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第6章 お披露目祭り
Good-bye Memory .
しおりを挟む「ここが、………セオ様の部屋なのですね」
部屋に連れてくると、アミィール様は目を輝かせてぐるりと部屋を見る。………なんだか、恥ずかしい。
そりゃあ、一応公爵家だから広い方だと思う。けれど、サクリファイス大帝国での自分の部屋の方が数倍も広いし立派だ。
自分の部屋は至ってシンプル。自分と同じ群青色と白、黒の家具。お気に入りではあるけれど、少し色気がないというか…………The!男の部屋!って感じで面白いものは何も無い。
けれど、アミィール様は先程泣いていたのが嘘のようにはしゃいでいる。
「あ!セオ様のことですから、この机で突っ伏して悩んだりしてましたでしょう?」
「よ、よくわかったね、…………そこで…………」
求婚イベントの時からずっと貴方のことを考えていた。
「ベッドもフカフカですね、………セオ様の匂い、まだする」
「そうかい?」
そのベッドで毎晩、アミィール様の夢を見られるようにと願っていた。
「……………この部屋は、セオ様みたい。優しくて、控えめで……………?」
気づいたら、アミィール様を後ろから抱き締めていた。…………ここは物心ついた頃からずっと過ごしてきた部屋。だけど、俺だけじゃない。アミィール様絡みの思い出もあるんだ。
そう思うと、なんだか愛おしくて。
でも少し寂しくて。
不思議な気持ちで、アミィール様を求めてしまった。
そんな俺の腕に、アミィール様の御手が乗った。そして、優しく、子守唄を歌うような声で言う。
「……………大丈夫です、セオ様。帰って来れる時に帰ってきましょう。わたくし、頑張って2ヶ月休みを取れるようにしますわ。
帰ってきたい時に帰って来れる………ここは、貴方のお家なのですから」
「………………ッ」
涙が流れた。アミィール様は次期皇帝になられる御方。そんな暇など無いはずなのに、それでもこう言ってくれるんだ。
そして。
アミィール様は嘘をつかないのを知っているから、信用出来るんだ。
「アミィ……………俺に、アミィが居てよかった。アミィじゃなかったら、此処を出ていこうと思わなかった。
それくらい____この家が好きだ」
「ええ。……………わたくしも、セオ様は勿論、セオ様のお優しい家族も、この部屋も、………この家の雰囲気が好きです。
今度はお披露目ではなく、遊びに来ましょうね」
「ああ。…………一緒に、来て、くれ」
我儘な俺は、こう言ってしまった。
けどアミィール様は首だけを動かして『喜んで』と微笑んでくれた。
_____大好きな家との別れは寂しい。
けれど。
この人と一緒なら、きっと大丈夫。
弱い俺は、強くそう信じた。
* * *
その頃、応接室にて。
「ありがとう、セフィアくん。………気を使ってくれたのでしょう?」
「……………そんなことないです。けれど、聞きたいと思ったのも事実です」
アルティアの言葉にセフィアは強い眼差しを向けながら答えた。アルティアはふ、と笑ってからセオドアの家族と改めて向かい合った。
「____私とアミィール、"龍神の血"を持つ私達は、人間ではありません。けれど、殆ど人間と一緒です。
違いは__龍になれることと、魔力が常人の1000倍あること、そして………"代償"や"呪い"を受け続けていることです」
アルティアの黄金色の瞳が、妖しく光った。
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