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第三部 宰相閣下の婚約者
805 マリオネットの糸の先
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「レイナおねえさま、どうかお掛け下さいませ。私だけがこの場で座しているのは落ち着きません……」
フィルバート、メダルド国王、ミルテ王女という王族三名に加えて宰相位を持つエドヴァルド。
そこに割って入って腰を下ろすなどとんでもないと、ミルテ王女と部屋に残されるまで、私は入り口近くに立っていたのだ。
思ったよりも早く皆が席を外したため、それほど疲れを感じることもなかったのだけれど。
「で、では皆さまがお戻りになるか、テオドル大公殿下がお越しになるまでということで……」
ここでいきなりシャルリーヌの名を出されても、困るのはミルテ王女だ。とりあえず、大公殿下の名前だけを出しておいて、歩を進める。
「テオお祖父様でしたら、きっと立たなくていいと仰いますわ!」
ミルテ王女どころか、ミラン王太子が物心つく前からバリエンダールを行き来する大公殿下は、夫人と共にバリエンダール側からは絶大な信頼を得ているらしいことが、その言動からも読み取れる。
他国だからと、社交界デビュー前であってもきちんと「私」と言っていたにも関わらず、笑顔と共に「テオお祖父様」になっているのがいい証左だ。
「……そうかも知れませんね」
いずれにせよシャルリーヌのことは、大公殿下たちが来てから臨機応変に対応しようと、私も口の端に笑みを乗せながら、ミルテ王女の向かい側に静かに腰を下ろした。
チラリと周囲を見れば、国王陛下の侍従であり、王宮の侍従長でもあるマクシムが部屋に残っていて、近くにいた侍女に新たな紅茶のセッティングを指示している。
元は貴族領主であり、政変以降フィルバートの下に付いたとは思えない気の利きようだ。
さほどの間を置かずに運ばれてきた紅茶は、私でも分かるほどの豊潤な香りを放っている。
私が片眉を動かしたのが見えたのかも知れない。
毒見役と思しき侍女の頷きを横目に優雅な仕種でティーカップを手にしながら、ミルテ王女がほう、と息を吐き出した。齢十五と言えどさすがは王族、付け焼き刃の私よりも余程様になるというものだ。
「やはりバリエンダールが紅茶文化ではないというのが良く分かります。独特の繊細な味と爽快な渋み、強い香り……初めての味ですわ」
コーヒー文化のバリエンダール。その中でも、兄であるミラン王太子の結婚祝いにオリジナルの紅茶をと、試行錯誤中のミルテ王女。
かなり色々な味の紅茶を口にしたのだろう。コメントが、私なんか足元にも及ばないくらい洗練されていた。
これは初心者の私より、マクシム侍従長に解説をお願いした方がいいはず。
そう思ってチラリと視線を投げて見れば、心得ましたとばかりの礼が返ってきた。
「お気に召していただけておりましたら、王も喜びましょう。こちらは我が国のカシュヴァ産の茶葉が使用されております。高地で収穫されるためあまり出回っておらず、色鮮やかで風味と鮮度も高うごうざいます。希少で洗練された味わいですので、最初の一杯はストレートをお勧めしておりますが、よろしければこの後ミルクティーもぜひ味わってみていただければと」
マクシム侍従長の、レストラン〝アンブローシュ〟支配人並みの知識と口上に驚かされる。
フィルバートが茶道楽だとの話は〝蘇芳戦記〟の設定にもないし、この国に来てから耳にしたこともない。むしろ「魔道具道楽」だ。
けれど国王ともなれば、舌は肥えていてしかるべきなのかも知れない。もしくは、不味いとキレられるのを恐れた使用人の側が、気を遣いすぎるくらい気を遣っているか。
私がゲームで知るフィルバートであれば、食事に何か混入されていたり、その最中に押しかけて来られでもすればキレるかもだけど、食事が不味いくらいではいちいち動かないだろう。それじゃサイコパスじゃなく、ただの暴君になってしまう。
