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第3章 黒山編
85、説明と休息
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リグルさんの躊躇いながらの質問に、アルフさんは嫌な記憶を思い出したのか僅かに顔を顰めながらも、深呼吸をすると静かな声で語った。
「――ここには、流れ着いたんだ。信じられない規模のサンダーフィッシュの群れに襲われて、運良くここにいる数人だけが生き残り、身一つで流れ着いた。しかし船を失い食料なども全て流され、途方に暮れていた」
サンダーフィッシュの群れ……!
アルフさんたちも、俺たちと同じ群れに襲われたってことか。あのサンダーフィッシュの群れ、あらかた討伐しておいて良かったな。
あの群れによってまた被害が出る可能性は、現状では低いだろう。
「……こんなことは聞きたくないんだが、リグルたちはこの島に、私たちを捜索するために寄ったのか?」
アルフさんは辛い現実も受け入れると覚悟しているような、強い瞳でそう聞いた。
確かに海で遭難した人を探すのに、小さな島に上陸して森の中まで捜索するなんて普通はあり得ない。俺たちも遭難者だと考える方が自然だろう。
「いえ、実は嵐に遭遇して、船がダメになり……」
リグルさんのその答えに、アルフさんは視線を下げて「ふぅ」と息を吐いた。その瞳には落胆の色が滲んでいるが、それを表に出さないよう必死に耐えているようだ。
「そうか。では、リグルたちも流れ着いたのだな」
「……そのようなものです。ただエリクさんとフィーネさんの話では、大陸に帰る手段はあると」
「っ!? そ、それは本当か!?」
続いたリグルさんの言葉を聞いたアルフさんは、ガバッと勢いよく顔を上げて叫んだ。さらに他のアルフさんの船員の人たちも、突然現れた希望に瞳を見開いている。
「お、俺たち帰れるのか?」
「本当か……?」
「た、多分。ですよねエリクさん、フィーネさん」
リグルさんからの問いかけには、フィーネが笑顔で答えた。
「はい。帰ることはできるので安心してください。ただそのためには私の従魔たちの協力が不可欠で……この子たちは特殊個体で特別な力を持ってるんです。それを見ても、他言無用を守っていただけますか?」
その問いかけに、アルフさんたちは悩むことなくすぐに頷く。
「もちろんだ。恩人の不利益になるようなことをするはずがない」
「俺もだ。絶対に秘密にする」
「言うわけがない」
「ありがとうございます。ではもう少し休んでから、この島を出ることにしましょう。ただ大陸へ戻るためには準備が必要なので、それまで……アルフさんたちは寝ていてください。体力がないと難しいですから」
死にそうな目にあった植物船を思い出したのだろうフィーネは、妙に力の籠った口調で寝ているようにと伝えた。しかしアルフさんたちは躊躇いを見せる。
知らない小島で、しかも野外で眠りにつくなんて抵抗があるのは当然だろう。休息が大切だと分かっていても、眠りにつけない時はある。
でも本当に、万全の体調に近づいてないと厳しい可能性があるからな……そうだ、あれを作ってもらえばいいんじゃないか?
俺は頭の中に一つの案が思い浮かび、すぐデュラ爺に声を掛けた。
「デュラ爺、前に使ってくれたみたいなベッドを植物で作れないか? ハンモックみたいなやつ」
咄嗟の思いつきだったが、デュラ爺は鷹揚に頷いてくれる。
『もちろん作れるぞ。少し待っておれ』
それから立ち上がって周囲の植物の様子を確認したデュラ爺は、すぐに植物魔法を発動させた。いくつもの植物が意思を持ったように動き始め、複雑に絡み合っていく。
そしてすぐに、屋根付きのハンモックが複数つくらた、
アルフさんたちは驚きに目を丸くしながらも、寝心地が良さそうなハンモックに引き寄せられていく。
「凄いな……特殊個体はこんなこともできるのか。これを使っていいのか?」
「どうぞ、使ってください」
フィーネが笑顔で勧めると、アルフさんはやっと休むことを決意したのか、ハンモックに横になった。そしてリグルさんに対して出発前に起こしてくれと伝えると――すぐ眠りに落ちてしまう。
他の船員たちもアルフさんに続き皆が横になり、夢の世界に向かった。気力で起きていただけで、体は限界だったのだろう。
半日ぐらいは寝てもらったほうがいいかもしれないな。
「リグルさんたちも休んでいてください。私たちは準備を進めますね」
フィーネが笑顔で声をかけると、リグルさんたちは少しだけ申し訳なさそうな表情をしつつも、素直に頷いた。
「ありがとうございます。お言葉に甘えさせてもらいます」
「はい。私たちも近くにいるので安心してください」
そうして俺たち以外の皆が眠りについたり、寝ていなくとも本格的な休憩に入ったところで、俺たちはその場から少しだけ離れた。
ここからは植物船造りだ。
「――ここには、流れ着いたんだ。信じられない規模のサンダーフィッシュの群れに襲われて、運良くここにいる数人だけが生き残り、身一つで流れ着いた。しかし船を失い食料なども全て流され、途方に暮れていた」
サンダーフィッシュの群れ……!
