悪魔と死者のモノローグ

――少女は傷付いていた。身体も心も傷を負い、生きる理由も見失っていた。
――少女は探し求めていた。安寧の地、此処では無い何処かを。
――少女は絶望した。自ら命を絶つその瞬間に、差し伸べられた右腕に。
――少女は懇願した。差し伸べられた右腕に、此処では無い何処かに連れて行ってくれと。
――少女は求められた。仮令(たとえ)身体だけだとしても、其処に愛は無くても。
――少女は渇望した。愛を求めた。仮令それが、叶わぬ恋と知りながら。

家族の虐待、自殺志望。流れる過程と結果に絶望し、彼女は遂に家から追い出された。
無知な彼女は、首を吊ることが苦しまずに済むと思っていた。
山へと登り、木に括られた一本のロープを見付ける。夕焼け眩しく目を細めた少女が、一筋の涙を零す。
死にたく無い、その本音が涙の様に零れずに、壊れた心の様に自身も分からなくなっていた。
そんな時、一人の女性が現れる。彼女は少女を助けようとはしなかった。
彼女は、死にたい程辛い彼女の過去を受け入れた。受け入れて、受け入れた上で、たった一言彼女は優しく問うた。

「私の、恋人にならない?」
24h.ポイント 0pt
0
小説 184,425 位 / 184,425件 恋愛 56,086 位 / 56,086件