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2巻
2-1
◆◇◆◇第一章:トーヤ、オークションを見守る◇◆◇◆
日本で社畜として過ごしていた男性――佐鳥冬夜は子供を助けるため、トラックに轢かれて死んでしまった。
しかし、その死は女神のミスから起きた不幸な事故だったため、冬夜は女神が管理する異世界――スフィアイズへの転生を約束される。
その際、お詫びとして、女神から世界の全てを見極められる『叡智の瞳』というスキルを与えると言われた冬夜。
しかし彼はファンタジーに関する知識がほとんどなく、そのスキルの価値が分からなかった。
真面目な冬夜は「楽をして何かを成すことになんの意味があるのか」と言い、初級の鑑定系スキルである『鑑定眼』が欲しいと主張した。
両者の主張はぶつかり、最終的には女神の我儘で、段階を踏めば進化していく特殊な鑑定眼が冬夜には与えられることに。
そして彼は異世界であるスフィアイズへの転生を果たした。
少年として転生した冬夜は、スフィアイズでの名前を『トーヤ』とし、山の中で出会った冒険者パーティ『瞬光』のダイン、ヴァッシュ、ミリカに助けられ、ラクセーナという都市へ辿り着く。
そこで鑑定士という職を手にしたトーヤは、頼れる先輩のフェリやリリアーナ、商業ギルドのギルドマスターであるジェンナに助けられながら、社畜らしく仕事をこなしていく。
また、祖父に似た印象のある、なんでも屋の主人ブロンや、フェリの弟であり、同年代でもあるアグリと出会い、どんどんスフィアイズでの生活を充実させていった。
そんな矢先、トーヤは魔獣の捜索依頼で、ラクセーナに危害を加えるかもしれない魔獣――フレイムドラゴンの幼竜と対峙することとなる。
フレイムドラゴンの幼竜は最初暴れていたが、鑑定眼が進化したスキル『古代眼』を駆使したトーヤがフレイムドラゴンの幼竜の怪我を見抜き、その怪我をポーションで治したことで、なんとか危険は去った。
そうしてラクセーナに帰り、平和を取り戻したトーヤ。
彼の日常が、今日も始まろうとしていた。
◆◇◆◇
ラクセーナの冒険者ギルドでは現在、魔獣の素材や魔導具のオークションが行われていた。
「――一〇万ゼンス!」
「――一五万ゼンスだ!」
「――こっちは三〇万ゼンスよ!!」
冒険者ギルド一階の大きな広間から、人々の声が響く。
オークションは大きな盛り上がりを見せていた。
それは何故か――極めて珍しいフレイムドラゴンの鱗が出品されるとの噂が流れたからである。
そのためラクセーナの冒険者に加え、普段はあまり冒険者ギルドを訪れない商人たちや、ラクセーナの外からやって来た者までオークションに参加しているのだ。
まだフレイムドラゴンの鱗は出品されていないにもかかわらず、人が多く集まったことでオークションは過熱している。
その光景をトーヤと冒険者ギルドのギルドマスター、ギグリオは二階の渡り廊下から眺めていた。
「いやー、今日は人の入りがすごいな!」
「それはそうですが……私はここにいていいのですか? ギグリオさん」
「坊主には下の人混みはかなりキツイだろうから気にするな! 出番が来たらすぐに下に運んでやる!」
どうしてトーヤが冒険者ギルドにいるかというと、今回のオークションに際して、ギグリオから協力を頼まれていたからだ。
オークションに出品されている商品が本物か疑われた場合、古代眼を持つトーヤがその場で鑑定する予定なのである。
また、落札価格が一〇〇万ゼンスを超えたものに関しては、オークションが全て終わったあとに古代眼以上のスキルを持つ鑑定士が証明書を書いて受け渡すという規則があり、トーヤはそのために呼ばれたのだ。
「疑り深い奴らも、古代眼持ちが鑑定したなら納得するしかねぇだろうし、坊主が協力してくれて助かるぜ!」
「うーん、そう簡単にいきますかねぇ」
楽観的なギグリオの言葉を聞き、トーヤは人混みを眺めながら呟いた。