アルフさんたちも、俺たちと同じ群れに襲われたってことか。あのサンダーフィッシュの群れ、あらかた討伐しておいて良かったな。
あの群れによってまた被害が出る可能性は、現状では低いだろう。
「……こんなことは聞きたくないんだが、リグルたちはこの島に、私たちを捜索するために寄ったのか?」
アルフさんは辛い現実も受け入れると覚悟しているような、強い瞳でそう聞いた。
確かに海で遭難した人を探すのに、小さな島に上陸して森の中まで捜索するなんて普通はあり得ない。俺たちも遭難者だと考える方が自然だろう。
「いえ、実は嵐に遭遇して、船がダメになり……」
リグルさんのその答えに、アルフさんは視線を下げて「ふぅ」と息を吐いた。その瞳には落胆の色が滲んでいるが、それを表に出さないよう必死に耐えているようだ。
「そうか。では、リグルたちも流れ着いたのだな」
「……そのようなものです。ただエリクさんとフィーネさんの話では、大陸に帰る手段はあると」
「っ!? そ、それは本当か!?」
続いたリグルさんの言葉を聞いたアルフさんは、ガバッと勢いよく顔を上げて叫んだ。さらに他のアルフさんの船員の人たちも、突然現れた希望に瞳を見開いている。
「お、俺たち帰れるのか?」
「本当か……?」
「た、多分。ですよねエリクさん、フィーネさん」
リグルさんからの問いかけには、フィーネが笑顔で答えた。
「はい。帰ることはできるので安心してください。ただそのためには私の従魔たちの協力が不可欠で……この子たちは特殊個体で特別な力を持ってるんです。それを見ても、他言無用を守っていただけますか?」
その問いかけに、アルフさんたちは悩むことなくすぐに頷く。
「もちろんだ。恩人の不利益になるようなことをするはずがない」
「俺もだ。絶対に秘密にする」
「言うわけがない」
「ありがとうございます。ではもう少し休んでから、この島を出ることにしましょう。ただ大陸へ戻るためには準備が必要なので、それまで……アルフさんたちは寝ていてください。体力がないと難しいですから」
死にそうな目にあった植物船を思い出したのだろうフィーネは、妙に力の籠った口調で寝ているようにと伝えた。しかしアルフさんたちは躊躇いを見せる。
知らない小島で、しかも野外で眠りにつくなんて抵抗があるのは当然だろう。休息が大切だと分かっていても、眠りにつけない時はある。
でも本当に、万全の体調に近づいてないと厳しい可能性があるからな……そうだ、あれを作ってもらえばいいんじゃないか?
俺は頭の中に一つの案が思い浮かび、すぐデュラ爺に声を掛けた。
「デュラ爺、前に使ってくれたみたいなベッドを植物で作れないか? ハンモックみたいなやつ」
咄嗟の思いつきだったが、デュラ爺は鷹揚に頷いてくれる。
『もちろん作れるぞ。少し待っておれ』
それから立ち上がって周囲の植物の様子を確認したデュラ爺は、すぐに植物魔法を発動させた。いくつもの植物が意思を持ったように動き始め、複雑に絡み合っていく。
そしてすぐに、屋根付きのハンモックが複数つくらた、
アルフさんたちは驚きに目を丸くしながらも、寝心地が良さそうなハンモックに引き寄せられていく。
「凄いな……特殊個体はこんなこともできるのか。これを使っていいのか?」
「どうぞ、使ってください」
フィーネが笑顔で勧めると、アルフさんはやっと休むことを決意したのか、ハンモックに横になった。そしてリグルさんに対して出発前に起こしてくれと伝えると――すぐ眠りに落ちてしまう。
他の船員たちもアルフさんに続き皆が横になり、夢の世界に向かった。気力で起きていただけで、体は限界だったのだろう。
半日ぐらいは寝てもらったほうがいいかもしれないな。
「リグルさんたちも休んでいてください。私たちは準備を進めますね」
フィーネが笑顔で声をかけると、リグルさんたちは少しだけ申し訳なさそうな表情をしつつも、素直に頷いた。
「ありがとうございます。お言葉に甘えさせてもらいます」
「はい。私たちも近くにいるので安心してください」
そうして俺たち以外の皆が眠りについたり、寝ていなくとも本格的な休憩に入ったところで、俺たちはその場から少しだけ離れた。
ここからは植物船造りだ。
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