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冒険の準備

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 翌日レオンはゴメスとドンに、冒険に出るための荷造りを見てもらった。ゴメスとドンはレオンの荷物が多すぎると言った。レオンの荷物は、野宿に使うナベやポットやナイフ。野宿のための毛布。それに着替えだ。レオンの物よりアルスの着替えがとても多い。

 アルスはよくおもらしをしたり、転んで泥だらけになったりと、とにかく着替えをするのだ。そのためレオンの荷物は大きなリュックサックにパンパンに入っていた。

 ドンはレオンにリュックの中の荷物を全部出してみろといわれた。レオンはドンが荷物を上手に詰めなおしてくれるのかと思い、言う通りにすると、ドンは空にしたリュックサックの内側に指で何やら文字を書き、呪文を唱えた。

 するとリュックサックが輝き出した。ドンが何かの魔法を使ったのだ。レオンが驚いていると、ドンは笑顔で荷物をもう一度入れてみろという。レオンは首をかしげながらも言う通りにすると、不思議な事に、荷物を入れてもリュックサックがいっぱいにならないのだ。

 レオンはいぶかしんでリュックサックの中をのぞくと、中には何も入っていなかった。レオンが驚きの声をあげると、ドンが笑って答えた。

「レオンのリュックサックに魔法をかけたんだ。何でも入るよ?だけど何をいれたかちゃんと覚えているんだぞ?忘れたら出せなくなるからな」
「ドンさん。ありがとうございます!」

 レオンはしきりにドンの魔法をほめた。ゴメスも笑って言った。

「ドンは攻撃魔法はいまいちだが、細かい魔法は得意だよな?」
「ゴメスは一言多いの!」

 ドンとゴメスは声を合わせて笑った。どうやら二人はいいコンビのようだ。

 その日はゴメスとドンに夕食に連れて行ってもらい、集団で行う依頼の内容を聞いた。

 我関せずのアルスは店で出してもらったビーフシチューが気に入ったらしく、口のまわりをベタベタにして食べていた。

 レオンたちが参加させてもらう集団依頼は、二十人からなる大所帯だ。リーダーはドーグというベテラン冒険者で、ゴメスとドンも何度か共に仕事をしたという。

 二十人の冒険者で行う依頼は、近頃世間を騒がす盗賊の捕縛だ。イエーリ団という盗賊団は、街々の裕福な貴族の屋敷を襲い、家人を殺害し、金品を奪って行くのだ。

 ここ最近は、被害がひんぱつし、ついに大規模な捕縛隊が組織されたのだという。

 レオンとアルスは夕食を食べた後、すぐに眠るようにいわれた。翌日から、ついに初の冒険者の仕事におもむくのだ。レオンはアルスの規則正しい寝息を聞きながら、眠る事が出来なかった。

 
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