商業ギルドで仕事を始めてからというもの、トーヤは専門職である自分がはっきりと鑑定結果を告げても納得しない人間に、少数ではあるが出会っていた。
また、普段から金銭の駆け引きをしている商人であれば口も回るだろう。そういう人たちに絡まれたらなかなかに厄介なのではないか。そんなことをトーヤは思っていた。
しかし、トーヤの心配を他所に、順調にオークションは進んで行く。
商品が出品されると至るところから声が上がり、値段が段々とつり上がっていっては、落札者が決まる。
そんな流れが続いてしばらくしてから、ついに本日最後の商品が登場した。
今回のオークションのメインと言っても過言ではないだろう。
その商品とは――フレイムドラゴンの成竜が落とした鱗だ。
先日のトーヤの活躍によって幼竜が助かった直後、幼竜の親である成竜が姿を見せた。
成竜は幼竜を助けてくれたお礼として、自らの鱗をいくつか落としていった。
その素材が今回出品されたというわけだ。
「……あれが、フレイムドラゴン、しかも成竜の鱗かよ!」
「すげぇな。鱗だけなのに、なんだか気圧されちまうぞ」
「絶対に競り落としてやるんだから!」
フレイムドラゴンの成竜の鱗が登場した瞬間、多くの声が飛び交った。
盛り上がる人々を横目に、オークションの司会が口を開く。
「それではフレイムドラゴンの成竜の鱗の競売を開始します! 開始価格は――一〇〇〇万ゼンスから!」
「「「「い、一〇〇〇万ゼンスだってええええっ!?」」」」
驚きの声を上げたのは、冒険者たちだった。
一〇〇〇万ゼンスと言えば、一般家庭なら五年は働かずして過ごせる金額である。その日暮らしの多い下位ランクの冒険者が出せる金額ではない。
それどころか、上位ランクの冒険者であってもすぐに用意するのは厳しいだろう。
とはいえ、素材の価値をよく知っている商人からすれば、この金額は破格の安さである。
「さて……これからいくらになるでしょうか」
古代眼のおかげで鱗の価値を知っていたトーヤはそう呟いた。
今回の鱗は多少の欠けがあったため僅かに価値が下がっているが、それでも二〇〇〇万ゼンス程度の価値があると、トーヤの古代眼は示していた。
ここからいくらまで値がつり上がっていくのか、トーヤは少しワクワクしながらオークションの様子を眺める。
「一五〇〇万ゼンス」
「一七〇〇万ゼンス」
「二〇〇〇万ゼンス」
しかしトーヤの予想に反し、ものの数秒で相場に近い金額に達した。
冒険者たちは唖然としたまま、競りに参加している人々を眺めていた。
そしてさらに金額は上がっていく。
落札価格が古代眼が示した額以上になったためトーヤは少し疑問に思うが、競りに参加している人々を見てすぐに納得する。
(彼らはほとんどが商人ですね。彼らはあの鱗を相場より高く売れる独自の販路を持っているか、あるいは素材を加工して付加価値をつけるのでしょう。相場以上で買い取っても利益を出せる自信があるということですね)
トーヤがそんなことを考えていると、商人たちの競りを見つめていたギグリオが呟く。
「……はは。こりゃあ、みんなへの割り振りをもう一回考え直さなきゃならねぇなぁ」
「割り振りとはどういうことでしょうか?」
「成竜の鱗の売り上げは、幼竜の捜索に出た冒険者全員で分けるって話だっただろ?」
「そうですね」
「だがオークションまでは時間があったからな。いったん俺が想定の売り上げ分を立て替えておいたんだ。でも今回の金額を見ると、もっと割り振っていかなきゃいかんなと思ったってことだよ」
苦笑いしながらそう告げるギグリオを横目に、さらに金額は上がっていく。
そして――
「そこまで! 落札価格は――三〇〇〇万ゼンスです!!」
「マジかよ! ここまで伸びるなんてな!」
最終的な金額が決定し、ギグリオは満面の笑みを浮かべていた。
そんなギグリオにトーヤは気になったことを尋ねる。
「これだけ大きな金額の場合、支払いはどのように行われるのでしょうか?」
「ん? 基本的には現金払いだが、一〇〇万ゼンスを超える金額に関しては、銀行を介して支払われるのが一般的だな」