多分、使用人たちが気を遣っているのだろうと思いながら、私も紅茶に口をつけた。
カシュヴァ。
エリィ義母様の第一回淑女のための紅茶教室でも名前の出ていた、クヴィスト公爵領内に茶園のある国内最高級茶葉だ。
「まあ、そのように希少なものを……何だか我が国の茶葉をお渡ししにくいですわ」
マクシムの説明を聞き、しょげるミルテ王女の姿がうっかり落ち込む小動物に見えてしまい、かわいい……といいかけた自分の口を、慌てて塞いだ。
「んんっ、え……っとですね、王女殿下」
「私が『おねえさま』と今はお呼びしているのですから、ぜひ『ミルテ』と」
「えー……ではミルテ様、調合中の例の茶葉、今回お持ちになられたんですね?」
ミラン王太子の成婚を記念して振舞おうと、ミルテ王女が試行錯誤してブレンドしている紅茶。
こちらから強要出来るものでもないけど、高確率で持って来てくれるはずだと思っていた。
天はどうやら味方をしてくれたらしい。
ミルテ王女は「ええ」と頷いてくれた。
「お兄様が『まだ作成途中で色々な方の助言が欲しいと、そう言えばミルテの顔も売れるし、紅茶の味も更に良くなる』と仰って――」
聞けばミルテ王女、最初は国に残る予定だったという。テオドル大公の領地に行ってみたいとの思いはあったものの、メダルド国王が「外交問題を話し合うのだから」と、ミルテ王女の同行には否定的だったというのだ。
そこを兄であるミラン王太子が、茶葉の改良に役立つ、テオドル大公とユリア夫人が喜ぶ……等々色々なことを言って、ミルテ王女の同行を猛プッシュし、最終的にはフォサーティ宰相の後押しもあって、王が折れたそうだ。
(ミラン王太子のプッシュに、フォサーティ宰相の後押しか……)
表向き笑みを浮かべながらも、内心では複雑な思いを隠しきれない。
どう考えても、国内の大掃除に邪魔な王と、巻き込みたくない王女とを国外に出したとしか思えなかった。
周辺諸国の中でただ一人、次代の王となることが確約された「王太子」の肩書を持つ、ミラン・バリエンダール。
ゲーム〝蘇芳戦記〟においてもバリエンダール国側の攻略対象者の一人だ。
バッドエンドが実妹の監禁エンドなどという、乙女ゲームからはかけ離れた設定の持ち主なだけあってか、実際に会ってみた際にも、いざという時に自分の手を汚すことをためらわない性格が表に滲み出ていた。
どちらかと言えば某サイコパス陛下寄り。少なくとも自らの地位と権力を、好きな女性を手に入れるために行使しようとしていたギーレン国のエドベリ王子に比べれば、遥かに有能だとも思う。
(フォサーティ宰相にしても、元々穏健派の王よりも、より冷徹なミラン王太子寄りだった)
国にとって為にならないとの判断で、当代国王の知らないところで先代の王を手にかけた王太子と、それに目を瞑った宰相。
ミラン王太子がフォサーティ宰相を残して、実父と実妹をアンジェスに送り出した時点で、バリエンダール国内の「大掃除」は決定事項となったのだ。
――今はまだ、メダルド国王もミルテ王女もそれを知らない。ミラン王太子が陰から操り糸を動かし、自分たちが意図的に国外に出されたことを。いや、ミルテ王女には、もしかしたら一生明かされることはないのかも知れない。
エドヴァルドやフィルバート、恐らくはテオドル大公もそれは察しているだろうけど、自分たちからはその情報は明かさないとの判断を下しているはず。
エモニエ先代侯爵夫人の存在は、三国会談のどこかで明かされるだろう。恐らくは、アンジェスにとって都合のいいタイミングで。
そしてそこは、ミラン王太子の方が折れて、目を瞑るはず。
何もかもが思うようにはいかない――ギーレンでエヴェリーナ妃が突きつけた為政者の姿勢は、皆が無意識に理解しているのだと痛感させられた。
「ミルテ様、実はユリア夫人のいらっしゃるアンディション侯爵邸には、別のお客様もお越しになる予定なんです」
だから、私は私の話を進める。
