘みたいな葉っぱを出してくれたスノーラ。
屋根は作るのが難しくて、スノーラが一緒に作ってくれました。僕達が葉っぱを持って、スノーラが板に茎を刺します。
あのね、この葉っぱの茎は簡単に裂けるんだけど、とっても固いから、板に刺すことができたんだ。それでしっかり差し込んだら、僕達が怪我をしないように、スノーラが余分な茎を切り落としてくれました。
「これでどうだ? 三枚でちょうど全部が隠れる。中に入って確認してみろ」
そう言われて、すぐに中に入る僕達。
隙間からちょうど光が入ってくるから、ちゃんと中が見えます。でも夜だとちょっと暗いかも?
それを伝えたら、スノーラはローレンスさんに聞きに行って、ライトを貰ってきてくれました。夜にはそれもセットしたんだ。
秘密基地が出来上がった僕達は、『やった~!!』のシャキーンッ!! のポーズ。それからすぐに宝物の箱を持って中に入って、ソファーの所に置いてあった、小さなクッションも二個入れました。持ってきても、まだ五個ソファーにあるから大丈夫。
それから、スノーラに少し他のおもちゃを出してもらったら、秘密基地の中も完璧に。
僕達は基地の中でもう一回シャキーンッ!! のポーズ。
こうして一応、秘密基地が完成したのが数日前のこと。
その秘密基地に、僕とルリは花を飾りました。
それでスノーラに寝る時間だぞって言われたから、おやすみなさいをして秘密基地から出ました。
誰におやすみなさいを言ったかっていうと、森で見つけて持ってきた卵です。
僕やルリ、スノーラがお屋敷にいない時はスノーラがしまって。いる時は、明るい時は窓の所に置いて、夜になったら秘密基地に置くことにしてるんだ。
ローレンスさんの家に来て少しして、スノーラに出してもらったんだけど、どこに置くかで悩んで、結局その時その時で場所を変えることになりました。
初めて卵を見たローレンスさん達はとっても驚いていて、預かろうかって言ってくれました。
でもダメだよ。卵も僕達の家族だもん、いつも一緒にいなくちゃ。
ローレンスさんもフィオーナさんも、最初のうちはとっても心配していました。毎日卵を見に来るくらいに。
そういえばこの頃は来たり来なかったりだけど。何でそんなに心配なのかな?
そんな卵も置いているから、今、秘密基地の中は物がいっぱいで、かなり充実してきています。
もう少ししたら基地を広げたらどうだってスノーラが言うので、僕達は頷きます。ゴロゴロできなくなっちゃったからね。もう少しゆったりがいいもん。
「今日は楽しかったか?」
「うん!! たのちかっちゃ!」
『ルリ、いっぱいお花見つけた!』
「そうか。よかったな」
魔獣の姿に戻ったスノーラに寄りかかりながら、寝る僕達。
そういえば、お花を探してる時に聞こえたあの声は本当に何だったんだろう? 気のせいだとは思うんだけど、う~ん。
声のことを考えていたんだけど、いつの間にか寝ちゃってました。
次の日の朝、すっきり目覚めます。
朝ご飯を食べてからプレゼントを渡す予定だから、プレゼントの花束を見えないように袋に入れて、二人でズルズル引きずりながら食堂に持っていきます。いや、持っているつもりなんだよ。でもズルズルになっちゃうの。
食堂に着くと、もうローレンスさん達は集まっていました。
「スノーラ、レン、ルリ、おはよう」
「はよごじゃましゅ!」
『おはようございます!!』
「どうしたの? そんなに大きな袋を引きずって?」
「ないちょ!」
『うん、内緒!』
「あら内緒なのね。でも汚れてしまうといけないから、窓の方へ置いておきましょう」
フィオーナさんがニコニコしながら、メイドさんのアンジェさんに、窓の方に袋を持って行くように言います。
さあ、ご飯一生懸命食べなくちゃ。僕達いつも最後だもんね、プレゼントをあげるのに待っていてもらうことになっちゃう。
そして一生懸命食べた僕達の顔は……今日はみんなが笑ったよ。ソースの色合いが独特だとか、模様になっているとかなんとか。急いでスノーラに綺麗にしてもらいます。ベトベトの手に体に顔じゃね。
