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十三皿目 ラブリーキングに清き一票

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 そんな俺の隣にいつ間にやら完全復活し、むしろ勝ち誇った笑みを浮かべているアゼルが降り立った。

 ニヤニヤと笑うアゼルは、第一形態のノーマルアゼルに戻っている。

「もうベコベコメンタルは治ったのか? アゼル。このカオスを終息させてほしいんだが」
「フンッ、誰に言ってやがんだ。自分の部屋くらい一瞬で制圧してやる。まず、俺はメンタルベコベコになんかなっちゃいないぜ? 無敵だ。なんてったって、世界一かわいい魔王だからな? ふふん、ふふふん」
「…………お前は本当にかわいい男だなぁ」
 ガンッ。

 わかりやすく喜んでいるアゼルにしみじみとかわいさを噛みしめると、彼は無言でテラスを蹴った。

 かっこいいんだと言い張っていたのに、かわいいでも照れるのか。

 アゼルは一連の騒動で、かわいいが褒め言葉になったみたいだな。
 なんだか微笑ましい。

 夕日で仄かに赤くなるアゼルは、もうすっかりいつも通りのようだ。

 室内のカオスを収束させるため、いざ室内へ。

 仏頂面のままバァンッ! と窓を開け中に入ると、腰に手を当て、一息で一喝する。


「ラブリーキングのお帰りよッ! アンタたち……全員跪いて、アタシをかわいいと崇めなさい?」

「「「え?」」」


 ──……うん、アゼル。
 俺は、終息させてほしいと言ったのであってだな?

 認められて嬉しいあまり、自分のかわいさを知らしめておいでとは、言っていないんだぞ。

「今日のディナーまでには、片付くだろうか……」

 ご機嫌麗しいアゼルが新たな爆弾を投下して惨劇側に加わってしまい、うーんと顎に手を当て、悩むしかない俺だった。



 ──余談だが。アゼルのチームはリーダーが退場したにもかかわらず、トップに輝いたようだ。

 個人点もトップだったらしいアゼルは、俺の世界だけでなく、オカ魔界でもかわいさナンバーワンとなった。

 しかしトロフィーを届けに来たゼオが「シャルは乙女な魔族からクールで抱かれたいって言われてましたよ? 良かったですね」と淡々と報告し、苦笑い。

 俺はスケベ呼ばわりの追い打ちを受け、微妙な心持ちである。

(ちっともクールではないし、抱かれたいと言われても、俺は抱かれないと満足できない男なんだが……)

 かわいさナンバーワンのラブリーキングは抱く側で、それをお姫様抱っこで退場させた俺は、抱かれる側。

 俺のやらしい姿はアゼルだけのもので、夜のアゼルのかっこよさは、俺だけのものだ。

 チグハグな俺たちだが、自慢の旦那さんをかわいいと褒められて、嬉しくないわけではない。

 俺はキュッキュと磨いてから飾り棚の目立つところに、鼻歌交じりにトロフィーを飾ったのだった。


 十三皿目 完食


 (おまけ・巫女さんシャル&女装三人組のお遊び雑誌)






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