無理はしなくていいと、エドヴァルドは言っていたけれど。
「別のお客様……ですか?」
「はい。ユングベリ商会が取引をしたいと思っている、リンゴの香りがするお酒を、ギーレン国から持ってきていただくことになっていて」
ギーレンでの語源が「焼いたワイン」だと言われているブランデヴァイン。
シャルリーヌ曰く、実際焼きりんごのような香りがするらしい。
表向き、その話で来るようにシャルリーヌが依頼を出しているはず――ということは、ここでは口にしない。
もちろん持ってくる人間が、ギーレンの正妃の実弟だなんてことも、そこは大きな括弧で括る。
ミルテ王女が仮に商人だと思ったとしても、それは「些細な行き違い」で、何の不都合もない……はず。
「ご本人も資産家で、とても舌の肥えた方なので……紅茶についても助言をいただかれてはどうでしょう?」
ラハデ公爵家当主の肩書を持つのだから、資産は相当にあるはずだし、公式行事でエヴェリーナ妃のパートナーを務めることもあるというのだから、色々な料理を口にしているはずだ。
「まあ、そうなんですね⁉ 私ではお酒は無理でしょうけれど、そちらを父に勧めると言えば、私の紅茶にも助言をいただけるかしら?」
「ああ、それはいい案だと思います」
――嘘は、どこにもない。ただ、全てを明かしていないだけ。
もしかしたらメダルド国王とラハデ公爵との間に面識はあるかも知れないし、会ったら互いに驚愕することは間違いないだろうけど、そこはリンゴのブランデーがいいカムフラージュになってくれるはずだ。
あくまで商売の話で招いたのだと、押し通せばいい。
「あと、この国のフォルシアン公爵夫人が、紅茶にとても造詣の深い方で、私も今、教えを受けているところです。もし今回時間が取れなくても、私の方から茶葉をお渡しして、後日いただいた助言を手紙で送らせていただくことも出来ます」
「おねえさま……」
ミルテ王女は両手を合わせ、こちらを拝まんばかりの姿勢と表情を見せている。
――私はただ、いい成婚記念の品になるよう手を貸しているだけなのだ。
そこに、テオドル大公殿下とシャルリーヌの到着を告げる声とノックの音が聞こえてきた。
フィルバート、メダルド国王、ミルテ王女という王族三名に加えて宰相位を持つエドヴァルド。
そこに割って入って腰を下ろすなどとんでもないと、ミルテ王女と部屋に残されるまで、私は入り口近くに立っていたのだ。
思ったよりも早く皆が席を外したため、それほど疲れを感じることもなかったのだけれど。
「で、では皆さまがお戻りになるか、テオドル大公殿下がお越しになるまでということで……」
ここでいきなりシャルリーヌの名を出されても、困るのはミルテ王女だ。とりあえず、大公殿下の名前だけを出しておいて、歩を進める。
「テオお祖父様でしたら、きっと立たなくていいと仰いますわ!」
ミルテ王女どころか、ミラン王太子が物心つく前からバリエンダールを行き来する大公殿下は、夫人と共にバリエンダール側からは絶大な信頼を得ているらしいことが、その言動からも読み取れる。
他国だからと、社交界デビュー前であってもきちんと「私」と言っていたにも関わらず、笑顔と共に「テオお祖父様」になっているのがいい証左だ。
「……そうかも知れませんね」
いずれにせよシャルリーヌのことは、大公殿下たちが来てから臨機応変に対応しようと、私も口の端に笑みを乗せながら、ミルテ王女の向かい側に静かに腰を下ろした。
チラリと周囲を見れば、国王陛下の侍従であり、王宮の侍従長でもあるマクシムが部屋に残っていて、近くにいた侍女に新たな紅茶のセッティングを指示している。
元は貴族領主であり、政変以降フィルバートの下に付いたとは思えない気の利きようだ。
さほどの間を置かずに運ばれてきた紅茶は、私でも分かるほどの豊潤な香りを放っている。
私が片眉を動かしたのが見えたのかも知れない。
毒見役と思しき侍女の頷きを横目に優雅な仕種でティーカップを手にしながら、ミルテ王女がほう、と息を吐き出した。齢十五と言えどさすがは王族、付け焼き刃の私よりも余程様になるというものだ。