そして窓の所に置いてもらった袋を、またズルズル引っ張ってくる僕達。
「残ってもらってすまない、レンとルリからちょっとな」
「どうしたのレン、ルリ?」
「えちょ、ぷれじぇんちょ!」
『レンとボク、プレゼント!』
ローレンスさん達は最初、僕達が言っていることが分からなかったみたい。プレゼントって言ったのは分かってもらえたんだけど、なんでプレゼントなのか、その説明がね、上手くできなかったんだ。
だからスノーラが代わりに説明してくれたよ。
「お前達にプレゼントを貰っただろう。だから今度は自分達がプレゼントをすると」
「本当か!? ありがとなレン! ルリ!」
レオナルドお兄ちゃんはガタッと立ち上がって大喜び。エイデンお兄ちゃんは、「すぐに部屋を片付けなくちゃ」とか「専用の部屋がいるんじゃない?」とか言ってました。そんな部屋を作るほどのことじゃないのに。
ローレンスさんとフィオーナさんも部屋に飾る場所を用意しろとか、まだプレゼント渡してないのに、大騒ぎになっていたよ。
スノーラにみんなを落ち着かせてもらって、一つずつ順番に渡していきます。
まずはローレンスさんの所へ。袋から花束を出して、二人で一緒に渡します。ローレンスさん、受け取った時少し涙目だったよ。そんなに?
それで次はフィオーナさん、その次はエイデンお兄ちゃんで、最後がレオナルドお兄ちゃんです。
「旦那様、包装もリボンもレン様方がおやりに」
「セバスチャン、そうなのか!! こんなに上手に凄いじゃないか!」
「それにちゃんと私達の好きな色にしてくれたのね。ありがとうレン、ルリちゃん」
みんなが順番に僕達を抱きしめてくれます。よかった、みんな喜んでくれたよ。
ローレンスさんは仕事をするお部屋に、フィオーナさん達は自分の部屋に飾ってくれるみたい。後でドライフラワーにするって。それから包装紙もリボンも、大切な物だって、綺麗に解いてしまってくれました。僕もこの前貰ったプレゼントはそうしたから、一緒だね!
また何かプレゼントできたらいいなぁ。今度はいつ依頼を受けに行けるかな? 昨日はあの酔っ払いのおかげで、ちょっとしょぼんりもあったし、次は全部が楽しいといいなぁ。
「――あっ、そうだ父さん。僕達、裏の今使ってない小屋使っていい?」
「昨日の話か?」
「うん、ちょっとあの酔っ払いと話をしようかと思って」
「使ってもいいが、あまりやりすぎるなよ」
「ちゃんと僕達の話を理解してくれたら、すぐに帰すよ」
「さて、ちゃんと話、分かってくれるかなぁ」
◇ ◇ ◇
プレゼントを渡せて、ニコニコのレンとルリ。二人はそのまま、兄達と遊ぶと部屋を出て行こうとしたのだが、我、スノーラはそれを急いで止めた。
昨日のことでレンに聞きたいことがあったのだ。
昨日レン達が寝た後、ローレンス達から話があると執事のケビンが我を呼びに来た。二人がしっかりと寝ていることを確認した我は、すぐにローレンスの所へ。
行くと皆が揃っていて、何があったのかと思えば、今日のレンとルリの依頼で、色々と問題が発生したそうだ。しかももしかしたら今回の事件に関係があるかもしれないと言うのだ。
どうやらレンは、依頼をこなしている最中で、周りには誰もいなかったにもかかわらず、誰かに声をかけながらウロウロと歩き始めたらしい。エイデン達が話しかけても反応を示さず、しばらくして元に戻ったが、エイデン達には聞こえない声が聞こえていたようだ。
そしてその次に、今度はレン達が自らやらかした。絡まれていた家族を助けようとして、冒険者に対して連携攻撃をしたというのだ。
ため息しか出なかった。怪我がなく本当によかったものの……エイデン達もレン達を叱ったらしいが、我からもしっかりと言わなければ。
まったく、我のいない所で危険なことはやめてくれ。
とりあえず、今目の前で遊びたいのにとブーブー言っているレン達に、まずは声のことを聞かなければ。
悪いが大事なことだからな、とりあえず現場に行って確かめた方がいいか?