「……ぎ、銀行があるのですか?」
異世界にも銀行があるとは思わず、トーヤは驚きの表情を浮かべた。
しかし、ギグリオは当たり前といった様子で言う。
「そりゃ当然だろう。商業ギルドにいるなら、金の振込とかもしたことがあるんじゃねぇのか?」
「いえ、私はしたことありません。私が普段いる鑑定カウンターで扱うのは安い素材がほとんどですから、現金の手渡し以外はしたことがないですね」
「給料はどうやって貰ってんだよ?」
「こちらも手渡しですね」
ギグリオは驚愕しながらトーヤを見つめる。
「……マジか? 金はどうやって保管してるんだ?」
「今までいただいたお給料はアイ……」
「アイ……って、なんだ?」
「あー……いえ、宿の部屋に隠しているので」
思わず『アイテムボックス』と言いそうになったトーヤはなんとか誤魔化しの言葉を口にした。
トーヤは古代眼とは別に、ありとあらゆる道具を時間の流れない亜空間に収納できる、アイテムボックスというスキルを持っている。
しかしこのスキルは持っている者が少なく、下手に所有者だとバレると余計なトラブルに巻き込まれる可能性がある。
そのためトーヤはアイテムボックスを使えることは隠しているのだ。
幸いなことに、ギグリオは気にせず言葉を続ける。
「はあ? おいおい、不用心だな。盗まれたら堪ったもんじゃねぇぞ?」
「そ、そうですね。あはは、今後注意します」
苦笑いを浮かべながらそう答えたトーヤは、小さく息を吐くと、すぐに表情を引き締め直す。
二人が会話をしているうちにオークションが終わったのだ。
今回のオークションでは先ほどの鱗を始めとして、落札価格が一〇〇万ゼンスを超える商品が数点ある。
トーヤの仕事が始まろうとしていた。
受け渡し用の個室へ移動しながら、トーヤは共にいるギグリオに問い掛ける。
「ちなみに、古代眼持ちの鑑定士がいない場合、商品の受け渡しはどうするのですか?」
「古代眼持ちを別の都市から借りてくるか、オークションの会場を古代眼持ちのいる都市にする必要があるな。そうなると手数料やら何やらを支払わないといけなくなるから、面倒この上ないんだ」
「そうなのですね。勉強になります」
「ラクセーナには古代眼持ちがしばらくいなかったからな。本当に助かるぜ、坊主!」
そんな話をしているうちに、トーヤたちは一階にある個室の中でも一番広い部屋の前に到着した。
「受け渡しにはギグリオさんも同席なさるのですか?」
「あぁ、坊主には買い手の前で証明書を書いてもらう必要があるからな。何もないだろうが、護衛とでも思ってくれ」
もしも相手が難癖をつけてくるようであれば、強面のギグリオに圧を掛けてもらうのもありだななどとトーヤが思っていると、ギグリオが前に出て扉をノックし、そのまま開いた。
「お待たせしました」
「失礼いたします」
ギグリオは堂々と中に入っていき、トーヤも頭を下げながらその後ろに続く。
部屋の中央には大きな四角のテーブルと、それを囲うように椅子が複数置かれており、そこにはフレイムドラゴンの鱗を落札した商人が座っていた。
「お久しぶりでございます、ギグリオ殿。それと……そちらの少年は?」
商人はそう言って怪訝そうにトーヤを見つめた。
ラクセーナに住む人の多くは、商業ギルドの専属鑑定士であるトーヤのことを知っている。
しかし、他の都市の人間からすれば、トーヤは商談の場に似つかわしくない子供にしか見えない。
「彼はこちらが用意した鑑定士ですよ、ガメイさん。フレイムドラゴンの成竜の鱗もこいつが事前に鑑定しています」
商人――ガメイと知り合いのギグリオはそう答えるが、ガメイはお腹を抱えながら大笑いを始める。
「この子供が鑑定士ですか? がははははっ! 面白い冗談ですな、ギグリオ殿!」
「冗談とは?」
「そのような子供が古代眼を持っているですと? とても信じられませんなぁ!」
ニタニタと笑いながらそう口にするさまに、ギグリオは僅かに顔をしかめた。
さらにガメイは続ける。