「やはりバリエンダールが紅茶文化ではないというのが良く分かります。独特の繊細な味と爽快な渋み、強い香り……初めての味ですわ」
コーヒー文化のバリエンダール。その中でも、兄であるミラン王太子の結婚祝いにオリジナルの紅茶をと、試行錯誤中のミルテ王女。
かなり色々な味の紅茶を口にしたのだろう。コメントが、私なんか足元にも及ばないくらい洗練されていた。
これは初心者の私より、マクシム侍従長に解説をお願いした方がいいはず。
そう思ってチラリと視線を投げて見れば、心得ましたとばかりの礼が返ってきた。
「お気に召していただけておりましたら、王も喜びましょう。こちらは我が国のカシュヴァ産の茶葉が使用されております。高地で収穫されるためあまり出回っておらず、色鮮やかで風味と鮮度も高うごうざいます。希少で洗練された味わいですので、最初の一杯はストレートをお勧めしておりますが、よろしければこの後ミルクティーもぜひ味わってみていただければと」
マクシム侍従長の、レストラン〝アンブローシュ〟支配人並みの知識と口上に驚かされる。
フィルバートが茶道楽だとの話は〝蘇芳戦記〟の設定にもないし、この国に来てから耳にしたこともない。むしろ「魔道具道楽」だ。
けれど国王ともなれば、舌は肥えていてしかるべきなのかも知れない。もしくは、不味いとキレられるのを恐れた使用人の側が、気を遣いすぎるくらい気を遣っているか。
私がゲームで知るフィルバートであれば、食事に何か混入されていたり、その最中に押しかけて来られでもすればキレるかもだけど、食事が不味いくらいではいちいち動かないだろう。それじゃサイコパスじゃなく、ただの暴君になってしまう。
多分、使用人たちが気を遣っているのだろうと思いながら、私も紅茶に口をつけた。
カシュヴァ。
エリィ義母様の第一回淑女のための紅茶教室でも名前の出ていた、クヴィスト公爵領内に茶園のある国内最高級茶葉だ。
「まあ、そのように希少なものを……何だか我が国の茶葉をお渡ししにくいですわ」
マクシムの説明を聞き、しょげるミルテ王女の姿がうっかり落ち込む小動物に見えてしまい、かわいい……といいかけた自分の口を、慌てて塞いだ。
「んんっ、え……っとですね、王女殿下」
「私が『おねえさま』と今はお呼びしているのですから、ぜひ『ミルテ』と」
「えー……ではミルテ様、調合中の例の茶葉、今回お持ちになられたんですね?」
ミラン王太子の成婚を記念して振舞おうと、ミルテ王女が試行錯誤してブレンドしている紅茶。
こちらから強要出来るものでもないけど、高確率で持って来てくれるはずだと思っていた。
天はどうやら味方をしてくれたらしい。
ミルテ王女は「ええ」と頷いてくれた。
「お兄様が『まだ作成途中で色々な方の助言が欲しいと、そう言えばミルテの顔も売れるし、紅茶の味も更に良くなる』と仰って――」
聞けばミルテ王女、最初は国に残る予定だったという。テオドル大公の領地に行ってみたいとの思いはあったものの、メダルド国王が「外交問題を話し合うのだから」と、ミルテ王女の同行には否定的だったというのだ。
そこを兄であるミラン王太子が、茶葉の改良に役立つ、テオドル大公とユリア夫人が喜ぶ……等々色々なことを言って、ミルテ王女の同行を猛プッシュし、最終的にはフォサーティ宰相の後押しもあって、王が折れたそうだ。
(ミラン王太子のプッシュに、フォサーティ宰相の後押しか……)
表向き笑みを浮かべながらも、内心では複雑な思いを隠しきれない。
どう考えても、国内の大掃除に邪魔な王と、巻き込みたくない王女とを国外に出したとしか思えなかった。
周辺諸国の中でただ一人、次代の王となることが確約された「王太子」の肩書を持つ、ミラン・バリエンダール。
ゲーム〝蘇芳戦記〟においてもバリエンダール国側の攻略対象者の一人だ。