◇ ◇ ◇
今、僕達は、昨日花を摘みに来た場所に来ています。
ローレンスさんとお兄ちゃん達、それからケビンさんとセバスチャンさんも一緒。何で同じ場所に来たかっていうと、昨日のことをスノーラにお話しするためです。
「それで、声が聞こえた場所はこの辺りか? ……何も感じないな。街全体を包んでいる変な気配は相変わらずだが」
「そうか。だが、もしレンの聞いた声が本当ならば……」
「夜の暗闇に紛れれば、さらに深く調べられるはずだが、とりあえず今から少し調べてくる」
スノーラはローランスさんとそんな話をすると、どこかへ行っちゃいました。
もし何か変わったこと、変に感じたこと、声が聞こえたら、すぐにお兄ちゃん達に伝えろだって。
それからローレンスさん達も近くの調査をするみたいなので、とりあえず僕達は、依頼をやることにします。
せっかく街の外に出るからって、ここに来る前にパパッと冒険者ギルドに寄って依頼を選んできたんだ。ローレンスさんもここに来る前に、ギルドマスターのダイルさんにお話があったみたいだから、ちょうどよかったの。
今日の依頼は、薬に使う薬草を集める依頼です。
ちょっと臭い草で、色は緑じゃなくて青色なんだ。触ると手が臭くなっちゃうから、軍手みたいなものをつけて取るんだよ。まとまって塊で生えているから、その塊を十個取ってくるっていう依頼です。
お昼ご飯までに、草はちゃんと十個見つけたよ。でも今日は、声は聞こえませんでした。
冒険者ギルドに行って、昨日はリボンを貰ったから、今日はメダルを貰います。
そうそう、依頼失敗の時は、残念賞で飴を貰うって、お兄ちゃんに教えてもらいました。失敗しても何か貰えるのは何かいいよね。
それで僕達はお家に帰って、スノーラは夕方帰ってきました。
何も見つけられなかったみたい。でも僕達が寝たら、夜の街を調べに行くって言ってました。
そして夜中。
「さぁ、今からギルドに寄って家に帰ると、ちょうど昼食の時間だね。そろそろ帰ろう」
「うん!」
『何貰えるかなぁ!』
エイデンお兄ちゃんの号令で、僕達は帰ることにします。
ウインドホースに乗って門の場所まで行くと、いつも通り騎士さんのチェックの列に並びました。入る時に、今回は書類じゃなくてギルドカードを見せます。
ギルドにあった小さな箱と同じような箱にカードを差して、チェックはすぐに終了。僕達はそのまま冒険者ギルドに向かいます。
到着したら、依頼書とカード、依頼のお花を袋から出して受付のお姉さんに渡しました。すぐにチェックするお姉さん。
チェックはすぐに終わって、お姉さんは依頼書に完了の判子を押した後、僕達にニッコリ笑って箱を出してきました。
その中にはリボンやメダルが入っていて、何だろうと思ってたら、好きなものを選んでいいって言われました。
これが今回の報酬みたい。
僕もルリもリボンを選んだよ。ルリがね、リボンがいいって言ったから、お揃いにしたんだ。
ルリは首に、僕はちょっと伸びている前髪をリボンでまとめてもらいました。そういえば、この世界には美容院とかあるのかな?
