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310無事だったフーリと、無意識のフーリの新しい光魔法

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 我が格子状の入れ物に向かって軽く手を振ると、パキパキッ!と音を立てて、丸い感じに格子状の枠が壊れた。ふむ、フーリの方へ破片は飛ばなかったようで安心した。
 
 格子状の入れ物が壊れると、そっとそっとフーリがこちらへ近づいて来る。そして入れ物から出る前に、こちらの様子を確認すると、小さな小さな声で。

『ありがとう』

 と。もし今風でも吹けば、まったく聞こえなくなってしまう程の、とても小さい声だった。だが、きちんとお礼を言い、そして言い終わるとすぐに、ブローの方へと飛んで行き、ブローに抱きついた。

『ブロー!! ブロー!!』

『フーリ、良かった!!』
 
『ブローも怪我してない? あいつらブローだけが必要だって、変な魔法をブローに使ってたでしょう?』

『僕は大丈夫だよ! みんなに助けてもらったから。えと、1番はレンに助けてもらったの!』

『レン?』

 本当は久々の再会で、しかもこれだけ大変な事があってからの再会だからな。ゆっくり色々と、話しをさせてやりたいが、まだまだやる事は残っている。それに早くレン達の元へ戻らなくては。怪我をしていれば回復魔法をかけてから、とも思っていたが、それも大丈夫なようだ。

 2人の話しに入り、取り敢えず奴らを連れて戻ってから、ゆっくり話しをしようと言えば、すぐにブローがフーリを連れて、我の服のポケットに入って来た。フーリはやはりまだ我を警戒していたが、ブローがグイグイとフーリを押して、少々無理やりにポケットへ。

 おそらくいつもこんな感じなのだろう。 怖がりのフーリに、グイグイ行くブロー。正反対の2人だが、それでもこれまでずっと一緒にやってきた。それだけ深い絆で結ばれている2人が、永遠の別れをせずに済んで、本当に良かった。

 さて、2人がポケットに入ったのを確認すると、我はエンとカースの元へと移動する。相変わらず喚いているジャガルドと、呻いているやつの仲間。

『何か聞けたか?』

『ふん、離せとしか言わんは。そんな事、我らがするはずもなかろうに。まったく煩くて敵わん』

『ねぇ、どうやって連れて行く? 考えたらさ、引っ張って連れて行くのは良いけど、その道具を用意してなかったよね』

『そうだな…。ブロー、フーリと話しはできるか? 我等とは初めて会ったからな、まだ警戒して話せないと言うならば、お前を介してでも良いのだが』

『フーリ、お話しできる?』

『…ポケットに入ったままで良い?』

 完璧にポケットに潜っているフーリの声が、小さく聞こえてきた。

『ああ、それで構わない。まず、フーリ、この光魔法だが…』

 我が話し始めた時だった。またジャガルドが離せ、そいつをよこせと騒ぎ出し。良い加減鬱陶しくなったエンが、奴の口周りに闇魔法を纏いつかせ、声が出ないようにした。これ以上何か質問しても、どうせ答えないだろうからな。これで良いだろう。

 ついでに周りで呻いて煩い仲間達を、再度気絶させようして魔法を使おうと、手を挙げたカースだったがその場で止まり、やはりやめたと。どうしたのか聞けば、これからどうやって連れて帰るか知らないけど、その連れて行き方によって気絶させる、と言ってきた。

 そしてこうも。引っ張りながら、奴らに負荷を与えながら帰るのなら、奴等の意識があった方が良いに決まっている。我等もその方が、少しは鬱憤が晴れるだろうと。そうだ、意識がなければ、いくら痛めつけても意味がないからな。

 それを聞いてからすぐに我は、フーリとの会話を再会する。もしフーリが、ジャガルドをグルグル巻きにした光魔法を、すぐにまた使えるのであれば、さらにジャガルド達をしっかりと巻いてもらう。
 それから巻く分としてではなく、光の縄を長めに余分に出してもらい、その光の縄を引っ張りながら帰れば良い、そう思ったので。

 もちろんそのままの状態で、我らの移動スピードで結界も張らずに移動すれば、奴等は体がバラバラになってしまうだろう。だから奴等がバラバラにならない、しかししっかりと奴等が苦しむくらいの、最低限の結界を張り移動すれば。それが1番良いのではと思った。

『この光の魔法は、お前がやったもので間違いないな』

『…うん、たぶん』

『たぶん?』

『何でも消しちゃう光魔法やって、ボク、ブロー消しちゃったと思ったの』

 あの時フーリは、入れ物に布を被された状態で、外の状況がイマイチ分からなかったが。それでもブローの声を聞き、一気に緊張の糸がきれ、自分でもどうする事もできないまま、魔力が爆発してしまった。

 ブローはこの光の魔法を知っていたから、逃げてくれている。そう思いながらも、もしブローが自分の魔法で消えてしまったらと、どうする事もできないまま、今度はその事で震えていたらしい。

 そして光の魔法が収まってくると、またブローの声が聞こえ、ホッとしたフーリ。だがその時またジャガルドの声が。と、それでまた少々パニックになったようだ。
 がそのパニックは、フーリ自身がまたジャガルドに捕まってしまい、苦しめられるのでは、ということに関してのパニックではなく。ブローが捕まってしまうのでは、という方のパニックで。
 
 そんなのは絶対にダメだ。コレイション達に捕まってから別れさせられ、今どうしてここにブローがいるか分からないが、ブローに何かするのは許さない。
 そう思った時、それは起こった。ジャガルドがいる方角はなんとなく分かっていたが、そのジャガルドに向かって、光が勝手に進んでいったと。そしてその光が渦巻くような感じがして。後で外に出てきて見てみれば、ジャガルドに光が巻き付いていた後だった。

 そう、あのジャガルドをグルグル巻きにした光魔法は、完全に無意識でやったものだったのだ。
 ポケットから顔だけ出しているブローの隣に、少しだけフーリが出てくる。そしてジャガルドを見ると、光の魔法がこう動いて、こうグルグルってなってと、あの時のことをこう身振り手振りで伝えてきた。
 
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