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23 ミレンダの嫌がらせ

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妃になって数日間が過ぎた。
私は王太子の部屋で過ごすことが多くなった。
お腹の張りもあって自分一人では歩くことも出来なかったのだ。

そんなある日の事。
私はいつも通り部屋でルエと共に紅茶を啜りながら過ごしていると部屋からノックする音がした。
ルエが私の代わりに対応すると言いソファから立ち上がり扉を開けた。

「あら、ごきげんよう。妃様。御身体は大丈夫かしら?」

久しぶりのご対面だった。
あのミレンダが私の為に陣中見舞いにやっていたのだ。
まだ私に対する復讐心が残っているのかと思うと、蛇か、と思ってしまった。

「ミレンダ様。御久し振りで御座います。しかし、申し訳ありません。私は今自由に動くことが出来ず、此処に座ったままご挨拶を」
「良いのですよ。そんなことは。それよりお腹の子は順調に育っているのですか?」

意外な質問だった。
私の事を毛嫌いしている筈のミレンダが私の身体の心配を口にしたのだ。
私は、大丈夫です、と答え作り笑いをした。

「それなら結構ですわね。わたくしも色々貴女とぶつかりましたが、流石に妊婦、しかも王太子の子に対しては何も致しません。どうか、元気な御子を産んでください」
「はぁ…有難う御座います」
「では、失礼します。あ、それと、これを」

土産にと白い箱をルエに渡してミレンダは立ち去ってしまった。
本当に私の身体の事を心配して様子を見に来たのだろうか。

「マリア様。これ、どういたしましょう」
「開けてみましょうか」
「畏まりました」

白い箱を机の上に置いて中を開けると赤ちゃん用の下着が入っていた。
白いフリルが付いた可愛らしい服。

「これは可愛らしいお洋服ですね、マリア様」
「ええ、本当に。まるで女の子が着る服だわ」

王太子には男の子を産んでほしい言われていたのだが、ミレンダが持ってきたのは女の子用の服。
やっぱり私に対する当てつけ来ただけだったのだと納得した。

「マリア様? 如何なされました?」
「これは、私に対する嫌がらせですわ。女の子を産んでくれとでも言いたいのかしら、ミレンダ様は」

私は服を睨みつけながら、絶対男の子を産んで見せる、と心に誓った。
まぁ、それでも女の子が産まれる可能性も十分にあるのだが…これは神のみぞ知ること。
私にはどうしようもないことくらい分かっていた。

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