「うん、なかなか似合うね」
「さらに可愛くなったな」
お兄ちゃん達に褒めてもらって僕達はルンルンです。
お姉さんにバイバイして家に帰る僕達。
その帰り道、いいお話を聞きました。リボンやメダルは気に入ったらそのまま持っていてもいいし、もしたくさん……六個集まったら、お菓子の詰め合わせと交換してくれるんだって。そんないいシステムがあるんだよ。
これからも、お兄ちゃん達やスノーラと一緒に依頼を受けられるよね? そうしたら気に入っているリボンとかメダルは、おもちゃ箱や宝物の入っている入れ物にしまっておいて、他を交換するのもいいよね。
ふへへ。また依頼を受けるのが楽しみになったよ。
そんなことを考えているうちに、お屋敷に帰ってきました。
ルリの変身が解けないか心配だったけど、結局最後までしっかりとエメラルドグリーンのままでした。帰ってきてすぐに変身は解けちゃったけど、今までで一番長く変身していたかも。
ルリ、やったね!
それで帰ってきた僕達は、お兄ちゃん達と一緒に大きなお風呂に入って、さっぱり綺麗になります。
そしたら、お風呂に入ってる時に、レオナルドお兄ちゃんが聞いてきます。
「レン、この後はどうする? 摘んできた花をどこかに飾るのか?」
そうそう、まだまだやることはいっぱいなんだ。
まずは摘んできた花を人数分に、色とか種類があんまりかぶらないように分けて。その後はリボンでまとめるとか、こう花屋さんみたいにできればいいんだけど……今の僕にできるかな?
それに、準備をしている時は、お兄ちゃん達に見られるのはちょっと。プレゼントだからね。
「うん、おはなみりゅ。でも、しゅのーといっちょ」
「スノーラが帰ってきてから一緒に見るってことか? じゃあ、レンの部屋に持っていってやる。花瓶に入れておくから、周りであんまりバタバタするなよ。倒れて花瓶が割れて怪我するといけないからな」
この世界では前の世界に比べて、摘んだ花が枯れるのが遅いんだよね。もちろん、自然に生えている花よりは長持ちしないけど……長いと一ヶ月くらいは持つんだ。
あっ、でもね、摘んだ瞬間に枯れちゃう花や草もあって、そういう特別な花は、取り方も特別。高ランクの冒険者でも難しいみたいです。どんな花か見てみたいね。
夜のご飯は、帰ってきたスノーラとローレンスさん達、お兄ちゃん達とみんなで食べました。
ご飯を食べながら今日の依頼の話をした僕とルリ。あんまり話していたから途中でスノーラに怒られちゃいました。もう少し静かに食べろ、それかご飯が終わったらにしろって。
だから急いでご飯を食べたんだけど、でも結局ご飯を食べ終わったのは僕達が一番最後。
そしたら、レオナルドお兄ちゃんが凄い勢いで笑っていました。
なんか、僕達の顔がご飯のタレだらけだったみたい。おでこの方までタレが付いていたんだ。どうやって付いたのか、自分でも分かりません。
ご飯を食べ終わったら、いつもゆっくり休む部屋に移動して、やっと依頼のお話ができたよ。
スノーラもローレンスさん達もずっとニコニコ、僕達の話を聞いてくれて。最後は僕とルリでリボンを見せてシャキーンッ!! のポーズです。
その後はみんなでそれぞれ自分の部屋に戻って、僕はスノーラに花のことを話します。
「ぷりぇじぇんちょ。みんにゃにしゅる」
「この花をか?」
『いっぱい摘んだの、綺麗でしょ。リボン付けたい。ボク達のプレゼントもリボン付いてた』
「リボンか……我はプレゼントのように、綺麗にリボンを結ぶことはできん。どうも苦手でな」
え? そうなの? スノーラ何でもできるのにね。じゃあどうしようかな? こう、紙でくるくるまとめて結ぶだけにする? でもそれだとちょっと寂しいかな。
僕とルリが考え込んでいると、ドアをノックする音が。セバスチャンさんが、紅茶を持ってきてくれたんだ。
「ちょうどいい。お前に頼みがあるのだが」
「何でございましょう」
