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第1章 パーティー結成編

9、パーティー結成

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 昼食と話を終えた俺たちは、街の中に戻ってきた。まずはパーティー登録をしようと冒険者ギルドに向かっている。

「そういえば、フィーネは何ランクなんだ?」
「私は個人でDだよ。昇格試験が面倒であまり受けてなくて。でも高ランクの方が色々と融通が効いたりするから、そろそろ上げようかなと思ってるところ」
「じゃあ直近の目標はギルドランクを上げることにするか」
「そうだね~。まだこの街には数週間しかいないし、もうしばらくはここに滞在してランクを上げるのも良いかも。でもさ、どうせならパーティーランクを上げない?」

 個人のランクとは別にパーティーにもランクが付いて、それはパーティー単位で昇格試験を受けるのだ。だからそっちなら、俺でもランクアップできる可能性がある。

「そうしてもらえるとありがたいな」
「了解。どうせこれからは個人で依頼を受けることなんてないもんね。パーティーでAランクを目指しちゃう?」

 フィーネが冗談のように発したその言葉に、俺はさすがに無謀だと笑い飛ばしそうになって、しかし寸前で笑いを引っ込めた。

「……もしかして、本当にAランクも目指せたりする?」

 神獣であるリルンとラトの力があれば不可能じゃないのかもと思ってそう聞くと、フィーネは顎に手を当てて少しだけ悩んでから頷いた。

「戦闘能力という点ではいけるかも。でも昇格試験って純粋な力だけじゃなくて、いろんな知識とかも問われるでしょ? 素材採取の試験もあるし……あっ、でもそれはエリクが詳しいか」
「ああ、素材に関しては人より詳しいはず」
「……それなら、Aランクも夢じゃないのかも」

 フィーネがポツリと呟いた言葉に信じられない気持ちになりながら、それを否定する材料を俺は持っていない。
 今更だけど、本当に凄い仲間ができたよな。

「目標は高く、Aランクも目指してみるか」
「そうだね」

 フィーネが楽しそうな笑みを浮かべて頷いたところで、俺たちは冒険者ギルドに到着した。ギルドはテイムされた魔物も一緒に入ることができるので、全員で中に入る。

「エリクさん、ご無事で良かったです」

 中に入って受付に向かうと、俺の冒険者登録をしてくれた女性が安心したような笑みを浮かべて声をかけてくれた。
 心配してくれてたなんて、本当にいい人だな。

「ご心配をおかけしました」
「いえ、受注された依頼は達成されましたか?」
「はい。ヒール草を十本です」

 依頼票と共に変質後のヒール草をカウンターに載せると、女性は丁寧な手付きでそれを受け取った。

「ありがとうございます。……これはとても質の良いヒール草ですね。依頼は問題なく達成です」

 そこまで確認をして顔を上げたところで、女性はフィーネが偶然居合わせた冒険者じゃなく、俺の連れだということに気づいたらしい。居住まいを正してフィーネに視線を向けた。

「申し訳ございません。エリクさんのご友人でしょうか? 何かご用件がおありでしたらお聞きしますが……」
「あっ、とりあえずは大丈夫です。でもこの後にパーティー登録をお願いしたいです」
「……エリクさんとでしょうか?」
「はい」

 俺とパーティー登録をするというフィーネの言葉に、女性の表情はあからさまに明るくなった。
 リルンとラトを見ればフィーネがテイマーだということは明白だし、特にリルンは外見からも強そうな魔物に見える。そんな魔物を従えているテイマーと仲間になれば、俺の安全が保障されると思ったのだろう。

「かしこまりました。ではさっそくパーティー登録の準備もいたします」

 女性は俺の依頼票とヒール草を手にし、軽い足取りで後ろに下がっていった。その様子を見て少し複雑な気分になるけど、俺が弱くてフィーネと仲間になることで安全を確保できるのは紛れもない事実なので、何も反論できることはない。

「知り合いなの?」
「今日の午前中に冒険者登録をしてくれた人なんだ。その時に弱そうな俺をかなり心配してくれてたから、フィーネと一緒で安心したんだと思う」
「ああ~…………」

 フィーネは俺の頭から足先までを順に見つめて、納得するように何度か頷いた。

「確かにエリクは、お世辞にも強そうとは言えないかな」
「……自分でも分かってる」
「ふふっ、でも仕方ないよね。これから鍛えれば良いよ。リルンに相手してもらう?」
『我が鍛えてやろうか?』

 リルンはキラッと瞳を輝かせて楽しげな表情だ。めちゃくちゃ扱かれそうだけど……そのぐらいやらないと強くなれないよな。

「お手柔らかにお願いします」

 俺がリルンにそう伝えて話が一段落したところで、女性が書類を手にして戻ってきた。

「お待たせいたしました。こちらにご記入をお願いいたします」

 それからいくつかの手続きを済ませると、パーティー登録は無事に完了した。Fランクのパーティーカードを受け取ると、そこにはフィーネの名前も印字されている。

「なんか嬉しいね。一人は気楽で良かったけど、やっぱりちょっと寂しかったから」
「俺も嬉しいよ。ずっと一緒にいる人がいるって安心するんだな」

 物心ついた頃から孤児院にいた俺は、友達や知り合いは多いけどずっと一人だった。誰かと一緒に行動するなんて初めてだ。

 俺とフィーネは顔を見合わせ、同時に笑い合う。まだ知り合って数時間なのに、何故か波長が合うんだよな。

 それから俺たちは採取した素材などを売却して、冒険者ギルドを後にした。

「この後はどうする? エリクって今夜寝る場所も決まってないんだよね?」
「ああ、錬金工房で暮らしてたからな」
「じゃあ私が泊まってる宿に行く? 冒険者が中心だから、当日でも泊まれたはずだよ」
「本当か! それは凄くありがたい」
「じゃあ案内するね」

 行き先を決めた俺たちは、足取り軽く賑やかな大通りを先に進んだ。
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