「古代眼以上のスキルを持つ者が今までいなかったからとはいえ、そのようなどこの馬の骨ともしれない子供を用意するなど……ラクセーナ冒険者ギルドの名が泣いてしまいますぞ?」
大笑いしながらそう口にしたガメイは、彼の後ろに立っていた青年に顔を向ける。
「こいつは私のところで専属鑑定士をしているメダと言いましてなぁ。古代眼持ちでいくつもの都市で雇われてきた、将来有望な鑑定士なのですよ。万が一古代眼持ちがいなかったらと思い連れてきたのですが、正解でしたな」
マウントを取るようなガメイの態度を見ながらも、ギグリオは柔らかな口調で答える。
「ほーう。それはそれは、優秀な鑑定士なのでしょうな」
ここまでのやり取りを、営業スマイルをしたまま聞いていたトーヤは内心で思う。
(どうやらガメイという方は、私が古代眼持ちだとは思っていないようですね。まぁあちらのメダという方も古代眼持ちのようですし、あの方が証明書を書いても問題ないでしょう。向こうの態度は少々気になりますが……)
ガメイとメダの様子を窺いながらトーヤがそんなことを考えていると、冒険者ギルドの職員がフレイムドラゴンの成竜の鱗を運んできた。
三〇〇〇万ゼンスもの価格で落札されたフレイムドラゴンの成竜の鱗がテーブルの上に置かれると、それを見たガメイはニヤリと笑い、右手を挙げてメダに指示を出す。
「鑑定するのだ」
「かしこまりました」
軽く会釈をしながら答えたメダは、フレイムドラゴンの成竜の鱗を凝視する。
その様子を見て、トーヤは首を傾げた。
(……おや? なかなか結果を言いませんね)
トーヤがフレイムドラゴンの成竜の鱗を鑑定した時は、一瞬で鑑定が終了した。
しかし、同じ古代眼持ちを自称しているメダは鑑定に時間を掛けており、それがトーヤには気になった。
そのまま一分ほどが経った後で、メダはようやく口を開く。
「……ガメイ様、少しよろしいでしょうか?」
「うむ、なんだ?」
メダはガメイの耳元に口を寄せると、小声で何かを呟いた。
それを聞いたガメイは驚きの声を上げる。
「……それは本当なのか?」
「はい。間違いないかと」
最後にガメイが確認を取ると、メダはトーヤを横目で睨みながら頷いた。
その後、ガメイは圧を掛けるような低く重い声を響かせる。
「……ギグリオ殿」
「なんでしょうか?」
「我々を舐めておられるのか?」
「どういうことだ?」
その態度を見たギグリオは、相手を気遣うことをやめ、普段と変わらない口調になった。
しかしガメイは怯まず、テーブルに拳を振り下ろしながら、怒声を上げる。
「これがフレイムドラゴンの成竜の鱗だと? 笑わせないでもらいたい! メダが言うには、これは幼竜の鱗とのことではないか! 成竜の鱗と幼竜の鱗では価値が全く違う! 私から金を騙し取ろうという魂胆だな!」
「……はあ? あんた、何を言っているんだ?」
呆れたようにギグリオは言うが、ガメイの口は止まらなかった。
「ドラゴンの素材が貴重だからと言って、我々が見極められないとでも思っていたのか! 甘いな! 一流の商人を舐めるでないぞ!」
(……一流の商人ですか。とてもそうは思えませんが)
トーヤは営業スマイルを張りつけたまま、今もなおこちらを睨んできているメダを見つめる。
すると、ガメイの目線がギグリオからトーヤへ向いた。
「このような子供を鑑定士だと主張しただけでなく、鑑定ミスまで起こすなんて! もしこれを私が成竜の鱗だと言って他所に売ったらどうする! 商人は信用商売だぞ!」
トーヤが古代眼持ちだと知っているギグリオは、メダの鑑定結果が間違っていることが分かっている。
だがこれ以上対応をするのも面倒くさくなったため、ため息交じりに口を開く。
「だったらなんだ? この鱗は買わないってことでいいのか? 俺はそれでもいいぞ」
「わざわざラクセーナまで足を運んだのだ。あなた方のミスを水に流し、この鱗を買ってやってもいい。だが、それには条件がある」
「条件だ?」
完全にこちらが悪いと言わんばかりの態度にギグリオは苛立ちながらも、怒りを爆発させないようなんとか感情を抑えている。