スノーラが僕達の代わりに説明すると、すぐに部屋を出て行ったセバスチャンさん。すぐに戻ってきたかと思ったら、手には箱を持っていました。
「この箱の中には、綺麗な紙とリボンが入っております。レン様、ルリ様。私と一緒に花をまとめてみましょう」
「うん!!」
『綺麗にできるかな』
僕とルリは、セバスチャンさんを挟むようにそれぞれ左右に隣に座りました。
まずは花を分けるところから。これはすぐにできて、ちゃんと人数分、均等に花を分けることができたよ。
次は紙を選びます。とっても綺麗な紙でキラキラ光っているの。セバスチャンさんがみんなの好きな色を教えてくれて、せっかくだからみんなの好きな色の紙にすることに。
ローレンスさんは青色、フィオーナさんはピンク、エイデンお兄ちゃんは緑、レオナルドお兄ちゃんはオレンジだって。
紙を選び終わったら、ついでにリボンも選んじゃいます。同じ色で揃えてみました。
これで準備は完了です。
セバスチャンさんと一緒に、まずはローレンスさんとフィオーナさんのから。紙で花を包んでそれからリボンを結んで。
う~ん、ちょっと紙がボロボロになっちゃった。それにリボンも曲がっちゃったよ。ルリのもね。
「ほほ、レン様、ルリ様。とてもよくできておりますよ」
僕達が首を捻っていると、セバスチャンさんがそう言ってくれました。
本当? 大丈夫?
僕もルリもじっとプレゼントを見つめていたけど、セバスチャンさんはニコニコ。スノーラも「いい出来じゃないか」って言ってくれます。二人が言うなら大丈夫かな?
ちょっと気になりながら、次にお兄ちゃん達のを作って。うん、なんとかプレゼントを用意することができました。
僕もルリも、セバスチャンさんにギュッと抱きついて、それからしっかりありがとうをしました。セバスチャンさん、とってもニコニコしていたよ。
今日はもう遅いから、プレゼントは明日の朝ご飯を食べてから渡すことにしました。
僕達はニコニコのまま、残りの花を持って部屋の一角に作ってもらった秘密基地に行きました。
セバスチャンさんは、他のお仕事があるみたいで部屋から出て行くみたいです。
「すまなかったな、時間をとらせて」
「いいえ、スノーラ様。おかげさまで楽しい時間を過ごすことができました。エイデン様やレオナルド様が小さい時を思い出し、それもまた懐かしく……また何かあればいつでもお呼びください」
僕達は最後にもう一度秘密基地から顔を出して、セバスチャンさんにありがとうをしてから、すぐに引っ込みます。
これからまだやることがあるんだよ。
僕達がこれからやりたいこと。それは秘密基地をもっとカッコよくすることです。
この秘密基地は、何日か前に作ったばっかりなんだ。
森にいた時、僕達の遊び場所は、洞窟の奥に作った秘密基地でした。でもこの部屋には、そんなスペースはありません。
でも、ちょっと前に、本棚と部屋の隅っこの間が開いていたのを見つけたんだ。だから、そこに上手に秘密基地ができないかなって。
そう考えた僕は、まずはその隙間でゴロゴロできるか、それから宝物の箱を置いても余裕があるかの確認。
ルリを呼んで二人でゴロゴロしても、何も問題はありませんでした。
次は宝物の箱。スノーラに僕達が寝ている状態で置いてもらって、それからお兄ちゃんに貰った、馬車のおもちゃと剣も置いてみてもらいました。
これも大丈夫で、もし家とかお庭、森を探検、冒険して何か見つけてきても、それを置く余裕もあったよ。
確認が終わったら、壁とか屋根とかを作るか考えました。
森にいた時は、傘の代わりにできる大きな葉っぱを使ってたんだけど。それをちゃんと茎がついている状態で何枚か持ってきているから、それで屋根を作ってもいいし。
段ボールみたいなものを立てて、その上から毛布をかけてみるとかでもいいかも。でも、段ボールみたいなものがこの世界にあるのかな?