バッドエンドが実妹の監禁エンドなどという、乙女ゲームからはかけ離れた設定の持ち主なだけあってか、実際に会ってみた際にも、いざという時に自分の手を汚すことをためらわない性格が表に滲み出ていた。
どちらかと言えば某サイコパス陛下寄り。少なくとも自らの地位と権力を、好きな女性を手に入れるために行使しようとしていたギーレン国のエドベリ王子に比べれば、遥かに有能だとも思う。
(フォサーティ宰相にしても、元々穏健派の王よりも、より冷徹なミラン王太子寄りだった)
国にとって為にならないとの判断で、当代国王の知らないところで先代の王を手にかけた王太子と、それに目を瞑った宰相。
ミラン王太子がフォサーティ宰相を残して、実父と実妹をアンジェスに送り出した時点で、バリエンダール国内の「大掃除」は決定事項となったのだ。
――今はまだ、メダルド国王もミルテ王女もそれを知らない。ミラン王太子が陰から操り糸を動かし、自分たちが意図的に国外に出されたことを。いや、ミルテ王女には、もしかしたら一生明かされることはないのかも知れない。
エドヴァルドやフィルバート、恐らくはテオドル大公もそれは察しているだろうけど、自分たちからはその情報は明かさないとの判断を下しているはず。
エモニエ先代侯爵夫人の存在は、三国会談のどこかで明かされるだろう。恐らくは、アンジェスにとって都合のいいタイミングで。
そしてそこは、ミラン王太子の方が折れて、目を瞑るはず。
何もかもが思うようにはいかない――ギーレンでエヴェリーナ妃が突きつけた為政者の姿勢は、皆が無意識に理解しているのだと痛感させられた。
「ミルテ様、実はユリア夫人のいらっしゃるアンディション侯爵邸には、別のお客様もお越しになる予定なんです」
だから、私は私の話を進める。
無理はしなくていいと、エドヴァルドは言っていたけれど。
「別のお客様……ですか?」
「はい。ユングベリ商会が取引をしたいと思っている、リンゴの香りがするお酒を、ギーレン国から持ってきていただくことになっていて」
ギーレンでの語源が「焼いたワイン」だと言われているブランデヴァイン。
シャルリーヌ曰く、実際焼きりんごのような香りがするらしい。
表向き、その話で来るようにシャルリーヌが依頼を出しているはず――ということは、ここでは口にしない。
もちろん持ってくる人間が、ギーレンの正妃の実弟だなんてことも、そこは大きな括弧で括る。
ミルテ王女が仮に商人だと思ったとしても、それは「些細な行き違い」で、何の不都合もない……はず。
「ご本人も資産家で、とても舌の肥えた方なので……紅茶についても助言をいただかれてはどうでしょう?」
ラハデ公爵家当主の肩書を持つのだから、資産は相当にあるはずだし、公式行事でエヴェリーナ妃のパートナーを務めることもあるというのだから、色々な料理を口にしているはずだ。
「まあ、そうなんですね⁉ 私ではお酒は無理でしょうけれど、そちらを父に勧めると言えば、私の紅茶にも助言をいただけるかしら?」
「ああ、それはいい案だと思います」
――嘘は、どこにもない。ただ、全てを明かしていないだけ。
もしかしたらメダルド国王とラハデ公爵との間に面識はあるかも知れないし、会ったら互いに驚愕することは間違いないだろうけど、そこはリンゴのブランデーがいいカムフラージュになってくれるはずだ。
あくまで商売の話で招いたのだと、押し通せばいい。
「あと、この国のフォルシアン公爵夫人が、紅茶にとても造詣の深い方で、私も今、教えを受けているところです。もし今回時間が取れなくても、私の方から茶葉をお渡しして、後日いただいた助言を手紙で送らせていただくことも出来ます」
「おねえさま……」
ミルテ王女は両手を合わせ、こちらを拝まんばかりの姿勢と表情を見せている。
――私はただ、いい成婚記念の品になるよう手を貸しているだけなのだ。
そこに、テオドル大公殿下とシャルリーヌの到着を告げる声とノックの音が聞こえてきた。
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