「三〇〇〇万ゼンスで落札したが、これが幼竜の鱗となれば…………一〇〇〇万ゼンス。そちらのミスの分も込めて、これで手を打とうではないか」
相場を考えれば、一〇〇〇万ゼンスではフレイムドラゴンの幼竜の鱗すら買えない。
ニヤリと笑いながら値段を口にしたガメイを見て、トーヤは内心で思う。
(難癖をつけて相手を委縮させ、その後交渉を図ってくる……日本で営業をしていた頃にも、このような方はいましたね。まぁ今回はその難癖が無理やり過ぎますが……)
トーヤがふと隣を見ると、ギグリオの表情が殺気を帯びたものになっていることに気がついた。
このままではギグリオの怒りが爆発すると思ったトーヤは、営業スマイルを浮かべたまま手を上げる。
「……一言よろしいでしょうか?」
「部外者は黙っていろ!」
ガメイは威圧するように言うが、トーヤは落ち着いた口調で続ける。
「私が鑑定した物に文句がつけられているのですから、部外者ではないのでは?」
「商売を知らない小僧は黙っていろということだ! 全く、話の腰を折るな!」
「取引される商品の鑑定結果に不満があるのであれば、鑑定士である私と話をするべきでしょう。そうは思いませんか、メダさん?」
トーヤの堂々とした物言いを聞き、ガメイは態度を変えることなく鼻で笑った。
しかし、一方でメダは動揺したように声を漏らす。
「……な、何が言いたい?」
「私の鑑定結果を否定したのはメダさんでしたね。メダさんはどうしてあの鱗が幼竜の鱗だと思ったのですか?」
トーヤには目の前の鱗が、成竜の鱗であることは分かっている。
それは古代眼で鑑定したからでもあるが、そもそも目の前でフレイムドラゴンの成竜がお礼として落としたのを直接見ているからだ。
感謝の気持ちで渡されたものを、相手が悪意をもって奪おうとしている。
その事実を目の前にして、トーヤもギグリオほどではないが怒りを覚えていた。
トーヤは笑みを浮かべながらメダに近づくと、メダは慌てながら答える。
「そ、そんなもの、古代眼がそう教えてくれたから――」
「ならばお聞きします。古代眼であれば、その物の詳細な鑑定が可能になると思いますが、メダさんも鱗の様々な情報を取得できていますよね?」
「それがなんだ! 私が鑑定結果を聞かせたところで、お前らが商品を偽っていた事実は変わらないだろう!」
「私が古代眼を持っていることを証明しようと思いまして。そうですね……お互いが同時に詳細な鑑定結果を読み上げましょう。古代眼同士であれば、鑑定結果に差が出ることはないはずです。ですよね?」
最後の『ですよね?』には強烈な圧が込められていた。
「そ、それは……」
「いいだろう。付き合ってやれ、メダ」
「ガ、ガメイ様!?」
「なんだ、私の言うことが聞けないというのか? そもそもこんな小僧が古代眼を持っているわけがないんだ。それなら、ボロを出すのは向こうに決まっているだろう!」
ガメイがメダを睨みつけると、メダは不安げにビクッと肩を震わせる。
その様子を見たトーヤは、そもそもメダは鑑定系のスキルすら持っていないのではと感じた。
すると、トーヤが何か言うより先にギグリオが前に出る。
「坊主が面倒を引き受ける必要はねぇよ」
ギグリオの大きな手が、トーヤの頭をガシガシと撫でた。
「ったく、あの人の言う通りになりやがったなぁ」
そう口にしたギグリオは、小さく息を吐き出した。
その後、鋭い眼光でガメイを睨みつける。
「な、なんだ? 脅して無理やり買い取らせるつもりか!」
「脅すも何も、交渉決裂だ。あんたらにフレイムドラゴンの成竜の鱗は売らん」
「ふざけるな!」
「ふざけてんのはどっちだ? あぁん?」
椅子から立ち上がろうとしたガメイを、ギグリオがドスの利いた声で威圧する。
浮きかけていた腰が動きを止め、ガメイは椅子に座り直した。
ギグリオは厳しい声で続ける。
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