僕はスノーラになんとか説明して、壁のことを聞いてみました。そして話を聞いたスノーラは、ちょっと待ってろってどこかへ。
少しして戻ってきたスノーラの手には、板みたいなものがありました。
触ったら段ボールみたいだったんだけど、木の皮なんだって。色々な形に曲げられて、何回でも作り変えることができる不思議な板でした。
スノーラがやってみるぞって、板を半分に折ります。
それでちゃんと折れているか確認したら、元に戻して、折ったところを手でぐいぐい押すスノーラ。
そうしたら折ったところが真っ平らに戻って、跡が全然残っていませんでした。またまた別のところを折るけど、それもまた完璧に元に戻ります。
「聞いたら執事のケビンが用意してくれた。それからローレンスにも、秘密基地を作っていいか聞いてきたが、好きに作っていいそうだ」
そっか、部屋を借りているんだもん、勝手に作っちゃダメだよね。でもスノーラが聞いてきてくれたからよかった!
僕とルリは、すぐに秘密基地を作り始めました。といっても、まず板を折ってそれを立てて、部屋の端っこを囲んだだけだけどね。でもこう、角度とか本棚にぶつからないようにとか、難しいところもありました。
なんとか板を立てたら、次は屋根を作ります。
あっ、入口はね、スノーラが風の魔法で板を綺麗に切ってくれて、ドアみたいに作ってくれたよ。ルリ用の小さいドアも作ってくれました。
「しゅのー、おおきはっぱ、だちて」
『アレくっ付けてお屋根にする。いっぱい持ってきたから大丈夫でしょ?』
「ああ、アレか。よし、今出してやる」
すぐに傘みたいな葉っぱを出してくれたスノーラ。
屋根は作るのが難しくて、スノーラが一緒に作ってくれました。僕達が葉っぱを持って、スノーラが板に茎を刺します。
あのね、この葉っぱの茎は簡単に裂けるんだけど、とっても固いから、板に刺すことができたんだ。それでしっかり差し込んだら、僕達が怪我をしないように、スノーラが余分な茎を切り落としてくれました。
「これでどうだ? 三枚でちょうど全部が隠れる。中に入って確認してみろ」
そう言われて、すぐに中に入る僕達。
隙間からちょうど光が入ってくるから、ちゃんと中が見えます。でも夜だとちょっと暗いかも?
それを伝えたら、スノーラはローレンスさんに聞きに行って、ライトを貰ってきてくれました。夜にはそれもセットしたんだ。
秘密基地が出来上がった僕達は、『やった~!!』のシャキーンッ!! のポーズ。それからすぐに宝物の箱を持って中に入って、ソファーの所に置いてあった、小さなクッションも二個入れました。持ってきても、まだ五個ソファーにあるから大丈夫。
それから、スノーラに少し他のおもちゃを出してもらったら、秘密基地の中も完璧に。
僕達は基地の中でもう一回シャキーンッ!! のポーズ。
こうして一応、秘密基地が完成したのが数日前のこと。
その秘密基地に、僕とルリは花を飾りました。
それでスノーラに寝る時間だぞって言われたから、おやすみなさいをして秘密基地から出ました。
誰におやすみなさいを言ったかっていうと、森で見つけて持ってきた卵です。
僕やルリ、スノーラがお屋敷にいない時はスノーラがしまって。いる時は、明るい時は窓の所に置いて、夜になったら秘密基地に置くことにしてるんだ。
ローレンスさんの家に来て少しして、スノーラに出してもらったんだけど、どこに置くかで悩んで、結局その時その時で場所を変えることになりました。
初めて卵を見たローレンスさん達はとっても驚いていて、預かろうかって言ってくれました。
でもダメだよ。卵も僕達の家族だもん、いつも一緒にいなくちゃ。
ローレンスさんもフィオーナさんも、最初のうちはとっても心配していました。毎日卵を見に来るくらいに。
そういえばこの頃は来たり来なかったりだけど。何でそんなに心配なのかな?
