鬼 〜終焉の先に〜



 ••••ここは、おわりのさき•••



 美しきものに、死の翳り。

 その女性の美貌には、それに似つかわしいとは言い難い、微笑みが浮かんでいた•••••。
 それは、柔らかく、あまりに不吉な。

 薄暗い部屋。
 
 白い息。
 黒い髪。
 なめらかに流れる影のような肌。
 神がひとときの悪戯で生み落としたかのごとき、美。

 ──その視線の熱が向かう先には、
穏やかに寝息を立てている1人の赤子•••••。

 なにも知らぬ、なにも覚えぬ、
 無垢なる息遣いだけを、たよりなく。

《《かつて》》この手で屠った英雄が•••。

 ゆるやかな薄衣は、
そのしなやかな肢体が、肉食獣の本質を帯びている事を隠すには、力不足。

 気怠く脱力したその姿は、
まるで、柔らかき獲物を前にした猛禽。
 
 その美しき口から、ため息が漏れる。

  •••••よもや•••何の因果か、
   神の悪戯か••••••

 静かに、深く、笑みが歪む。
 赦しではなく。
 絶望でもなく。
 
 •••••二度と••
   お前の思うようにはさせない•••

 美貌に現れた笑みには、••••笑みというにはあまりにも凄惨な《《何か》》が潜んでいた。

 •••••どうしてくれようか••••••

 思いの|欠片《かけら》が、呟きが漏れる。
 深海の奥底から《《何か》》が浮上して来る。

 •••笑みの奥底に棲んでいたのは、
  果たして••••••••。

 音もなく、海底が揺らぐ。

 誰も、知らない。

 まだ••••己さえも•••••••。



 
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