そんな卵も置いているから、今、秘密基地の中は物がいっぱいで、かなり充実してきています。
もう少ししたら基地を広げたらどうだってスノーラが言うので、僕達は頷きます。ゴロゴロできなくなっちゃったからね。もう少しゆったりがいいもん。
「今日は楽しかったか?」
「うん!! たのちかっちゃ!」
『ルリ、いっぱいお花見つけた!』
「そうか。よかったな」
魔獣の姿に戻ったスノーラに寄りかかりながら、寝る僕達。
そういえば、お花を探してる時に聞こえたあの声は本当に何だったんだろう? 気のせいだとは思うんだけど、う~ん。
声のことを考えていたんだけど、いつの間にか寝ちゃってました。
次の日の朝、すっきり目覚めます。
朝ご飯を食べてからプレゼントを渡す予定だから、プレゼントの花束を見えないように袋に入れて、二人でズルズル引きずりながら食堂に持っていきます。いや、持っているつもりなんだよ。でもズルズルになっちゃうの。
食堂に着くと、もうローレンスさん達は集まっていました。
「スノーラ、レン、ルリ、おはよう」
「はよごじゃましゅ!」
『おはようございます!!』
「どうしたの? そんなに大きな袋を引きずって?」
「ないちょ!」
『うん、内緒!』
「あら内緒なのね。でも汚れてしまうといけないから、窓の方へ置いておきましょう」
フィオーナさんがニコニコしながら、メイドさんのアンジェさんに、窓の方に袋を持って行くように言います。
さあ、ご飯一生懸命食べなくちゃ。僕達いつも最後だもんね、プレゼントをあげるのに待っていてもらうことになっちゃう。
そして一生懸命食べた僕達の顔は……今日はみんなが笑ったよ。ソースの色合いが独特だとか、模様になっているとかなんとか。急いでスノーラに綺麗にしてもらいます。ベトベトの手に体に顔じゃね。
そして窓の所に置いてもらった袋を、またズルズル引っ張ってくる僕達。
「残ってもらってすまない、レンとルリからちょっとな」
「どうしたのレン、ルリ?」
「えちょ、ぷれじぇんちょ!」
『レンとボク、プレゼント!』
ローレンスさん達は最初、僕達が言っていることが分からなかったみたい。プレゼントって言ったのは分かってもらえたんだけど、なんでプレゼントなのか、その説明がね、上手くできなかったんだ。
だからスノーラが代わりに説明してくれたよ。
「お前達にプレゼントを貰っただろう。だから今度は自分達がプレゼントをすると」
「本当か!? ありがとなレン! ルリ!」
レオナルドお兄ちゃんはガタッと立ち上がって大喜び。エイデンお兄ちゃんは、「すぐに部屋を片付けなくちゃ」とか「専用の部屋がいるんじゃない?」とか言ってました。そんな部屋を作るほどのことじゃないのに。
ローレンスさんとフィオーナさんも部屋に飾る場所を用意しろとか、まだプレゼント渡してないのに、大騒ぎになっていたよ。
スノーラにみんなを落ち着かせてもらって、一つずつ順番に渡していきます。
まずはローレンスさんの所へ。袋から花束を出して、二人で一緒に渡します。ローレンスさん、受け取った時少し涙目だったよ。そんなに?
それで次はフィオーナさん、その次はエイデンお兄ちゃんで、最後がレオナルドお兄ちゃんです。
「旦那様、包装もリボンもレン様方がおやりに」
「セバスチャン、そうなのか!! こんなに上手に凄いじゃないか!」
「それにちゃんと私達の好きな色にしてくれたのね。ありがとうレン、ルリちゃん」
みんなが順番に僕達を抱きしめてくれます。よかった、みんな喜んでくれたよ。
ローレンスさんは仕事をするお部屋に、フィオーナさん達は自分の部屋に飾ってくれるみたい。後でドライフラワーにするって。それから包装紙もリボンも、大切な物だって、綺麗に解いてしまってくれました。僕もこの前貰ったプレゼントはそうしたから、一緒だね!
また何かプレゼントできたらいいなぁ。今度はいつ依頼を受けに行けるかな? 昨日はあの酔っ払いのおかげで、ちょっとしょぼんりもあったし、次は全部が楽しいといいなぁ。
「――あっ、そうだ父さん。僕達、裏の今使ってない小屋使っていい?」
「昨日の話か?」
「うん、ちょっとあの酔っ払いと話をしようかと思って」
「使ってもいいが、あまりやりすぎるなよ」
「ちゃんと僕達の話を理解してくれたら、すぐに帰すよ」
「さて、ちゃんと話、分かってくれるかなぁ」
◇ ◇ ◇
プレゼントを渡せて、ニコニコのレンとルリ。二人はそのまま、兄達と遊ぶと部屋を出て行こうとしたのだが、我、スノーラはそれを急いで止めた。
昨日のことでレンに聞きたいことがあったのだ。
昨日レン達が寝た後、ローレンス達から話があると執事のケビンが我を呼びに来た。二人がしっかりと寝ていることを確認した我は、すぐにローレンスの所へ。
行くと皆が揃っていて、何があったのかと思えば、今日のレンとルリの依頼で、色々と問題が発生したそうだ。しかももしかしたら今回の事件に関係があるかもしれないと言うのだ。
どうやらレンは、依頼をこなしている最中で、周りには誰もいなかったにもかかわらず、誰かに声をかけながらウロウロと歩き始めたらしい。エイデン達が話しかけても反応を示さず、しばらくして元に戻ったが、エイデン達には聞こえない声が聞こえていたようだ。
そしてその次に、今度はレン達が自らやらかした。絡まれていた家族を助けようとして、冒険者に対して連携攻撃をしたというのだ。
ため息しか出なかった。怪我がなく本当によかったものの……エイデン達もレン達を叱ったらしいが、我からもしっかりと言わなければ。
まったく、我のいない所で危険なことはやめてくれ。
とりあえず、今目の前で遊びたいのにとブーブー言っているレン達に、まずは声のことを聞かなければ。
悪いが大事なことだからな、とりあえず現場に行って確かめた方がいいか?
◇ ◇ ◇
今、僕達は、昨日花を摘みに来た場所に来ています。
ローレンスさんとお兄ちゃん達、それからケビンさんとセバスチャンさんも一緒。何で同じ場所に来たかっていうと、昨日のことをスノーラにお話しするためです。
「それで、声が聞こえた場所はこの辺りか? ……何も感じないな。街全体を包んでいる変な気配は相変わらずだが」
「そうか。だが、もしレンの聞いた声が本当ならば……」
「夜の暗闇に紛れれば、さらに深く調べられるはずだが、とりあえず今から少し調べてくる」
スノーラはローランスさんとそんな話をすると、どこかへ行っちゃいました。
もし何か変わったこと、変に感じたこと、声が聞こえたら、すぐにお兄ちゃん達に伝えろだって。
それからローレンスさん達も近くの調査をするみたいなので、とりあえず僕達は、依頼をやることにします。
せっかく街の外に出るからって、ここに来る前にパパッと冒険者ギルドに寄って依頼を選んできたんだ。ローレンスさんもここに来る前に、ギルドマスターのダイルさんにお話があったみたいだから、ちょうどよかったの。
今日の依頼は、薬に使う薬草を集める依頼です。
ちょっと臭い草で、色は緑じゃなくて青色なんだ。触ると手が臭くなっちゃうから、軍手みたいなものをつけて取るんだよ。まとまって塊で生えているから、その塊を十個取ってくるっていう依頼です。
お昼ご飯までに、草はちゃんと十個見つけたよ。でも今日は、声は聞こえませんでした。
冒険者ギルドに行って、昨日はリボンを貰ったから、今日はメダルを貰います。
そうそう、依頼失敗の時は、残念賞で飴を貰うって、お兄ちゃんに教えてもらいました。失敗しても何か貰えるのは何かいいよね。
それで僕達はお家に帰って、スノーラは夕方帰ってきました。
何も見つけられなかったみたい。でも僕達が寝たら、夜の街を調べに行くって言ってました。
そして夜中。
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